ウルフウォーカー(字幕版)(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2
2020年11月14日

ウルフウォーカー(字幕版)(ネタバレ)

テーマ:新作映画(2020)

ウルフウォーカー(字幕版)

 


原題:Wolfwalkers
2020/アイルランド、ルクセンブルク 上映時間103分
監督:トム・ムーア、ロス・スチュアート
製作:ポール・ヤング、ノラ・トゥーミー、トム・ムーア、ステファン・ローランツ
製作総指揮:ジェリー・シャーレン、イン・ヤン、エリック・ベックマン
脚本:ウィル・コリンズ
音楽:ブリュノ・クーレ、KiLa、オーロラ

声の出演:オナー・ニーフシー、エバ・ウィッテカー、ショーン・ビーン、マリア・ドナル・ケネディ、サイモン・マクバーニー、トミー・ティアナン、ジョン・ケニー、ジョン・モートン

声の出演(吹替版):新津ちせ、池下リリコ、井浦新、櫻井智、西垣俊作
パンフレット:★★★(800円/鶴岡真弓先生の解説がタメになる。最後のページに「劇中の終盤のシーン」を持って来るデザイン構成に弱い)

(あらすじ)

中世アイルランドの町キルケニー。イングランドからオオカミ退治のためにやって来たハンターを父に持つ少女ロビンは、森の中で出会った少女メーヴと友だちになるが、メーヴは人間とオオカミがひとつの体に共存した「ウルフウォーカー」だった。魔法の力で傷を癒すヒーラーでもあるメーヴと、ある約束を交わしたロビン。それが図らずも父を窮地に陥れることになってしまうが、それでもロビンは勇気を持って自らの信じる道を進もうとする。(以上、映画.comより)


予告編はこんな感じ↓

 

 


90点


昨年11月に観た「ブレンダンとケルズの秘密」が「アニメとしてはスゴいけど、別にそれほど好みというワケではない」って感じだったので、同じアニメスタジオによる本作についても「一応観たい」程度の気持ちしかなかったんですが、しかし。愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」の週刊映画時評コーナー「ムービーウォッチメン」の課題映画になったので、「付き合いだしな ( ´_ゝ`) シカタナシ」と観ることにした…という定番の流れ。11月11日(水)、恵比寿ガーデンシネマにて「&シネマデー」割引を利用して鑑賞してきました。素晴らしかったですYO!(°∀°)b ヨカッタ!

 

 

痴漢逮捕に協力したりしたものの、開始時間を間違えて早めに家を出てたおかげでギリ間に合ったというね。

 

劇場ロビーには、吹替版の声優たちのサイン入りポスターなどがありましたよ。

 
売店ではパンフレットや関連書籍の他、ワッペンが販売中。
 
1番スクリーン、観客は30人ぐらいだったような。
 
 
「そんな内容じゃないわ!川 ゚д゚)」と抗議されそうなレベルであらすじを雑に書いておきますと、映画の舞台は中世アイルランドの町キルケニー。イングランドからやってきた少女ロビンは、狼ハンターの父ビルを尊敬していて、自分も狼を狩る気マンマンでして。単身で森に出向いた際に狼を狩ろうとしたら、相棒のハヤブサ・マーリーンに矢が刺さっちゃった上に狼が連れ去っちゃうから、アタシってほんとバカ (ノω・、し シニタイ でも、気を取り直して森の奥に行ってみれば、“眠ると狼になれる少女=ウルフウォーカー”のメーヴがマーリーンを不思議な力で治してくれてまして。うふふあははと揉めているうちにすっかり仲良しになった2人だったものの、メーヴに噛まれたロビンもウルフウォーカーになってしまったり、ビルに話しても全然信じてくれなかったり、労働しなくちゃいけなくなったり、街を支配する護国卿がメーヴの母親モル(狼化状態)を捕獲していたりと、問題が次々と勃発。そんな中、母が捕らえられていることを知ったメーヴは激怒して「こうなったらキル・ストラグル(殺し合い)だッ!川`Д´)ノ」と街に宣戦布告してしまうから、さぁ大変!(´Д`;し タイヘーン
 
 
ひょんなことからロビンはメーヴと仲良しになりまして。
 
さらに彼女に噛まれたことで、ウルフウォーカーとなってしまうのです (°д°;) ナンダッテー
 
そして、護国卿が狼狩りを推進&母親モルを捕らえていることを知ると…。
 
メーヴったらすっかりブルーザー・ブロディ気分になるというね(「プロレススーパースター列伝」より)。
 
 
護国卿と兵士たちが森へ進軍する中、意を決したロビンは父ビルに逆らってモルを解放→メーヴと仲直り 川´∀`)(´∀`し ナカヨシ ビルに射られて重傷を負ったモルの治療をメーヴが必死に試みる間、戦闘の才に目覚めたロビンが狼群団に的確な指示を下して、エルボー→ラリアット→ヤクザキックの連携で兵士たちをピンフォールですよ(突然、90年代の新日マットが混ざった文章)。さらにモルに噛まれたビルもウルフウォーカー化して「娘が見ている世界」を理解したので、狼化して護国卿と対決→勝利!ヘ(゚∀゚*)ノ ザマァッ! みんなで力を合わせることでモルの傷が癒えて復活した…ということで。最後は、4人&狼群団で仲良く新天地を目指して、映画は終わってたんじゃないかしらん。
 
 
最後は狼化した父ビルがムカつく上司と対決! 護国卿ったら自殺してましたよ (`∀´) ザマァッ!
 
 
劇中でアレンジバージョンが流れたオーロラの「Running With The Wolves」を貼っておきますね↓

 

 

 

アイルランドに伝わる「眠ると魂が体から抜けだして、狼の姿になって、大地をさまようらしいよ… ( ´д)ヒソ(´д`)ヒソ(д` )」という「ウルフウォーカー」の伝説を元に作ったという本作、そりゃあ映画を作るたびにアカデミー賞にノミネートされちゃうカートゥーン・サルーン製作なだけあって、クオリティは本当に高かったです。パンフによると街中は版画を意識してモノトーン風かつ直線的に、森は色彩鮮やかで柔らかな水彩&曲線的に描いたそうですが(「かぐや姫の物語」にはかなり刺激を受けたそうな)、絵本のようなビジュアルは素敵のひと言だし、そんな絵がスルスルと動いて、アニメとしてスゲー気持ちいいんですよね〜。で、本作は護国卿のモデルがオリバー・クロムウェルだったりと実際のアイルランドが虐げられてきた歴史を踏まえつつ、文明と自然の共存とか父権社会の抑圧といった現代的なテーマを描いているんですが(って、これらもパンフ情報ですがー)、その「絵本のようなビジュアル」というのが本作の寓話性を補強する機能を見事に果たしていた印象。劇中で、現実的に考えると変なところが多少あっても「まぁ、絵本みたいだしな (´∀`) シカタナシ」とスムースに飲み込めちゃう強みがあって(だって、そもそもハヤブサとか助けずに食っちゃうんじゃないの?)、そういう意味でも非常に感心いたしました。

 

 

文明と自然の子が陰陽マークのように調和したりとか、洞窟が胎内っぽかったりとか、この絵柄だからこその表現が活かされまくってましたよ。

 

狼化後の“嗅覚視点”の演出も斬新で面白かったですな。

 

 

今回、僕が最も感情移入したのは父ビルでして。もうね、あの「娘を守れないことが怖い」って超わかる。巨大な力になんてとても立ち向かえないし、長い物には巻かれまくっちゃうよ、だって「日々の生活」があるのだもの、人間だもの。そりゃあアップリンクやらユジク阿佐ヶ谷のパワハラ案件は心底クソだと思いつつも、「じゃあアナタは自分が直接関わっている職場でそういうことがあった時、ちゃんと指摘してるの?(゚Д゚)」と問われたら、いやん、口をモゴモゴせざるを得ない。「お前のためなんだ」と子どもに理不尽や不条理を飲み込ませることだって、そりゃあなくはないと思います。ただ、ロビンもまた「あなたのためなの」とメーヴを檻に閉じ込めつつも「やっぱりダメなものはダメ!Σ(°д°し クワッ!」ということに気付いて意を決して立ち上がるように、ダメなものには異を唱えることが大事なんですよね、やっぱり、人間だもの。いや、だからといって今すぐ何をするワケではないけどさ、そんなことを考えさせてくれただけでも超良い映画だなぁと。それと、映画のオープニングから出てくる「護国卿の悪口を言って拘束される羊飼い」、あんな状況だと糞尿垂れ流しで相当辛いと思うんですが、まったく心が折れなくて超カッコ良かったですね〜(あんな風にパンを食べさせてもらいたいアコガレもある)。

 

 

体を張ってモルを守るロビン。この映画、武器の扱い方もよく考えられてましたな(ロビンがボウガンを手放していく演出とか)。

 

 

あと、本作で大好きだったのがアクション描写。昨年観た「ブレンダンとケルズの秘密」もそりゃあクオリティは高かったものの、ごめんなさい、話自体はなかなか辛気くさいし、アクションシーンもあまりないし、それほど楽しめなかったんですよ。ところが本作は、単純な戦闘シーンだけでなく、コミカルに物を盗んだり、狼が森&街中を疾走したりと、動きが楽しめるシーンが非常に多くて、偏差値の低い僕にはピッタリのバランスだったのです (ノ∀`) エヘヘ 特に燃えたのが、終盤に繰り広げられる「森を焼く人間ども vs 狼化したロビン with 狼群団の戦闘シーンで、ロビンったら天山広吉やヒロ斎藤狼たちに「銃弾を避けたら弾を込める間に倒すのよ!川`Δ´)」などと的確な指示を下して奴らを圧倒するから、これが観たかった!m9`Д´) ビシッ そりゃあ、現実世界を踏まえて「文明vs自然」を考えるなら人間が勝つワケですけど「でも、結局は“地球”が勝つんじゃないかな ( ´_ゝ`)」といった面倒くさい話は置いといて)、でもさ、この手のフィクションの動物は「人間のように考える」もしくは「命令を100パーセント忠実に実行できる」ワケでさ。「人間は訓練された犬には絶対かなわない」というのは「MASTERキートン」で得た知識ですが、そもそも運動能力に格段の差があるのだから、「命令を忠実に実行できる動物」は決して与しやすい敵ではないんですよ、絶対に。

 

 

普通の犬ですら日本刀を持って対等…となれば、考える動物に敵うワケがないのです(「大山空手もし戦わば」より)。

 

 

もちろん今まで「人間vs動物」で、動物が勝利を収めた話だってなくはないものの、この手の「文明vs自然」の流れでは、やはり「自然が負ける」という苦い結末が「あるある」じゃないですか。負けた上に偉そうな林家こぶ平に説教までかまされる「平成狸合戦ぽんぽこ」はマジ不快…という唐突な憎悪は置いとくとして。連想するのは、やはり「もののけ姫」ですよ。大好きな映画ながらも、乙事主様が祟り神になるのが辛くて観られないというか、「こうすれば勝てるんじゃないの?」とストレスが溜まって仕方なくてね…。でもね、ロビン with 狼群団は鮮やかに勝ってくれた。ちょっとだけ不満を書くと、ロビンが“戦術の才”を発揮するのは唐突な気がしなくもなかったし(ドラゴンなどを相手にしたバトル空想を楽しむ子だとすればエロ孔明が初めての実戦で童貞だとバレなかった」的なことなのかもしれませんが)、できれば鋭い牙で人間どもの喉を裂いてほしかったけど(なんか「地面に押し倒しました」程度)、しっかり勝ってくれたのは本当にうれしかったですね〜。

 

 

狼化したロビンったら、兵士たちの弱点を突く指示をテキパキと出してました。

 

メーヴが率いていたら乙事主様 feat.猪軍団的な末路になった気がするけど、この気概と牙が超可愛い (´∀`=) カワイー


 

というか、ハッキリ言って、本作の結末は「ウルフウォーカーの完全勝利」だと思っております(微笑)。僕的な解釈は2つあって。まず、テーマ的な部分では、「住処を捨てて新天地に行く」というのは「敗北」ではなくて、「同じ場所に固執して留まる必要はない」ということかと。僕は「戦う女性たちに、ウルフウォーカー化する=相手の目線で考えられるようになった男性が協力することによって、父権社会ではない場所を築く」という風なエンディングだと解釈しましたよ。そして、現実的な部分でも、我々人類はウルフウォーカーに負けたのではないか。だって、ウルフウォーカーには「日光に弱い」といったデメリットがなく、魂を狼化させて自由に走り回れるようになるメリットしかない上に、噛むだけで仲間を増やせるのだから、あの後、少しずつ少しずつ増えていったのではないか(狼たちも滅びたのではなく、人間化していった可能性も?)。もしかすると、あなたの隣人もすでにウルフウォーカーなのかもしれないし、現在流行中のゲーム「人狼」はそんな状況に警鐘を鳴らすために作られたのかもーーなんてチープな妄想はお好きですか?(お好きですか?)苦手ですか?(苦手ですか?)

 

 

ほとんどの方がこう思ってそうな文章を書いて、本当にすみませんでした(「範馬刃牙」第30巻より)。

 

 

モロに「シスターフッド映画」だったということで、なんとなく北村紗衣先生が本作について良い文章を書いているんじゃないかと思って検索してみれば、「スカイウォーカーへの怒り」が引っ掛かって面白かった…ということは関係ないとして。今までスカイウォーカーやらデイウォーカーザ・ウォーカーやらに憧れて生きてきた僕ですが、新たにウルフウォーカーが加わったというか。面白い上にいろいろと考えさせられて、素晴らしい映画でしたヨ (°∀°)b ヨカッタ! どんな映画にも「合う」「合わない」はありますけど、本作についてはとりあえず誰が観ても損はしないんじゃないかしらん。ちなみに鑑賞後、劇場で売り切れていた「図説 ヨーロッパから見た狼の文化史:古代神話、伝説、図像、寓話」が気になって、つい買っちゃったんですが、読みやすい上に載っている絵が最高なので、本屋で見かけたらぜひ手にとってみてくださいな。

 

 

非常に良い買い物をしましたよ。

 

 

おしまい。

 

 

 

 

本作のアートワーク集。洋書なので注意!

 

 
カートゥーン・サルーンによるケルト三部作の1作目。僕の感想はここの2本目。
 
ケルト三部作の2作目。未見なんですよねー。
 

昨年末に公開されたカートゥーン・サルーン作品。Netflixにあったから、観ようかな。

 

 
劇場で売られていたけど売り切れてた本、その1。これは持ってました ( ̄ー ̄) ニヤッ
 
劇場で売られていたけど売り切れてた本、その2。高めだけど良さげだから、ネットで買っちゃった。
 
劇場で売られていた本。買っても読む暇がないんだよなー (・ε・) ウーン

 

 

非常に思いだした映画。そりゃあ大好きですよ。