SKIN スキン(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

SKIN スキン(ネタバレ)

SKIN スキン

 


原題:Skin
2019/アメリカ 上映時間118分

監督・製作・脚本:ガイ・ナティーブ
製作:ジェイミー・レイ・ニューマン、オーレン・ムーバーマン、セリーヌ・ラトレイ、トルーディ・スタイラー、ディロン・D・ジョーダン
製作総指揮:ザカリー・タイ・ブライアン、ニック・マーシャル、トレバー・マシューズ、ニック・ゴードン、デイル・ローゼンブルーム
撮影:アルノー・ポーティエ 
美術:メアリー・レナ・コーストン 
衣装:ミレン・ゴードン=クロージャー 
編集:リー・パーシー、マイケル・テイラー
音楽:ダン・ローマー

出演:ジェイミー・ベル、ダニエル・マクドナルド、ダニエル・ヘンシュオール、ビル・キャンプ、マイク・コルター、ベラ・ファーミガ、ルイーザ・クラウゼ、ゾーイ・コレッティ、カイリー・ロジャーズ、コルビ・ガネット、ラッセル・ポズナー

パンフレット:★★★★(800円/監督インタビューがタメになるし、角度の違うコラム3本も読み応えアリ)

(あらすじ)
白人至上主義者に育てられ、スキンヘッドに差別主義者の象徴ともいえる無数のタトゥーを入れたブライオン。シングルマザーのジュリーと出会ったブライオンは、これまでの憎悪と暴力に満ちた自身の悪行の数々を悔い、新たな人生を始めようと決意する。しかし、かつての同志たちは脱会を許さず、ブライオンに執拗な脅迫や暴力を浴びせてくる。そして彼らの暴力の矛先はジュリーたちにも向き始める。(以上、映画.comより)


予告編はこんな感じ↓

 

 


80点


「ネオナチ青年の再生を描いた」という内容が興味深いし、僕が大好きな「パティ・ケイク$」の主演であるダニエル・マクドナルドが出ているというのもあって、前売り券を購入。なかなか観に行けなかったものの、7月14日(木)、TOHOシネマズ渋谷「透明人間」を観てから、WHITE CINE QUINTに移動して、併映の「SKIN 短編」と連続鑑賞いたしました。「人は変われるはずだ!ヽ(`Д´)ノ ウォォォォッ!」と思ったり。

 

 

前売り特典は「缶バッジ」でしたな。

 

初めて行ったWHITE CINE QUINTのgif。観客は4人でしたよ。

 

 

あらすじを超雑に書いておきますと、白人至上主義グループ「ヴィンランダーズ・ソーシャル・クラブ(VSC)」」の役員を務める若者ブライオン・ワイドナー(ジェイミー・ベル)が、ひょんなことから3人の娘を育てるシングルマザーのジュリー・プライス(ダニエル・マクドナルド)と知り合って恋に落ちまして。で、自分を拾ってくれたVSCのボスであるフレッド・クレーガー(ビル・キャンプ)やその妻シャリーン(ベラ・ファーミガ)には感謝しつつも、ブライオン自身も薄々は「こういうのって良くないんじゃないカナー (´・ω・`) ウーン」と思ってたし、ジュリーからレイシストたちと手を切って!m9`Д´し ビシッ」と言われたので、組織から抜けることを決意!Σ(°д° ) クワッ!

 

 

レイシスト活動に精を出すブライオンでしたが…。

 

「好きな人が、できました」ということでカタギになろうとする、ヤクザ映画で超よくある話なのです。

 

 

そこから、VSCの一員のスレイヤー(ダニエル・ヘンシュオール)と揉める→撃たれて半死半生になったり、反ヘイト団体のダリル・L・ジェンキンス(マイク・コルター)を頼ってFBIの証人保護プログラムを受けたり、VSCに襲撃されて愛犬を殺されたり(犬好き注意!m9`Д´) キヲツケテ!)、イライラしてしまって子どもにあたる→ジュリーとケンカ別れしたり、ブライオンの情報でVSCがFBIに検挙されたりしつつ、匿名のお金持ちの女性の厚意によって、612日かけて入れ墨を除去しましてね。すっかり入れ墨が消えたブライオンが自分の子どもを産んだジュリーに会いに行ったところで映画は終わって、最後はブライオンとダリルの本人映像が出てきて、めでたしめでたし…って感じだった気がします、たぶん。

 

 

最後はこんな感じで本物のブライオンとダリルの仲良し画像が出てたんじゃないかな(「IDAVOX」より)。

 

 

正直なところ、「長編は短編の続きが描かれる→ジェイミー・ベル演じる主人公は短編で父親を射殺した子”」だと勝手に思い込んでいたので、映画序盤、ダニエル・マクドナルドが別の役で出て来てビックリした…というのは心底どうでも良いとして(短編と同じく「ソファを車で引っ張り回す“サーフィン”は出てくる」)。パンフによると、ガイ・ナティーブ監督ったら、ブライオン・ワイドナーが16ヵ月に及ぶハードなタトゥー除去手術に挑んだ「ERASING HATE」というTVドキュメンタリーを2011年に観て、映画化を決意したそうで。「ブライオン&ダリル本人に連絡を取って脚本をチェックしてもらいつつ、リアリティにこだわって撮った」というだけあって、白人主義グループの描き方が実に生々しかったですねぇ…。

 

バイキングのルーツを誇りにしながらもちゃんと勉強してなさそうな雰囲気とか、英語に詳しくない僕でも分かる「Pussy」とか「Faggot」といった「マッチョな罵倒語」が連発するムードとかは、日本の“自称・愛国者”に通じる感があって興味深かったです。あと、恵まれない家出少年ギャビン(ラッセル・ポズナー)をスカウトしてレイシストにしていく過程は、宗教とかでもよく見る手口すぎてゲンナリしたし、それと同時に「自分への愛情が“手口”だった」ことをブライオンに薄々気付かせる展開にもなってて、「スゲー厭な話」ながらスゲーよく出来てるなぁと。ボスを演じたビル・キャンプの父権主義を利用した小狡さ、妻役のベラ・ファーミガの「薄々ダメだと分かりつつもこれしかできない」という諦観ムード(短編のダニエル・マクドナルドの役が、夫が死なずに年齢を重ねたら、あんな風になる可能性があると思う)なども、素晴らしくリアルでキツかったです ('A`) ウヘェ

 

 

ビル・キャンプ、名演でしたな。こういうクソ野郎、実際に見たことありますよ。

 

ベラ・ファーミガも良かったですね〜。この人、こういう役が本当に上手いと思う。

 

 

って、役者さん的にはもちろんジェイミー・ベルは最高でした (°∀°)b ヨカッタ! ハッキリ言って、「リトル・ダンサー」のイメージしかありませんでしたが、役作りで15キロ増やしたという肉体はちゃんと強そうに見えたし(やはりバレエをやっていた男は体幹がしっかりしていてアクションで映えるのでは…ジャン=クロード・ヴァン・ダムのように)、とはいえ、繊細さも感じられる演技をしていて、褒めるところしかない感じ。本作があまりにヘビーすぎて、役から抜けるのに2ヵ月かかった上に、次の出演作を「ロケットマン」にした…という監督の証言は、笑いつつも納得しましたよ。で、ダニエル・マクドナルドは短編に続いて素敵だったし、ダリル役のマイク・コルターもカッコ良かった。つーか、パンフに載っていた「ダリル(本人)はマーベルコミックの大ファンで、特に『ルーク・ケイジ』を愛していた→ドラマでルーク・ケイジ役だったマイク・コルターが自分を演じると知って、感激して泣きだした」というエピソードが感動的で、「僕も『ルーク・ケイジ』を観なくちゃな… ( ;∀;) イイハナシダナー」と思ったり。

 

 

「ルーク・ケイジ」はNETFLIXで配信中でございます。

 

 

 

まぁ、本作の気になるところを書くと、「セックス中のボカシが台無し」というのは置いとくとして。入れ墨を消すお金を出してくれる“裕福なお年寄り”にモヤッとしたというか。パンフで北村紗衣先生「あしながおじさん」を引き合いに出されていましたが、実話だから仕方ないものの、あまりに都合の良いNPCが強いというか、でも実話だから仕方ないというか。物語的に「リアルで地道な更生ストーリー」を観ていたら、いきなりデウス・エクス・マキナが出てきて終わったような気分になった…って、伝わるでしょうか。いや、本当にあったことなんだし、現実問題、そういった「裕福な人たち」が「自分たちの問題」として取り組んでこそ世界は好転するとは思うし、本作を観てそう考える人が増えれば、それは超素晴らしいことなんですけど…。なんて言うんですかね、これって「ブライオンでしか通用しない話」に感じちゃったんですよね…。

 

 

なんとなく大好きなアニメ版「あしながおじさん」のED曲「キミの風」を貼っておきますね↓

 

 

 

最近読んだグレイソン・ペリー「男らしさの終焉」という本の中に「芸術は男性が男らしさの固定観念や思い込みをなくすのに役立つ」という文章があって(刑務所内で受刑者に芸術活動をさせるという話の中で出てきた)。実際、人間はそういう感受性を使う活動をすることで様々な視点が養われるんだろうし、ブライオンはタトゥーアーティストとしていろいろな物語を彫ってきたからこそ、レイシストへの違和感を感じることができたんだと思うんですよ。そして、ジェリーという「愛する&愛してくれる人」ができたからこそ、組織からの離脱を決意できたんでしょう。さらに、金持ちの「あしながおばさん」のおかげで全身のタトゥーを除去できて(つーか、あんなにキレイに除去できるなんて知らなかったです)、人生をやり直すことができた…って、ブライオンの更生ストーリーは幸運に恵まれているというか。「実際のレイシストにどれだけ適用できるのか」と思うと、なんか絶望的な気持ちになったりもしたのです。だってさ、そもそも「レイシストを愛してくれる真人間」って、相当ハードルが高いじゃないですか(「レイシスト」という時点で難しいのに)。

 

 

ジュリーも実在していますが、こんな人、なかなかいませんよね…。

 

 

それと「過去の非道な発言や行動を許せるのか?」って問題もあると思うのです(映画のブライオン、人とか殺してそうだし)。例えば、金田淳子先生がnoteで「『範馬刃牙』親子喧嘩編に1ミリも納得いってない女が範馬勇次郎に物申す」という文章を書いているんですが(有料だけど面白いので読んでみて!)、たぶん本当に「人間の更生」ということを考えるなら、僕らは“親として目覚めた範馬勇次郎”を許さなくちゃいけないと思うのです。でもシリーズの序盤、いきなり道場破りをされてアゴを破壊されたり、耳を切断されたり、目を抉られたりした「橘流拳法道場」の人たちとかは「格闘技をやってるのだから仕方ない ( ´_ゝ`) シカタナシ」なんて達観して許すことはできないじゃないですか…って、「グラップラー刃牙」シリーズを読んでない人には何が何やらな文章でした、すみません (ノω・、) アタシッテホントバカ

 

 

応対しただけなのに突然アゴを破壊される「橘流拳法道場」の人を貼っておきますね(「グラップラー刃牙」より)。

 

 

ううむ、僕なりに問題提起をしようと頑張ってみたんですけど(汗)、知恵熱が出てきたので、もうやめます (o^-')b ヤメマス 何はともあれ、あまりに短編の衝撃度が高かったせいで「意外と普通の話だな」と思ったりもしたし、最後の「あしながおばさん」にモヤッとしたりはしたんですけれども。「更生したレイシストの実話」というのは超大事だし、そもそも反ヘイト団体のダリルは実際に何人も更生させているのだから、やっぱり誰でも変われるはずだ!ヽ(`Д´)ノ ウォォォォッ! 本作は現在も短編付きで上映されていたりするのでね、興味がある方はぜひ観てみてくださいな。

 

 

ということで、「ロッキー4」の画像を貼っておきますね。
 
 
おしまい。

 

 

 

 

ジェイミー・ベルと言えばこの映画。立派な役者になって… (ノД`) アァン
 

ネオナチ更生ムービーといえば思い出す作品。とはいえ、内容はうろ覚えなんですよね…。

 

 

パンクバンドvsネオナチを描いたスリラー。僕の感想はこんな感じ。

 

 

北村紗衣先生がパンフで引き合いに出されていた小説。大好きでございます!

 

 

ダニエル・マクドナルドの出世作。僕の感想はこんな感じ。

 

 

大好きすぎる「ロッキー」シリーズ4作目。僕の感想はこんな感じ。