his(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

his(ネタバレ)

his

 


2020/日本 上映時間127分

監督:今泉力哉

脚本:アサダアツシ

企画:新村裕、アサダアツシ

製作:狩野隆也、宮崎伸夫、小西啓介、板東浩二、宇田川寧

エグゼクティブプロデューサー:多湖慎一

プロデューサー:服部保彦、柴原祐一

共同プロデューサー:飯田雅裕

撮影:猪本雅三

照明:赤津淳一

録音:根本飛鳥

美術:松永桂子

編集:相良直一郎

音楽:渡邊崇

主題歌:Sano ibuki

監修:南和行

出演:宮沢氷魚、藤原季節、松本若菜、松本穂香、外村紗玖良、中村久美、鈴木慶一、根岸季衣、堀部圭亮、戸田恵子

パンフレット:★★★★☆(850円/3本のコラムがタメになるだけでなく、扉ページを開くと2人が青空の下に解放される表紙デザインが素敵ッ! 裏表紙の割れた卵も素敵ィッ!)

(あらすじ)
春休みに江ノ島を訪れた男子高校生・井川迅は、湘南の高校に通う日比野渚と出会う。2人の間に芽生えた友情はやがて愛へと発展するが、迅の大学卒業を控えた頃、渚は「一緒にいても将来が見えない」と別れを告げる。出会いから13年後、ゲイであることを周囲に知られるのを恐れ、田舎で孤独な生活を送る迅の前に、6歳の娘・空を連れた渚が現れる。居候させてほしいという渚に戸惑う迅だったが、いつしか空も懐き、周囲の人々も3人を受け入れていく。そんな中、渚は妻と娘の親権を争っていることを明かし、ずっと抑えてきた迅への思いを告白する。(以上、映画.comより)


予告編はこんな感じ↓

 

 

 

93点

 

 

タイトルを初めて見た時は「おいおい、旅行業法に基づく旅行業者の映画なんて興味ねーよ (゚⊿゚)」と思った…というのはウソだとして(不要な前書き)。今泉力哉監督と言えば、映画仲間のスケルティアさん&フワリコさんが5〜6年前から猛プッシュしてたものの、僕はそれほど興味が湧かなかったんですが、しかし(一応、「サッドティー」は観た)。2018年に劇場で観た「パンとバスと2度目のハツコイ」が良くて、それ以来、「劇場公開作品はなるべく足を運ぼうかな (・ε・) ナントナク」と思うようになりましてね。さらに本作は、愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」「ムービーウォッチメン」のリスナー枠に選ばれたのもあって、観ることに決定。1月下旬公開作ながら、なかなか劇場に足を運べなかったんですけど(汗)、6月12日(金)、コロナ渦…じゃなくて、コロナ鍋…でもなくて、コロナ禍が収まってきて(不要なボケ)、やっと営業が再開したユナイテッド・シネマ豊洲会員サービスデー割引を利用して鑑賞いたしました(その後、昼食を摂るオヤツを食べる「暗数殺人」をハシゴ)。「佳き時間を過ごした… ( ´_ゝ`) マンゾク」と思ったり。

 

 

当日のgif。5番スクリーン、観客は3人でした。

 

鑑賞後の僕の気持ちを代弁する範馬勇次郎を貼っておきますね(「範馬刃牙」より)。

 

 

最初に若干のウソや誇張を交えながらあらすじを雑に書いておきますと、映画は2010年からスタート。朝チュン感溢れるムードの中、ゲイのカップルの日比野渚(藤原季節)と井川迅(宮沢氷魚)は「お前のセーター、オレの方が似合うじゃん 川`∀´)」「や〜め〜ろ〜よ〜 (´∀`) ンモウ!」なんてイチャイチャしていたものの、渚が突然、「別れよっか 川´_ゝ`)」なんて言い出したところで目が覚めて、物語の舞台は2018年(現在)へ。迅は岐阜県白川町で自給自足ライフをそれなりに楽しんでいたんですが、これまたいきなり渚が娘の空(外村紗玖良/6歳ぐらいの設定)を連れて来訪。動揺する迅を前に、渚ったら勝手に娘と住み始めるから、「マジか!Σ(゚д゚;)」と。妻の玲奈(松本若菜)との離婚調停中であーだこーだといった事情を聞きつつ、てめえ勝手にこっちを巻き込んでんじゃねぇよ殺すぞと至極当然の不満をぶつけたりしながらも、ああん、やっぱり渚のこと大好きだし、ちくしょう、空ちゃんもスゲー可愛いから、迅ったらすっかり「これも悪くない」顔というね。

 

 

最初は「勝手に振ったくせに8年振りに現れたらガキ連れて来やがって」ムードだったんですけれども。

 

いつの間にか迅ったら、すっかりグレート巽気分なのでした(「餓狼伝」より)。

 

 

そこから「玲奈が空を連れて行ってしまう」「ションボリした渚がすべての事情(結婚後、やっぱり自分はゲイなんだと自覚した…というか、迅のことが忘れられなかった)を迅に話して、和解セックス」「玲奈の仕事が忙しすぎて面倒をみてもらえない空が家出→警察に保護される→渚たちのところに戻ってくる」「役場の吉村(松本穂香)が迅に告白するもフラレてしまう」なんて、すったもんだがありました ┐(´ー`)┌ ヤレヤレ さらに「空が住民だらけの公民館で、迅と渚の濃厚キスを見てしまったことを話してしまう(まるでトトロの存在を力説するメイのようにーー)」という死角外からのアウティングを食らって、迅は海より深く落ち込んだものの、仲良しだった近所の猟師・緒方(鈴木慶一)の死を経て、その葬式の場でカミングアウトしてみれば、みんなが笑ってる&お日様も笑ってる(そして子犬もッ!)。

 

 

いろいろあって、お互いの愛情を確かめるというね (iДi) ヨカッタネー

 

 

で、空の親権を巡って、渚と玲奈の離婚調停が本格的にスタートすると、最初はモロに旧時代的な価値観の弁護士・水野(堀部圭亮)の攻撃を食らって劣勢だったんですが、理解ある敏腕弁護士・桜井(戸田恵子)のターンになると、母親失格なエピソードを連打された玲奈ったら超涙目であり(苦笑)、勝負あったかーーと思いきや、そこまでだッ 川 ゚д゚) ナギサ 責められる玲奈を見てほだされた渚は弁護士の攻撃をやめさせて、「自分がゲイだって黙って結婚したことは本当に酷いと思う」「僕が空と一緒にいる時間を過ごせたのは玲奈のおかげなんです」「ごめんなさい」ってな調子で、自ら勝利を手放すのです。でもその後、「迅の胸で泣く渚」や「自分の母(中村久美)に厳しめの教育をされて笑顔少なめの空の姿(小学校の担任からも心配される)」、「喫茶店で見かけた仲むつまじいゲイのカップル」などを見た玲奈は開眼!Σ(゚д゚し クワッ! 空を連れて渚&迅の元を訪れましてね。学校の校庭で楽しげに空は自転車を乗り回すと、みんなが笑っていて、お日様も笑っているのでしたーー(そして子犬もだッ!)。

 

 

クライマックスは法廷バトル! 勝利を目前にして…。

 

渚はアントニオ猪狩顔で弁護士を止めた…ってのは盛りすぎでした、すみません(「グラップラー刃牙」より)。

 

 

正直なところ、別に劇中でお日様や子犬が笑ったりはしていないんですが(緒方が飼っていた猟犬は出てくる)、スゲー良い映画でしたヨ (iДi) イイエイガダナー 作品をすべて観ているワケではありませんけど(汗)、僕が観た限りの今泉力哉監督作の中では一番わかりやすく、直球な作品だった印象。それは企画&脚本が完全に別の人(アサダアツシ)だったから…というのも大きいんですかね(脚本には今泉監督もかなり参加したそうですが)。ハッキリ言って、役者さんたちの演技が素晴らしいわ、作中で描かれるテーマとその着地も見事だわ、もちろん映画として面白いわと、もう褒めるところしかない感じ。

 

まず、主演の宮沢氷魚さんが超イイ男なんですが、繊細な演技がとても良かったですよ。そして近年、名バイプレイヤーとして活躍してきた藤原季節さんもまた名演を披露していたし(空ちゃんとのコミュニケーション振りやクライマックスの謝罪シーンが素晴らしい!)、「仮面ライダー電王」からの付き合いである松本若菜さんの「追いつめられるキャリア系シングルマザー」振りは100点のクオリティでした。あと、役所の吉村を演じた松本穂香さん、「弁護士に詰められてオロオロする演技」が実にリアルだったし、僕も告白されたかったです(なんだこれ)。そして、何よりも空役を演じた外村紗玖良さんが可愛くてね…(遠い目)。映画は本作が初出演だそうですが、自然な演技を見せていて驚かされたというか、これからも頑張ってほしいものです ( ´_ゝ`) エラソウ

 

 

宮沢氷魚さん、僕とはDNAレベルで別の生き物かと思うレベルの美青年でした。

 

藤原季節さんもデラックス・カレー・プールに入るシーンが最高…って、「全員死刑」が混ざっちゃった!(*ノ▽ノ) キャッ

 

松本若菜さん、素敵な役者さんになりましたな…(しみじみ)。

 

松本穂香さんに告白されるような人生、送ってみたかったものです。

 

外村紗玖良さんの演技も見事! 今後、活躍されると思います。

 

外村紗玖良さんを観た僕の気持ちを代弁するゲリー・ストライダムを貼っておきますね(「範馬刃牙」より)。

 

 

で、映画のテーマとその描き方も素晴らしかった! もうね、同性愛者を取り巻くハードな社会状況を非常にわかりやすく描いていて、どんな人でも「こりゃあ酷いな ('A`) ウヘェ」と感じるように作られているのです。例えば、迅が会社の飲み会で「お前、ゲイなの?」なんてネタっぽく問いつめられて、心を殺しながら「ゲイとかホモとか勘弁してくださいよ〜」なんて返すくだりとか、ヘテロの僕だってどの角度からも無神経で酷い行為なのは分かるワケでさ。とはいえ現実問題、残念ながら「お前、ホモかよ」「バカ、やめろよ(笑)」といったやり取りをした or 見たことがある男性は少なくないのではないでしょうか。堀部圭亮さん演じる弁護士の差別発言の数々については、さすがにやりすぎに感じつつも、とはいえ、未だに「伝統的な家族」だなんて絵空事を主張する人がいたり、夫婦別姓同性婚が認められていなかったりする現状を踏まえると、「今でもこんなレベルなのかな… (`Δ´;)」と。

 

しかも、その上で「田舎町の良さ」や「シングルマザーや仕事に生きる女性の大変さ」までも描いていたのは、予想外だったというか。田舎といえば<恐怖の実話!悪夢と化した「夢の田舎暮らし」 場所によってはこんなにヤバい「人間関係」>といった偏見しかなかったので、空によるアウティング後は酷い差別が待っているのだろうと。「こうなったら今にみておれでございますYO!ヽ(`Д´)ノ」とフライング「丑三つの村」気分だったんですけど、岐阜県白川町の人々は温かかったーー。そう言えば、今まで別に田舎に住んだことなんてなかったのに、何かあったら村八分にされるって、僕が勝手に思い込んでただけだった。だから、迅がみんなの前で告白した後、根岸季衣さん演じる高齢女性が「年をとったら男も女も関係ない」と場を和ませる発言をした時は、その優しさに涙が出たし、「アタシ、白川町の人たちの気持ち、全然わかってなかったんだ… (ノω・、) グスン」「ももへの手紙」ライクに猛省ですよ。松本若菜さん演じる玲奈の苦労もしっかり描いていて、単純な悪者にしなかったのも好感が持てたし、空が願望として語った「パパとママと迅くんと仲良く暮らす」が実現したかのようなラストも素晴らしくてね…。なんて言うんですかね、僕的には、同性愛者を主人公にした優しい目線の映画を作ってみたら、生きる人たちすべてに優しい映画になった…って印象を受けたんですけど、全然違ってたらゴーメンナサイヨ!( ゚д゚) ゴーメンナサイヨ!

 

 

アウティング後、僕はモロにブロディ気分だったものの、みんな優しかったのです(「プロレススーパースター列伝」より)。

 

 

なんとなく「日清 強麺」のCMを貼っておきますね (´・ω・`) アンディ...

 

 

 

その他、思ったことを書いておくと、「迅がカフカの『審判』を読んでるのは、この世の中で理不尽さに直面している自分たちを表しているのかな」とかぼたん鍋が美味そう… (´Д`;) タベタイ」とか「見えないところでビンタするというK.U.F.U.(ちょっと「きみはいい子」の虐待シーンを連想した)」とか「中村久美さんによる“ナチュラルなイヤミババア”振りが見事!」とか「“根岸季衣さんが演じていた役はずっと禁煙パイプをくわえていたのに、葬儀の時は亡くなった緒方のタバコを吸っていた”という細かい演出(パンフで知りました (´∀`) タメニナルー)」とか「ずっとコートを着てた渚がラストに脱いでるのは『村に馴染んだ』とか『心を解放した』といった意味もある?(そもそも厳しい冬から暖かい春への物語ではありますがー)」とか「ラストの『私、自転車乗れないんですよね 川´_ゝ`)』という玲奈の“歩み寄りの台詞”に涙!」とかとかとか。テーマが素晴らしいだけでなく、良く出来た脚本や丁寧かつ絶妙な“間の演出”、練られた台詞などのおかげで、映画としても本当に面白かったし、間違いなく本作は今泉力哉監督の新たな代表作になったんじゃないかしらん。

 

 

このビンタシーン、どちらも可哀相でしたな…。


 

 

って、ベタ褒めですけど、率直なところ、直球すぎて照れるところもあったというか。例えば、空の「パパは迅くんのことが好き。迅くんもパパのことが好き。どうしてそれが変なの? 変じゃないよね?(・ε・し」的な台詞自体は1ミリも間違っていないけど、若干の「正しいメッセージを入れました」感があって。こういうテーマを扱っているからこそ誤解を招かないよう、ストレートに伝えるのが大切だとは思うんですが、今泉監督作にしては、あまりにもわかりやすすぎるとも感じたというか、ところどころの剛速球振りに少しだけ居心地が悪くなった部分がなくもなかったと言わざるを得ないような気がしないでもない(歯切れの悪い文章)。

 
あと、それ以上に気になったのが、映画中盤、渚が迅にテーブル越しに抱きついてくるシーン。僕は渚の身勝手さに相当イライラしていたし、「やめろよ」と拒否する迅にスゲー共感していたのもあって、上に乗られた時は「マウント、返せ!」と手に汗握っていて。特に、迅が左手で渚のセーターの背中部分を摑んだ瞬間は「よし、左手を引くと同時に、右腕で相手の体を押しながらブリッジしてスイープだ!m9`Д´) ビシッ」とエキサイトしたんですが、結局、そのまま雪崩式セックスだったのは、なんて言うんですかね、作劇上ではそれが正しいにせよ、ちょっとガッカリした…って、まったく共感を呼ばなさそうな文章ですな (´∀`;) スミマセン
 
 
渚が迅に覆い被さったこの場面。
 
こうすればスイープできたのでは…って、心底どうでも良かったです。
 
 

そんなワケで、今泉力哉監督、「愛がなんだ」「アイネクライネナハトムジーク」→本作と、毎回、何らかのブレイクスルーを達成している感があって、相当スゴい人なんじゃないでしょうか(同時期に公開された「mellow」を劇場で見逃したのが悔やまれる…)。作風とかは違うけど、「ムーンライト」のような「同性愛者への偏見がなくなる映画」だと思うし、「マリッジ・ストーリー」のような「離婚映画」としても良かったし、何よりも「人間とは許し合って生きていくんだな」なんて思わされたし…。彼らの前日譚を描いたというドラマ版も少し観たくなりました。ただでさえ今年はベスト級の新作映画が目白押しなのに(現時点で「ベスト10」が飽和状態になってる…)、またもや名作を観てしまったというか、本当に良い映画でしたヨ ( ;∀;) イイエイガダナー こういった優しい作品が地上波とかでバンバン放送されれば、もっと世界は生きやすくなるんじゃないかなぁ…なんてね。一部の映画館ではまだ上映しているので、未見の方はぜひ観てみてくださいな。

 
 

 

 

ソフトは8月4日に発売予定でございます。

 

 

前日譚となるドラマ版。8月5日発売予定ですが、ちょっと観たい。

 

 

昨年観てスゲー良かった今泉力哉監督作。僕の感想はこんな感じ。

 

 

昨年、スゲー話題になった今泉力哉監督作。僕の感想はこんな感じ。

 

 

2018年に観た今泉力哉監督作。僕の感想はこんな感じ。

 

 

非常に良かった恋愛映画。僕の感想はこんな感じ。

 

 

ゲイのカップルが子どもを育てる映画繋がりで。僕の感想はこんな感じ。

 

 

劇中で読まれていた絵本。オレ…いつか娘に読むんだ…(死亡フラグ風に)。