わたしたち(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

わたしたち(ネタバレ)

わたしたち

わたしたち

原題:우리들 The World of Us
2016/韓国 上映時間94分
監督・脚本:ユン・ガウン
製作:イ・チャンドン
製作総指揮:チョン・テソン
企画:イ・チャンドン
出演:チェ・スイン、ソン・ヘイン、イ・ソヨン、カン・ミンジュン、チャン・ヘジン
パンフレット:★★★★☆(600円/ノートを模したデザインが良いし、内藤朝雄先生と門間雄介さんのレビューもタメになります)
(あらすじ)
学校でいつもひとりぼっちだった11歳の小学生の少女ソン(チェ・スイン)は、転校生のジア(ソン・ヘイン)と親しくなり、友情を築いていくが、新学期になると2人の関係に変化が訪れる。また、共働きの両親を持つソンと、裕福だが問題を抱えるジアの家庭の事情の違いからも、2人は次第に疎遠になってしまう。ソンはジアとの関係を回復しようと努めるが、些細なことからジアの秘密をばらしてしまい……。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




100点


どこかでチラシを見掛けた時、良さげに感じたんですよ。ただ、「いじめ問題とか扱っていたらキツいな」とも思って、スルー予定だったんですけれども。こういう作品を家で観ると、DVDなどの場合、気まずいシーンで一時停止しちゃうことが少なくないので、「やはり劇場で観ておかねば!(`Δ´;) ヌゥ」と考え直しましてね。気付けばほとんど上映終了状態だったものの、二番館的役割を持つユジク阿佐ヶ谷で上映されていたので、12月半ば、新宿で「GODZILLA 怪獣惑星」「DESTINY 鎌倉ものがたり」を観てから、阿佐ヶ谷まで足を運んできました。素晴らしかったです… (iДi) イイエイガダナー ハッキリ言って、僕のような偏差値の低い男が感想を書いても詮無きことではありますが(汗)、本作の良さを1人でも多くの人に伝えるべく、ダラッと駄文を書き散らしておきますね。


会員なので、1000円で鑑賞。観客は6人ぐらいだったような(ウロ覚え)。
ユジク阿佐ヶ谷


まず、ストーリーを雑に書いておくと、主人公の少女ソンは、10歳の小学生なんですが、残念ながら友だちは皆無「シレーヌ、血まみれでもきみはうつくしい」的なことではなくゼロという意味…という無駄な文章)。映画は「ドッジボールのチーム分けで、一番最後に残る」という地味にキツい状況からスタートしましてね。しかも、いや〜なムードで「アンタ、線を踏んだでしょ 川 ゚д゚)」と指摘されて(その真偽は不明)、ソンは「えっ、踏んでないよ… (´・ω・`し」と言いながらも雰囲気に逆らえずに外野に出るというね。その後、場面は夏休み前の終業式の日になって。ソンは“イケてるグループ”のリーダー・ボラから誕生日パーティ招待されるのと引き替えに、3人分の掃除を1人で片付けてジアの家に向かえば、なんと「ウソの住所を教えられていた」という残酷なオチだったりするから、もうこの時点で劇場を出たくて仕方なかったです (ノω・、) カエリタイ...


主人公の少女ソン。彼女が受ける仕打ちがあんまりすぎて…。
10歳の少女ソン(チェ・スイン)

僕は開始10分程度でエシディシ状態に追い込まれたのです(ジョジョ第二部より)。
三角絞めでつかまえて-あんまりだー!


ソンがボラの意地悪すぎる対応にションボリしていたら、声を掛けてきたのが転校生のジア。終業式の日、学校で挨拶した程度だったんですが、ボラにあげる予定だったミサンガブレスレットを褒めてくれた→ジアにプレゼントしたことで、すっかり友だちになりましてね… (ノДT) ヨカッタネー ジアが家に泊まりに来たりして、ホウセンカのマニキュアを塗ったり、一緒にご飯を作ったり、夜は打ち明け話をしたりして、夏休みが輝きまくっていたんですが、しかし。母親とイチャイチャするソンを見たジアが嫉妬して冷たくなったりすると同時に、塾に通っていたジアはボラとも友だちになっていたことが発覚。新学期が始まると、「私はここYO!ヘ(゚∀゚*し」と手を振るソンをジアは無視して、ボラのグループと仲良くなりまして。ソンはまた独りぼっちになるのでした… (´Д`;) ソンナァ


終業式の日、ソンは学校に来たジアと出会い、ひょんなことから友だちになりまして。
転校生ジア(ソン・ヘイン)

2人はお互いの家を行き来したりと、すっかり仲良しに。
すっかり仲良し

手先が器用なソンは、ホウセンカのマニキュアを塗ってあげたりするのです。
ホウセンカのマニキュア

泊まった夜は、定番の「打ち明け話」。2人は親友のようだったんですが…。
打ち明け話

母親といちゃつくソンに嫉妬したジアは、少し冷たくなりまして。
母親といちゃつくソン

なんとか仲直りするも、ジアは塾でボラと友だちになっていたりしましてね…(ソンは貧乏なので通っていない)。
ボラとも仲が良かったジア

新学期が始まると、ジアはすっかり塩対応であり、ボラたちと仲良くする…って、あんまりだYO!ヽ(TДT)ノ ウワァァァン!
すっかり塩対応なジア

この時の僕の気持ちを代弁する愚地独歩を貼っておきますね。
ここから先は地獄だな


非常に残念な状況に追いやられたソンは、空気を読めない…いや、「読みたくない!ヽ川`Д´)ノ」とばかりに頑張って行動を起こすも、「みんなが話しているところに近づいて行く→全員立ち去る」とか「ジアの誕生日に“高いプレゼント”を買う→ジアが自分には内緒で誕生パーティを開いていたことが発覚」とかとか、裏目に出まくっただけでなく。さらに、ジアがソンにくれた色鉛筆セット(万引きしたもの)のことを「貸しただけなのに返してくれないの! 川;`Δ´)」とボラたちにウソをついたため、ソンはわけのわからぬままなじられた上に「あの子、臭いよね 川´д)ヒソヒソ(´д`し」なんて悪口も言われてしまったりと、踏んだり蹴ったりな状況だったんですが、しかし。

学校のテストでジアが1位になったことで、嫉妬したボラが意地悪を開始。今度はソンを仲間に引き入れると、彼女はジアの素行(ソンの弁当を地面に落とした)を暴露して窮地に追い込み、「弱い者たちが夕暮れ、さらに弱い者を叩く〜♪ (゚Д゚)」的な仁義なき泥仕合に突入ですよ。で、泥酔したソンの父親を目撃したジアはボラに報告→黒板にそのことを書かれたソンは激怒して、母親同士の会話で得た「ジアはいじめられっ子だった」という情報をぶつけて、とうとう2人はケンカをするんですが…。その夜、ソンは弟の「やり返してばかりだったら、いつ遊べばいいの?(゚⊿゚)」という発言を聞いて、開眼!Σ(°д° し クワッ 授業のドッジボールで「アンタ、線を踏んだでしょ 川 ゚д゚)」とイチャモンをつけられたジアを「踏んでなかったよ (´・ω・`し」とソンがかばったことで、2人の関係が少し前向きになったような空気が流れて、映画は終わってたんじゃないかしらん。


「父親はアル中」と黒板に書かれて、激怒→ジアと取っ組み合いのケンカをしたソンでしたが…。
父親はアル中と黒板に書かれて激怒

弟ユンの素朴な発言によって、我に返りましてね。
4歳の弟ユン

最後はこんな感じで終わってましたよ… (ノω・、) グスン
ラストシーン


本作の何がスゴいって、リアル感。撮影がナチュラルなだけでなく、オーディションで選んだ子役たちと3ヵ月間のワークショップをした上で、「台本を渡さずに撮影前に説明をして演技させる」という演出法を用いたことで(是枝裕和監督も子役にやっている手法だとか)、芝居も凄まじくリアルでして。実際に子どもたちの日常を垣間見ているような気持ちになるんですよね。特に主演のチェ・スインは素晴らしいとしか言いようがなくて、ああいう子だとしか思えなかったですよ。それと、心の動きをフード表現でわかりやすく見せたりとか、2人ともいじめられると「あの子、臭いよね 川´д)ヒソヒソ(´д`し」と言われる展開とか、演出も上手いなぁと感心いたしました。


主演のチェ・スイン、可愛すぎないところも良かったです。
手を振るソン


そして、物語も示唆に富んでいて素晴らしかった。ソンに初めて友だちができるくだりは「カラフル」を連想したし、僕が昔いじめられた経験を重ねただけでなく、自分の娘(現在6歳)が今後体験するかもしれないとも思って(いじめる側でも、いじめられる側でも)、胸が痛かったりしたんですけれども。根本的には「人間社会全体に通じる話」というか。「代償行動としての他者への攻撃」が描かれていて、その上で「攻撃された時、どう考えれば良いのか?」も提示されていて。本当にね、いろいろと考えさせられましたよ。


もちろん「いじめ」は良くないものの、ボラの行動にも彼女なりの理由はあるのです。
泣いていたボラ


最後、ソンは友情を信じて終わるんですが、それがとても好きで。現在45歳の僕はすっかり穢れてヘドロのようですが、やっぱり“黄金の精神”はあると信じたいし、そういう真っ直ぐな人は報われてほしいなぁと。本作は“ホウセンカのマニキュア”の演出が見事なんですけど、パンフによると、韓国版ポスターのイラストは「ジアがホウセンカをすり潰している→映画のその後、2人が仲直りして、ソンが落ち込んだ時にジアが彼女のために行動している」という未来を描いているそうでして。それを知った時は涙が噴出したし、さらにこの映画が好きになりました。まだ公開する劇場はあるみたいなので、興味がある方はぜひ観てみてくださいな。


韓国版ポスターを貼っておきますね。
韓国版ポスター


おしまい。




本作をプロデュースしたイ・チャンドン監督作。僕の感想はこんな感じ



イ・チャンドンがプロデュースしたウニー・ルコント監督作。僕の感想はこんな感じ



なんとなく連想した原恵一監督作。僕の感想はこんな感じ



タマフルの推薦図書特集でも紹介された内藤朝雄先生の著作。かなりタメになります。