かめ新聞 -122ページ目

『愛燦燦』

 風 燦々と この身に荒れて
 思いどおりにならない夢を 失くしたりして
 人はかよわい かよわいものですね
 それでも未来たちは 人待ち顔してほほえむ
 人生って 嬉しいものですね
        美空ひばり(1986年)

  新幹線で東京から西に向かうとき、そこだけ時代が遡るかのような風景に出会う。天下分け目の関ヶ原から米原に至るあたり。右手に伊吹山を見ながら懐かしき農村風景が続くそこは、どんなにそれまで晴れていても、どんよりと暗く重い雲がかかる。雨が降る。冬ならば雪だ。哀愁の米原駅ホームに降りたち、北陸本線に乗り換えて北へ向かう先に僕の実家はある。この辺りの人は今も電車とは言わず汽車と言う。今も変わらない垂直の背もたれの対面型シートに座り琵琶湖を望むと、故郷に帰る気分は最高潮に達する。故郷とはこの風景のことだと思う。

 変らない米原駅と北陸本線を後に引きずりながら、また東京に戻った。

今夜、すべてのバーで 4

女 「昨日の夜は、どこへ?」

男 「そんな昔のことは 覚えちゃいない」

女 「今夜は一緒に?」

男 「そんな先のことは わからない」

メリークリスマス

建築家の気質

 『五重塔』という小説が幸田露伴によって明治中期に書かれている。江戸は谷中感応寺五重塔の建設を巡る話になる。技量はありながらも世渡りが下手で「のっそり」とあだ名される大工十兵衛。こののっそりが実に面白い。今の言葉で言えば、すべて逆、逆の行動をとっていく。

 塔建設の噂を聞くや、親方源太をさしおいて上人様(施主)に我こそはと模型を作り直談判する。義理と人情の江戸っ子として描かれる親方源太は一緒にやろうと弟子を気遣うが、のっそりは一人じゃなきゃ意味が無いと断ってしまう。上人様の理解あって、源太は裏方にまわりのっそりを支えることになる。ところが棟梁となったのっそりはこの源太のフォローさえも、余計な気遣いはいらぬと拒否してしまう。
 完成した五重塔に猛烈な台風が襲う。上人様の使いがのっそりを呼び出すが、見に行くまでもない、釘一本抜ける事はないとまたも拒否。そんなのっそりの貧乏家屋は屋根も半分吹き飛んでいるというのに。少しでも壊れようものなら自ら死を覚悟している迫力であった。

 文学的価値には門外漢だが、リズム感あふれる文体がまたいい。名誉欲や金銭欲よりも創作欲が勝っているところもいい。やりたいと思ったらここまでやらなきゃと尻を叩かれる。

『吉阪隆正の迷宮』

 12月17日は吉阪隆正の命日だった。亡くなって25年が経つ。存命なら米寿になるし、何より東京の風景も違っていたかもしれない。学生の頃からの最も憧れの建築家である。

 『吉阪隆正の迷宮』が出版された。ちょうど一年前、2004吉阪隆正展が開催されていたが、その展示・シンポジウム・夜話・有名建築家へのインタビューなど盛りだくさんな本としてまとまられた。その企画から展示までに関らせていただいた事もあり、ひいき目もあるが、とてもいい本になった。お勧めです。

『鎌田行進曲』

 別にふざけて困らせたわけじゃない
 愛というのに照れてただけだよ
 夜というのに派手なレコードかけて
 朝までふざけようワンマンショーで
      沢田研二(1977年)

 先日見に行ったつかこうへいの舞台『鎌田行進曲』の挿入歌に『勝手にしやがれ』が使われていた。ドンピシャだった。偶然だったが、この舞台へ向かう途中の僕はこの曲を口ずさんでいた。穏やかな日常のシーンなど何一つない『鎌田行進曲』や、素直になれずに不幸せに転がり落ちていく『勝手にしやがれ』、なんて感じがただ好きなだけだったりする。
 だけど、こういう場面(シーン)の良く似合うギラギラの空間(背景)をいつか作ってみたいとチャンスを狙っている。

百万個のみかん

 

小さな家とキャンバス 他には何もない
貧しい絵かきが 女優に恋をした
大好きなあの人に バラの花をあげたい
ある日街中の バラを買いました
百万本のバラの花を
あなたにあなたにあなたにあげる
窓から窓から見える広場を
真っ赤なバラでうめつくして
ある朝 彼女は 真っ赤なバラの海をみて
どこかの お金持ちが ふざけたのだとおもった
ちいさな家とキャンバス 全てを売ってバラの花
買った貧しい絵かきは 窓のしたで彼女を見てた
百万本のバラの花を
あなたはあなたはあなたは見てる
窓から窓から見える広場は
真っ赤な真っ赤なバラの海
出会いはそれで終わり 女優は別の街へ
真っ赤なバラの海は はなやかな彼女の人生
貧しい絵かきは 孤独な日々を送った
けれどバラの思い出は 心にきえなかった
     『百万本のバラ』加藤登紀子

建築家の職能 

 国会証人喚問を見た。建築家に職能はあるのだろうか?
 建築家探しの旅にでる。ドイツの建築家ブルーノタウトは、著書『日本美の再発見』(1939年)の中で、桂離宮を造営した小堀遠州(諸説あり)を次のように讃えている。
 小堀遠州は、あらかじめ三個の条件を提出してその承認を求めた。
 これは現代の建築家にはまるで夢のような話である。
 その条件の
 第一は「ご費用お構いなきこと」、
 第二は「ご催促なきこと」、
 第三は「ご助言なきこと」、
 というのである。
 彼は最高の単純を成就するには、多くの労力と時間を要することを知っていた。そこで多大な時間を必要とする多くの試みを意のままに行う自由をまず確保しようとした。つまり、彼は自分自身に課した任務を達成するためにこの自由を必修としたのである。
 建築家としての極端な美談ではあるし、一般の方には誤解があるかもしれない。しかしこのような凛とした態度と熱意は失いたくない。

かめ会・12月のある日

 かめとその仲間たちで、イタリアンな週末を過ごしました。気合いの入ったイタリア料理とクラッシックギター生演奏もありました。

1・チーズとクラッカーとワイン
2・ブルスケッタ
3・アボガドと水菜のサラダ
4・サトイモのオムレツ
5・ブルーチーズのクリームパスタ
6・野菜のリゾット
 (うえの君の作った低農薬米こしひかり100%)
7・鶏肉のローズマリー香味焼き
 ~生演奏 クラッシックギター
 『素朴な歌』『11月のある日』
8・ミネストローネ
 (鶏ガラから作ったブイヨン・辰巳芳子より)
9・チーズケーキとタルト

『色つきの女でいてくれよ』

 

 移り気は夢の数と 同じだけ
 それぞれの心に それぞれの夢を
 さよならぼくの美少女よ
 きりきり舞いの美少女よ
 いつまでも いつまでも
 色つきの女でいてくれよ
  ザ・タイガース(1982年)

 今年初めの話になりますが、かめ設計室に遊びにきてくれた9人の色つきの女たちが、それぞれの「今年の3つの目標」を紙に書いていきました。それから一年間かめバーの壁に貼ってありました。「料理をする」「・・免許を取る」といったものから「カポエラを習う」「人を大切にする」「もうちょっとどん欲になる」など人それぞれです。他人の目標ではありますが、年末が近づくにつれいよいよ気になっています。目標をかなり達成されていそうな方もそうでない方もいかがお過ごしですか。来年もあくまでも志は高く。色つきの女でいてくれよ。
 

流行建築通信13/PAPI


 建築雑誌a+uの臨時増刊最新号にまるごと「トヨタ夢の住宅 PAPI」が特集されていて驚いた。トヨタが夢の住宅と称して、モデルハウスを作った。もちろんプリウスも登場。
 トヨタの技術が夢の住宅を作るというので期待したが、すかされた。この環境云々時代に、未だ20世紀的価値観が繰り広げられている。何も価値観は変わっていない。何せ、敷地1000坪/延べ600坪の豪邸などに、この時代の何割の人が夢を見れるんだろうか。
 売りは、ユビキタス。「時間+空間=「時空間」を、てのひらの上で一度に管理できます 」だって。トヨタは神様に近づいているらしい。