小川凛 「カマキリ」
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第52話 vis

“ビス”

ビスとは
ドライバーを使って回せるネジの
その先が釘のように尖っている鉄の事だ

そのビスの
大きめのヤツを
土をまぶして水にさらし

自宅にあった
部屋の出窓の部分に並べ
太陽に当て
数日放置し酸化させる

それを何度か繰り返した。




最近のはよく出来てるのか
なかなかしぶとく

しばらく時間はかかったけれど

いくつかは赤褐色に…
上手にサビた。


サビたビスや釘は

タチが悪い


それが刺さったりしてサビ(の中に含まれる破傷風菌)が体内に入ると
毒となり

人を殺すから

破傷風って言葉を耳にしたことがあるだろうか?

その菌が体内に残り起こる症状が

その破傷風だ


治療が遅れれば
破傷風は
ほぼ必ず人を殺す


僕の身に
何かあってもいいように
遅効性の毒…
時限爆弾のようなモノを
川口の身体に仕込む為

始めから
この作業をやろうと
決めていた。


ボロボロにサビたビスを手に取り
もう片方の手には
それを回す電気ドリルを持った


電気ドリルには色々あるが
なるだけ音の小さいものを選んだ

ドリルの音って案外うるさいから、


本来ビスを打ち込むであろう木材より
人の皮膚の方が硬いなんて事はないだろう

本当は、お尻とかが良かったがオムツがあって無理なので

そこにより近い太ももに
ビスを垂直に当て
それからドリルで回した


ビュルン



「ウッ…!」



大袈裟な川口の反応はなかなかだったが


ビスが皮膚に埋まる感触は
驚くほど軽く
手応えなどはあまりなく

電気ドリルのトリガーを引いたら
その一瞬でバッテンになっている面(ドライバーが当たる部分)以外は
すぐに体内に収まって見えなくなってしまった


「なんだよ
まるで豆腐だな(笑)」


ギュルン…

ビュルン…

ギュルルルン…


多少の音の違いはあれど

ビスはすぐに体内に消えてゆく

柔らか過ぎて
あまりに手応えがないので

もう少し硬そうな
手の平や足の裏にも数本打ち込んだ

どこに打ち込んでも川口は「ハッ」とか「フッ」とか「ウッ」とか(笑)

なんか一瞬言うだけで

思ったよりツマらない…

ネジが入るまでが一瞬すぎるからかな?

実際の効果よりも

その時間の短さから
気合いで痛みはなんとか我慢出来るのかもしれない



ブブブ…ブゥリュン…

ただ、手の平や足の裏は
さっきよりも手応えが多少出て

入ってく感触が手に伝わってきて
ちょっとだけ気持ち良かった


川口に変化はあまり見られなかった

身体に無数の穴が空いたというのに
その穴をすべてビスが塞ぐからか

血が殆ど出ていなかったからかな?


だが、淡々とこなしてはいるが打つ場所によっては
下手すればこれだけで人は死ぬだろう


見た目以上に
この拷問のダメージは大きい

なのであまり大胆になりすぎないように
抑え目に打ち込んだ


打ち込んだ


ギュルン…


ギュルルルン…


何本くらい打ったかな?


「ハァ…飽きたな」


用意したビスの半分いかないくらいを打ち込んだあたりで

手応えのなさ

川口のリアクションの単調さと短さに

飽きてきて
なんだか退屈になってしまい

ビスとドリルを置き

ユニットバスにある洗面台で
鉄臭くなった手を石鹸で洗ってから

さっきの煎餅布団に
ゴロンと転がった


布団の横に転がる携帯を開き

まずは川口の携帯のアドレス帳に
自分の手帳にメモっといた
凜の携帯の番号とアドレスを登録する

おもむろにメールボタンを押し

新規メールを作成


「件名…翼です。

本文…そっちはどんな感じ?
こっちは順調…て言うか、ちょっとツマンナイかな

少し遊んだけど
まぁ、でも何もやってません。

あ、川口の携帯からメールしてます
このアドレスがこれからの連絡用になるから

登録しといてね

なので何かあったらここにメールしてね

あとから調べて番号もメールしとくね

じゃあ、頑張ってね」

メールを作り凜に送信した。


時間はゆっくりと流れていた


それまで時間の事なんて何も意識しなかった

いや

この瞬間はまだ
意識していなかった…

だがこれから始まる地獄は

川口にとっての地獄でもあるが

同時に僕にとっても地獄になった


その頃の僕はまだ
何も知らなかった


凜が凜でいる前に
女という生き物だという事を…


知らなかった

いや

凜だけの事じゃない


女という生き物のことを
何も…

何も知らなかった…。





つづく
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