小川凛 「カマキリ」 -2ページ目

第51話 地獄のルール

「世界って
本当はもう終わってんのかもね…(笑)」


なぁんて
ぼんやりとロマンチックな事を考えていた


だって
さっきのインターネットの蛭(ヒル)もそうだけど

ちょっと外に出て
ちょっと本屋を探せば
こんなに簡単に
拷問の手引き書が買えちゃうんだから(笑)


なんて
脳天気におどける自分の言葉が
実は真実を予見していたという
神様の悪戯を

その時の僕は
まだ知らない。



そんなピエロが手に持った
黒く塗られた装丁の
その真ん中には赤い字で

「今どきの拷問術」


なんだかあっけらかんと書かれていた


そこには…その本には、

どう、殺さずに拷問が出来るか?

そんな事が
事細かに記されていて

「簡単に殺してしまっては勿体ない」

「出来るだけ長く
出来るだけ強く苦しめ続けるにはどう拷問すればよいのか?」

「肉体的な苦痛と精神的な苦痛の最適な
最も苦しいバランスとは?」


などなど…、僕が欲しい解答が

余す所なく記されていて
その本をみつけた時は思わず胸が踊ったものだ


ポタポタと血の滴る音がした

川口の胸の辺りには
綺麗なピンク色をした
むき出しの肉が見えていて

さっきの血は
そこから滴る赤だった

血の落ちる先

僕の足元には
川口の削ぎ落とされた乳首が転がっていて

肉のピンクとは対照的に
陰毛のような
太くて長い縮れ毛が
沢山生えた浅黒い乳首は
ブツブツしてて
本当に気持ち悪かった

僕はあえて
さっきのDVDをもう一度再生し
それを流しっぱなしにしながら

コトにおよんだ

気分を盛り上げる為…などという無粋なものではなく

被害者の子供たちに
ちゃんと見てて欲しかったから


「ナマヌルい日本の法なんかでダラダラ裁くより
何倍も惨たらしいやり方で
ちゃんと敵討ちしてあげるからね。」


…と。


僕の華奢な肩にみんなの強い復讐の念が
重くのしかかっているような
そんな気がした。
悪い気はしなかった。

何人かなんてわからないが
みんなの…
幼子たちの悲痛な叫びが聞こえるような気がした。


川口の頬、猿轡の隙間を縫うように
刺身を切る用の細長く尖った包丁を

ゆっくりと右から左へ貫通させた。
最初だけグッと力が必要だったけれど
それ以降はあまり手応えはなく
豆腐を切るように
スッ…と包丁は簡単に肉に入っていった

右から入れ
左から刃の先端が5cm程出てきたあたりで
今度は刃の向きをグリッと
強引に上に向けた

これで猿轡を外しても
舌を噛み切られる心配はなくなる
何かを噛もうとしたら歯茎や上顎に包丁が食い込むから。


地味だが口をずっと閉じられないだけでも
顎の疲れと痛みは相当なものになる

その上
口の中に、たえず
刃物がある恐怖が尋常じゃない事もまた
説明の必要はないだろう。

僕は川口に
激しい痛みと、そして
何より精神的な苦しみを味わわせたかった。
そこに重きをおいて川口を追い詰めていく事に最初から決めていたから…。



昔こんな夢を見た。



ヘソに植物の種を入れて遊んでいたら
種が奥に入りすぎて
どうしても取れなくなってしまい
しょうがないからほっといたら
数日後、ヘソの中にズブズブと根を張り
それからお腹の表面にプツプツと沢山の水泡みたいなブツブツした何かが出来てきて
しばらくしたらそのすべてから
内側から皮膚を突き破り沢山の植物のツルみたいな茎みたいなやつがニュルニュル沢山伸びて来て

お腹を空洞だらけにする。


という夢。


その夢がどうしても気持ち悪すぎて
忘れられなくて
あーゆーのが精神的に一番辛いのかもしれないなぁと常々思っていたから

だから今回
その気持ちを川口にも味わってもらおうと決めていた

内側から身体を蝕まれてゆく恐怖を…。



さっきも言ったが
今はネットでなんでも買える

蛭が買えるなら他の害虫だって当然買える…

僕は沢山の虫
そして植物の種を準備していた。


まずはヘソに小さい種を沢山入れた


そして耳や鼻の中に
ダンゴ虫や蟻を入れ
耳栓で栓をした
鼻も耳栓で栓をした。

最近の耳栓はよく出来ていて
小さく潰してから中に入れると
それが中で元の形に戻ろうと膨らんで
穴に完全にフィットして隙間を完全に埋める


それを使って虫を穴の中に閉じ込めた


そのすべてはちゃんと詳しく実況しながら
しかも鏡で川口自身に見えるようにしてやった
川口が子供たちにそうしたように…

この鬼畜には
絶対に同じ思いを味わってもらわなければならないと思った。

因果応報という言葉のように…。


耳や鼻の中に虫がいる

というのがどんな気分かは
軽くでも想像してもらえたら
詳しく説明するまでもないだろう

川口は声にならない悲鳴をあげながら
ブルブルと震えていた。
気が狂いそうな顔をしていた。

死に直結しない苦しみだからこそ
逆にその時間はきっと永遠に感じたに違いない


感情的になってしまったそのせいで
計画していたのとは
多少前後はしてしまったが

大方の予定通りにコトは進んでいた


何も知らない道化師は永遠に続く地獄の入口に
自分も足を踏み入れた事に気付いていない

気付いていたとしても事の重大さには
欠片も気付いていなかった


鬼が罪人を裁くのに
地獄に立つのは当然とでも思っていたのだろう?


地獄は鬼も罪人も
同じに地獄に閉じ込める


地獄の扉はいつだって
外からしか開かないのだから


立場はどうあれ
地獄に足を踏み入れた者は
二度とはそこから
抜け出せない


何も知らない道化師は
安物の鬼のお面をつけたまま

ニヤニヤとおどけ
踊っていた








つづく

第50話 裁きの代行

「現代社会自体が犯罪者に寛容すぎるというか温床になってるよな…

だってインターネットが出来る環境とクレジットカードさえあれば
すぐに何だって手に入るんだからさ…」

独り言のようにそんな事を口にしながら
脇に置いた自分の荷物を一瞥すると

川口がそうしたように
川口に対面するようにして姿見を置いた

「鏡で自分の姿を見せながらリンチするなんて
あんたなかなかセンスいいよ(笑)」


嫌味ったらしくお世辞を言う


鏡はすぐに見つかった

こんな男臭い部屋には
似つかわないような大きな姿見が布団のすぐ横に置いてあったから

きっと“ソレ”用の鏡なんだろう

おあつらえ向きだ。


それから
持ってきた荷物から小さい虫かごを取り出すと
川口の目の前まで持ってって

「コレな~んだ?(笑)」

とおどけてみせた

「ネットとカードさえあれば
こんなものさえ簡単に手に入るんだよなぁ…ウケるでしょ?(笑)」

ニヤニヤしながら
虫カゴ越しに川口を見ると

川口の顔が恐怖に歪んでいるのがわかって…

胸が踊った


虫カゴの中にうごめく虫

その虫とは


蛭(ヒル)だった。


誰もが知るように
蛭は血を吸って生きる
吸血生物だ

インターネットを使えば
今はこんなものさえ簡単に手に入る

注文して届いてから
もう2週間ほど経つが
敢えてまだ一度も
“食事”は与えてなかった

そろそろこの子たちも腹を空かせている頃だろう


今ならきっと
“イイシゴト”をしてくれるはずだ


「どこがいい?

てか…どこがヤダ?(笑)」


「ん~…ン~ン~ン~…」


その問いに、この鬼畜が
一丁前に
命乞いみたいな事をするから…それに無性に腹が立った。


普通の箸より少し長い

料理用の菜箸を使って取り敢えずカゴから
大きめな奴を一匹取り出すと

川口の鼻の穴の中に入れた

結構大きめの蛭だったのに

スルスルッと中に入っていき蛭はすぐに見えなくなった

「ゴ…ブェッ…ウェッ」

鼻の奥
もしくは鼻を登りきり下降して
ノドの奥のあたりに張り付いたのか
中の様子はわからないが
とにかく川口は嗚咽を繰り越しとても苦しそうだった

「穴って…見えなくなる分
色々想像出来るから見てるこっちも面白いね(笑)」

次の蛭を掴むと今度は右の耳の中へ
今度はうまく入らず
穴の手前の耳たぶの辺りに吸い付くと蛭はもう血を吸い始めてしまった

「あ~あ…せっかちだな…」

面倒になり
2匹同時に掴み耳の中へ

今度は結構うまくいき
2匹とも奥へ入っていった

「ン~!ン~ン~ン~!!!」

川口が
顔をブンブン振りながら藻掻くも

蛭はすぐに穴の中に
消えて行く

…が、思ったより
耳の穴は底が浅かったらしく
2匹の蛭のお尻?(笑)
…お尻とか頭とかがあんのかはわかんないけど
まぁ、とにかく全部は入り切らず
耳からはみ出た体がグニグニ蠢いていた

そんな気持ち悪い映像を目の当たりにしながら


「フフ…リンチって楽しいね…あんたズルイなぁ…いつもこんな楽しい事やってたの?」


と、下っ端の悪党にでもなったかのような
敢えて下衆な喋り方で
言葉責めってやつを続けた。


それは
川口の想像を煽り
恐怖や痛みを増幅させるがためだった


というのも
蛭に血を吸われるという行為自体は
実はあまり痛くないからだ


日本でも
ある地方では首や肩の凝りなどの
病気の治療に使われるほどだから…

だから、ここでのダメージは
身体にではなく
むしろ心に向けてのものだった


簡単に殺してしまっては
己が犯した大罪に対する償いとして

あまりに弱すぎる


罪の意識がないバカには
罰でわからせるしかない


少しでも、
あの頃の…幼い凜や
ビデオで見た名も知らぬ
いたいけな少女…

そして他にもいるかもしれない
沢山の犠牲者たちの恨みを
晴らしたかった


煮えたぎるような怒りに支配されていたさっきまでの自分は

もうそこにはいなかった

心がもう
自分の中にないみたいだった

すごく…
なんてゆうか

静かってゆうか
穏やかだった


早朝の霧のかかった
山の中の湖のように…

しんとした
なんだか冷たくて静かな気持ちだった


そんな静かな心のまま

数匹の蛭を箸で掴むと
川口の顔に近付けた

川口が目を閉じるから指で瞼をめくって
眼球に蛭をくっつけた

数匹が眼球に吸い付き

数匹が瞼の中に残った

それを両目にほどこし

それからしばらくは
それを眺めながら

ただボーッとしていた

今何を考えるべきかを考えていた


今から何をすればいいんだろう?と


なんだかわからなくなっていた


そんなほうけた頭のまま

お腹はすいてなかったが
買っておいたレタスのサンドイッチを頬張り


持参したポカリで薬を飲んだ


病気の進行を抑える薬

病気の痛みをやわらげる薬


薬にも毒にもなりうるような

きっと弱くない…薬


それらをいくつか身体に流し込んだ



そんな中突然


ポト…


ポトポト…と

何かが落ちるような音がしたから

そっちを見ると

さっきの蛭の何匹かが下に落ちていた


蛭は血を腹いっぱい吸うと自分から口を離す習性がある

さっきまであんなに細長かった蛭が

太く短くなってコロコロと
まるでダンゴ虫のように転がっていた


僕はそれを箸でつまむと

猿轡で開いたままになっている川口の口の中に
その猿轡の蓋を開いて
捨てるようにして入れた


「おかえり…命の循環だよ」


「ホッ!ンー!フーッ!カッ…グェッ…」


開いたままの口じゃ
口にある異物を
出したくても出せないみたいで
なんだかとっても苦しそうだった(笑)


それを見て笑った(笑)


面白すぎるから
携帯のカメラで動画を撮ろうと思い

携帯を探した…


が、みつからなかった


「あ、そか
アリバイ用に凜に渡したんだっけ…そかそか」


今日からは
川口がきっと持っているであろう携帯を自分のにするって
事前に決めてたのを思い出して

簡単に部屋を見回した


家にいる時
人は大概

寝具の近くに携帯を置く


さっき鏡が置いてあった奥の和室
煎餅布団の引いてある場所のまわりを適当に見回すと


黒くて細いコードが見えて
その先に充電中の折り畳み式の携帯が見えた

手に取り充電器から外し
携帯を開いてみる

「すげぇ、最新じゃん」

犬にも劣る鬼畜のくせに
それは僕でも持っていないような
最新の携帯だった


動画を撮ろうとカメラを起動する

初めて触る機種だったけど
基本的な操作方法は
どれも基本かわらない

なんとなく触ってくとすぐにカメラの動画モードになった


「今の動画こんなに綺麗に撮れるんだぁ

へ~…やるなぁ」


カメラを向け恐怖に歪む川口の顔のムービーを撮った


「どう?撮る側から撮られる側に回った気分は?」


狩る側から
狩られる側に回った動物ほど
弱々しいものはない

異物が入ったからか恐怖からか
涙をいっぱいに溜めて
何かを訴えるような川口の
その目は
ガッカリするくらいに力がなかった

その情けない顔を
何秒か撮る

猿轡の蓋を再度外し
蛭の入った口の中を写そうとしたが
肝心のその様子は
暗くてあまりよく撮れなかった

付いてる小さいライトを途中から点けるも
それでもうまく撮れない


「なんだよ…」


少しガッカリしながらも

一応保存

どっかのフォルダに保存されたみたいだったが

ポチポチ何も考えず連打してしまったので、それがどこなのか
ちょっとよくわからなくなってしまった

ちゃんと撮れたのか
一応確認したくて携帯の画像フォルダを開くが

データが
なんかいくつものフォルダに分けられていて

さっきのが一体どこに保存されたのかが
全っ然わからない…

上から順にいくつが開くが
それらしいタイトルがみつからず
多少イライラしながら
手当たり次第にフォルダを開くと

無数の画像と動画が保存されていて

しかも
その殆どが悪趣味な…
超グロテスクな画像だった


「こいつ…本当にキチガイだな…」


どこかのサイトから
引っ張ってきたであろう

事故や事件の惨劇の画像や死体の画像が
これでもかと保存されていた

軽い吐き気を覚えながら
それでも開いてゆくと…

さっき見た

川口が写したであろうハメ撮りビデオのような

同じような川口が撮ったであろう殺人の動画が沢山出てきた



「やっぱりか…」



そしてそれは
さっきの少女ではない

また別の人

少し歳が上の別の少女だった

思わず携帯を投げ付けそうになるが
この携帯はこれからどうしても必要になる

壊すワケにはいかない…

一旦心を落ち着けるために息を吐き

携帯を閉じた


「あぁ…もうダメだ
もうダメだ…我慢出来ない」


溢れそうになる涙をグッとこらえながら

持参した荷物を再度あさる

「チクショウ…
なんなんだよコイツ…
もうなんなんだよ」


気が焦ってしまい
うまく探せないから

鞄を逆さにし
荷物をバラバラとそこらに投げ散らかした


とにかく思い付くだけ
とにかく準備出来るだけ

出来るだけ沢山準備した拷問の道具が床に散らばる


もうなんでも
どれでもいいから
とにかく痛いのはどれだろ?って思って

でもちょっと頭がうまく動かなくて

なんだか滑稽なんだけど
100円ショップで買ったような
チープな野菜の皮剥き器を僕は手に持っていた


そのまま川口の身体を見る…

やりやすそうなとこ
面の広そうな場所はどこかな?

と見ると
太股が目に入った

ここなら…

と思いグッと
皮膚に押し付けると

そのまま一気に引いた


もっとジャガイモとかニンジンみたいに
スーッといくかと思ったら

勢いよくやりすぎたせいか
ガッて途中で
引っ掛かってしまって

手だけすべって

皮剥き器を離してしまった

一瞬自分のどっかを怪我しちゃったんじゃないかってゾッとして

手とか色々見たけど
どこもなんにもなってなかった

痛むとこもないし
良かったぁ…と思って
皮剥き器を探す
足元を見てもなくて

アレ?

と思って回りを見たけど
どこにも転がってない

え?アレ?


と思いながらも
あ、そっか
と川口の太股を見ると

なんのことはない


皮剥き器は
そこに引っ掛かっていた

その絶妙な引っ掛かり方に
ちょっと胸が踊った


「ハハハ…確かに皮剥き器だわ…」


その名に偽りはなく

川口の太股の皮は
多少の身を巻き込みながらも
ベロンと剥けていた

その皮の先に皮剥き器は
ぶら下がっていた


「ン~!!ン~!!!」


さっきの蛭とは打って変わって
激痛が全身を貫いたのだろう


口を塞がれて声なき声ではあるが

断末魔のような声を川口があげた


折角だから皮はぶら下がったままの状態で残して

皮剥き器を外す


助けを求めるような
情けない顔をした川口が足元に転がっている

「お前が何度もやってきた事だろ?
今さら被害者面なんかすんじゃねえよ!」


腹ワタが煮えくり返るような気持ちになって怒りに手が震えた

悔しさと怒りから涙がこぼれそうになる

「皮が剥がれたくらいで死ぬかよ…甘ったれんなよ…」


ギュッと皮剥き器を握り締めると次を探した

うす汚い乳首が見えた

敏感な場所…なるだけ痛みが強い方がいい


乳首より少し上の肌に
グッと強く押し付ける


「ン~~~!!!」


止めてくださいとばかりに呻く川口


「ハァ…」


その声を聞くたびに
虫酸が走った


「ン~!ン~~~!」


「くだらねぇ…」


そう言い終わるかいなかで

思い切り引いた


太股みたいに平面じゃなく
少し膨らんでいるからか
あまり力はいらなかった

次の瞬間
中にちょっと抉るようにして

皮膚とその中央に乳首をつけた
肉の塊が

ボテッと床に落ちるのが見えた…。





つづく

第49話 アンドレ・ロマノビッチ・チカチーロ

それからの時間
僕が目にしたものは
まさに…まさに地獄そのものだった

川口は突然
椅子に緊縛されたままの少女を椅子ごと蹴り倒し
少女は椅子に繋がれたままの状態で脇腹を下にするようにして
バタン!と倒れた

それから椅子を持ち上げ
少女がうつぶせの状態になるように
クルリと回して椅子の背もたれを上にして止めた

その時、椅子が下から見えたんだけど
なんとお尻の下敷き部分が丸く
くりぬかれて大きく穴があいていた

その穴を見た時
川口がこれから何をするのかが
僕には何となく分かってしまった

川口は穴から見える少女のスカートを慣れた手付きでズルズルと引っ張り出すと
それをジョキジョキとハサミで切り始めた

すると血だらけになった裸のお尻がベロンと露になった

…その一連の動作の手際のよさ
全く躊躇する事のない感じ
そして、あらかじめ座席の下敷き部分がくりぬかれていた事等から

慣れてるな…という印象を受けた

それらは
これが初めての撮影ではない事を
物語っていた

少女のアソコに突っ込まれていたバイブは
倒れた時に抜け落ちたらしく
少女のアソコには今は何も刺さってなかった

しかし
ほんの今まであんなに太いバイブが刺さっていたせいだろうか

昨日まで処女だったハズの少女のアソコは
今はバックリと穴が開いたままになってしまっていて
内臓まで見えてしまうんじゃないか?
ってくらいに
ちつの奥の方までくっきり見えてしまっていた

それくらい大きな穴が開いてしまっていた

カメラはその穴のドアップをしばらく写すとそれから川口の醜い性器のアップに変わり
そのまま川口は左手で椅子の背を掴み
少し椅子を持ち上げるようにしながら
俗に言うバックの態勢で
そのまま少女の血だらけのアソコに醜いソレを挿入した

川口が腰を振るたびにパンパンパン

卑猥な音が聞こえてくる

そのまましばらく同じ映像が続いたから

たまらず僕は早送りをした

しばらくすると場面が切り替わり
少女は椅子にではなく
布団の上に仰向けになった状態で寝かされていた
ただし両手は万歳をするような状態で拘束されていた

ボロボロに切り裂かれたスカートも含め
洋服は着たままだった

突然ハサミのアップになり
そのハサミを使って
少女の服はドンドン切り裂かれてゆき
幼い体が露になってゆく

そこまではまだ普通だった
勿論、普通じゃないけど…でもまだ理解出来た

けれど次からは本当に吐き気がするような
おぞましい映像が映し出される事になる

まず…川口は少女のおさげを両方切り落とした

そしてその切り落としたおさげを少女の口に突っ込んだ

ウェッ、ウェッ

少女がむせる


それから


それから…


川口は
少女の乳首を
ハサミで切り落とした

この時ばかりは少女も激しい悲鳴をあげ

すぐあとに
顔を数発
ゴンッゴンッ
と鉄槌のような感じで殴られた

それから
殴られて崩れた顔のアップ

そして切り取った乳首と

乳首を切り取られた乳房のアップが
次々に映し出された

切り口からはピュッ
ピュッと血が噴き出して

それから目出し帽の男の口のアップになると

血が噴き出している
元、乳首があった場所に直接口をつけ
そこから出る血を赤子が母乳を飲むかのように
無心でチュウチュウ吸い始め
その必死な姿が
吐き気を誘った


その頃くらいから
少女の顔はもう
完全にうつろだった

目から鼻から口から
顔にあるすべての穴から
何かしらの液体がダラダラと垂れ流しになってしまっていた

この子はもう
何もかもを
諦めてしまったのかもしれない…

目が完全にとんでて
覚せい剤でハイになってバカになってしまっているような

映画とかでよく目にする
あんな顔をしていた


それから川口はまた正常位で挿入をし
またパンパンと腰を振った


僕はただ…

もう…この男が
この少女の事を殺さない事だけを

それだけを祈った

心から
心の底から…



けれどその
儚い願いは


やはり、いとも簡単に

打ち砕かれてしまった…


それからの映像は
もう本当に
完全に理解不能だった


本当に地獄だった…。





1980年代
旧ソ連のウクライナ共和国のスカスカヤ州に
“アンドレ・ロマノビッチ・チカチーロ”
という連続殺人鬼がいた

81年、チカチーロは誘拐した17才の少女の乳首を噛み千切って生で食べ
それからレイプして殺害した。

それまでも性的虐待やレイプ
9才の少女をレイプしナイフでズタズタに切り刻んだりと、残虐な事件を起こしてきたが

その時の、81年の少女の乳首を食べた時の食人を含む殺人の
あまりに強い快感が忘れられず
彼をどんどん異常な殺人鬼へとエスカレートさせていった


それからのチカチーロの犯行は凄惨極まれるものだった

ある時は
誘拐した少女の唇と鼻と指を切り取り
その後、首を絞めて殺害し
それからその子の身体を切り開いて
心臓と肺を取り出し
それらをグチャグチャに切り刻んだのちに身体の中に詰め直したりもした。

腸を引きずり出すなんてのは最早当たり前で

もっと酷い時は
幼い少女の性器をナイフを使って
えぐるように切り取ったり
腹を開いて子宮を取り出して

それらを生で食べたりしていた。


チカチーロは少女の子宮が大好物だったらしく
たびたび生で食べては

その甘い味にちなんで

少女の子宮を

「女の梨」

と呼んでいた。


逆に相手が少年の時は
性器と睾丸を切り取って
睾丸を食べていたらしい。


そのうち
殺してから食べる事に飽きてしまったチカチーロは
さらなる刺激を求め
生きたまま少年少女の身体を切り刻むようになった。


例えば…

口の両脇を耳まで切り裂いてみたり
ナイフを使い、いたいけな少女の鼻と唇を切り取って
それをその少女のアソコの中に押し込んでみたり

目玉をくり出して
お尻の穴に詰め込んだりした。

…勿論、生きたままで。


チカチーロはアソコばかりでなく
肛門も犯し
その犯した肛門から腸を引きずり出し
それをなめまわしたりもしていたらしい。


そうやって
相手が生きていようが
死んでいようが

チカチーロは構わずレイプを繰り返し続ける男だった。


チカチーロが逮捕されるまでの24年間の間に
少なくとも52人の少年少女が犠牲になったと言われている。


そして…チカチーロは小学校の教師だった…。





惨たらしい映像を見ながら…
僕は前に何かで知ったチカチーロの事を思い出していた…。


自分とは関係のない話。

僕が生まれる前
遠い異国でなら起こりえたかもしれないが

現代の日本では…
ましてや自分の周りでは
起こるハズもない
と高を括っていたチカチーロの犯行…。


けれど、それは間違いだった。


僕が今、目にしているものは
まるでチカチーロの愚行を思い起こさせるものだった…。


川口がチカチーロの事を知っているかどうかなんて僕にはわからない

けれど、今…目の前で流れている映像は
とにかく僕が知るチカチーロの犯行…そのものだった…。


かろうじて呼吸をしているだけのような状態だったが
少女はまだ生きているようだった。


けど少女の顔からは
唇と鼻が切り取られ
右の眼球がえぐり出されていた。

切り取られた唇や鼻や目玉は
少女のぺったんこの
胸の谷間に並べられ


それを眺めながら
川口はなおも腰を振り続けていた


両目をえぐらず
右目だけをえぐった事には
川口なりのこだわりがあったのだろう
腰を振りつつ川口は
10cm程の手鏡を少女の方に向け
無惨な自分の顔をわざわざ少女に見せつけていた
絶対に見たくなかったハズなのに
一瞬目に入ってしまったのだろう…
鏡を見た瞬間少女は

「ウワァァァァ…」

と、動物のような悲鳴を上げ
そして泣き始めた


その様子を見て
一層興奮したのか
その後すぐ川口は射精の時をむかえ

少女のアソコから
いびつな形の性器を抜くと
それを少女の顔の前に持っていって
右目、鼻、口、と
自分がえぐり出して出来た少女の顔の穴に

ドロドロの精液を流し込んだ

その時、射精する性器のアップになったが
亀頭が凜に噛み取られて無くなってしまっているせいか

普通ならおしっこをするように
ピュッとまっすぐ出るハズの精液が

ブッ、ビャッ、ボトッ、ドプッ…

と、まるで穴がひとつではないような感じで
汚ならしく不規則に色んな方向にボトボト飛び散った

その飛び散る光景が
本当に気持ち悪かった

僕は耐えきれず嘔吐しそうになり
まだまだ続きはあったかもしれないが
たまらずDVDを一度停止した。

最悪の気分だった。

最低の気分だった。


少女のあの状態
(出血の量)を見る限り
少女はその後
確実に死んでいる

…いや、出血多量なんて生半可な死に方じゃなく
もっと酷い殺され方をしたのかもしれない…。

それを考えると胸が苦しかった。

自分の無力さを呪った。

この愚行は今行われているワケじゃないから
そんなの土台無理な事くらいは
判っているのに
判ってはいるのに…

自分よりも弱い
幼い子供が
目の前で殺されるのを
止められなかった事が悔しかった

ただ指を咥えて見てることしか出来なかった自分が

もう…悔しくて悔しくてたまらなかった


名前も知らない少女の死がこんなに悲しいとは思わなかった

知らず知らずのうちに
少女に幼い凜の姿を重ねてしまったのだろうか?

その苦しむ姿が
とても他人事には思えなかった


そして深い悲しみは
いつしか鋭い怒りに変わっていた

今日という日の為に
様々な手を尽くし準備した数々の道具がある

凜に渡したマイオトロンもそのひとつだ


“凜が戻って来るまで手出しはしない”


はじめはそう思っていたが
最早それは無理な話だった

「あの子のソレには到底及ばないかもしれないけれど…
少しでも強い痛みと
少しでも深い恐怖を
こいつに与えてやる…。
死を救いにさえ思える程に…。」


僕はまずペンチを取り出した
古典的だが実に効果的な方法が数多く存在するペンチでの拷問
コレを使えば非力な僕にでも出来る事が沢山ある

名も知らぬ誰かの無念を
少しでも晴らす為に…

復讐とか拷問とか…

そんな甘美な響きの為じゃなく

自分に課せられた使命の様に

僕には川口に痛みと報いを与える義務がある


まるで無意味だと思っていた自分の生に
初めて強い意味のようなものを感じていた


此処はこれから地獄になる

地獄とは本来
悪い事をした罪人を裁き罰を与える為の場所のハズだ

だとしたら僕は
さしずめ…鬼かな(笑)


何でもいい

もう…ヒトには二度と戻れなかったとしても…

もう

それで…。



こんな奴を殺すのに
誰かが手を汚すべきじゃない

こんな奴を殺すのに
誰かが罪を被るべきじゃない

僕でいい

その役割は
ヒト以下の
忌々しい僕のような生き物にこそ
相応しいんだ…。


近い未来
必ず燃え尽きる事を
約束された炎が

特別な煌めきを
力を生む事がある


今の自分がそれにあたるような気がした

それくらいの恍惚感が僕にはあった

自分がまるで神に選ばれた人のような
そんな気さえしていた


見るとちょうど目の前に川口の手があった

「なんでもいいか…
はじめなんて」

静かな殺意が僕を押す

おもむろにさっきのペンチを握り締め

川口の中指の爪を挟むと
グイッと一気にそれを引き剥がした

木の幹が折れるように
メキメキッという背筋に寒い音がして

ベロンと爪は剥がれ落ちた

中からピンク色の肉が見え
時間差でジワーッと血が滲み出てきた


「ンーッッ!!!!」

激痛に目を覚ました川口が
猿轡越しに唸るような感じで
声にならない悲鳴を上げた


それはまるで
これから繰り広げられる地獄の始まりを告げるサイレンの音の様だった……








つづく。