小川凛 「カマキリ」 -5ページ目

第42話 報復の時

ブーン…ブーン…ブーン…ブーン…


どういう事だろう?
こんな中途半端な時間に電話が鳴るなんて…

親かな?

それとも…凛?


色んな可能性が頭を駆け巡る

その瞬間から
自分のアソコが
急激に萎えてゆくのが
わかった


凛はもうこの家にはいない?

僕がメールの返事をせずに
寝てた事を
思った以上に根に持ってる?


それとも親からの

急用か何かで
帰って来るという
連絡のメールだろうか?


だとしたら
下半身裸のまま
玄関に鍵もかけてない
自分の部屋のドアも開けたまま、という
今のままの状態では
かなりマズイ…


どうしよう。


もしも凛からのメールなら枕をどけて携帯を取りに行っても
凛に怒られないんじゃないだろうか…

いや、わからない
それでも約束を破る事には変わりないのかもしれない

一体どうすれば…

そうやって考えている間も
時間は流れ続けた。


いつのまにかもう僕の下半身は冷えきってしまっていて
腰から下が千切れてなくなってしまったかのように
感覚がまるでなくなってしまっていた。


ブーン…ブーン…ブーン…ブーン


また携帯が鳴った


せめてバイブじゃなくて
音を出してさえいれば
相手によって着信音を変えて設定してるから
送り主が誰かだけでも断定出来たのに…


ブーン…ブーン…ブーン…ブーン


また携帯が鳴った。


普通の人ならすぐに
迷わず枕を取って携帯を見ただろうが
僕にとっての凛は神様だ

神様の言い付けを守らない信者はいない


僕もまた
その狭間で苦しんでいた…。


今の僕の苦しみ藻掻いている様を見て
何処かで凛がほくそ笑んでる?

それならまだいい

もしも凛が
外に出掛けてあいつと
鉢合わせて
拉致られていたら…?

今鳴っているメールが
もしかしたら凛からの助けを求めるメールだったとしたら?

こんなに長い間、僕の家の傍に
あいつが住んでいたというのに
凛とあいつが鉢合わせにならなかった事の方が
今思うと奇跡だったのかもしれないんだ


どうしよう…
携帯を見るべきか
言い付けを守るべきか…


事態は一刻を争うのかもしれない

いや…まるで争わないのかもしれない

わからない

何もわからない…

ただひとつわかる事は

今のままの状態では
何ひとつわからない。
という事、だけ…。



ブーン…ブーン…ブーン…ブーン



また携帯が鳴った。


もうガマンの限界だ…


ガマンの限界ではあるけれど…けど
それでも僕は言い付けを
守らなければならない


もしもそのせいで
凛を危険に晒そうとも
それでも
僕は言うことを聞かなければならないんだ


それが
僕と凛の関係だから…。



ブーン…ブーン…ブーン…ブーン



もう心が壊れそうだった


自分の正しさが
今はたして正しいのか
もうわからなかった


凛が何を求めていて
今自分が何をすべきなのか

僕が選んだ
「何もしない」という選択は
実際は、その権利と義務を放棄しているだけで
実際には何も
選択していないのでは
ないだろうか?

そんな気がしていた。


「待て」が命令なら
いくらでも待つ

けれどそれが、もしも違っていたら…?

「うぅ…ううう…」

また涙が溢れ
枕を濡らし続けた
もう枕は僕の涙やヨダレや色々で
もう吸わないくらいビチャビチャだった


ブーン…ブーン…ブーン…ブーン


もう何度目のメールだろう?

毎回必ず
四回震えて止まる
という法則性から

電話(着信)ではなく
メールだという
事は、もうわかっていた。


けれどその相手と
用件が断定出来ない…


もう何度鳴っただろうか?

せめて回数くらい数えていれば
良かった…


ブーン…ブーン…ブーン…ブーン


もうダメだ
いいかげんもう疲れた


もうダメだ…。もうやめよう…。もう十分ガマンしたじゃないか…。


同じ自問自答をもう何回繰り返しただろう?


苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて…長い。
無限地獄の様な時間が続いた…

アレから…
目隠しされてから
もう何時間経っただろうか?

もう三時間とか四時間とか
経ったような気がする

どんなに短く見積もってもさすがに二時間は経ったんじゃないだろうか…


ブーン…ブーン…ブーン…ブーン…


アレ…?

気のせいだろうか?


それが何度目かなんてもうわからなかったけれど
今回、携帯が鳴った時

しばらくして急に
マヒして感覚がないハズの下半身に何か生温かいモノが触れたような気がした


…いや

気のせいじゃない

確実に何かが触れている…

温かい…なんだろう?


普通に考えたら凛か…


家族以外は考えられない…

一体…何がどうなっているのか…僕には何も…もう何もわからな……




   「アッ…」



見る事は出来ないから

それは僕の勝手な妄想でしかないんだけど…何かが僕の一番大切な場所のその周りを…

触ってくれてる…というか
舐めてくれているような…

そん…な感触がする…

気のせい…

だろうか?


「あ…。ん…ハァ…うっ」

ムクムクと
さっきまで萎えてたアソコが
一気に大きくなってゆく


あたたかい…


き、気持ちいい…


そしてそれは徐々に
中心に…


もうアソコの寸前まできていた


否が応にも期待は高まり

凛にアソコをペロペロ舐められてるイメージ
凛にアソコをパックリ根元までくわえてもらってるイメージが
頭を埋め尽くした


下半身に感覚が戻り

期待と焦れったさで
ムズムズ…モジモジしてしまい
つい腰が浮く


アソコに到達するのはまだかまだかと
次第に息が荒くなってきた


「二時間…」

「え!?」

そんな時、突然凛の声が聞こえて驚いた。

こんな事してくれるのは凛以外いるわけがない
けれど、それでも確信はなかった
枕で視力を奪われていたから。

けど見ずとも、声が聞ければさすがに誰かわかる。

凛だ。やっぱり凛は帰らずに傍にてくれたんだ…。


「二時間…不安な気持ちで待つ気持ち…ちょっとはわかってくれた?」


その言葉を聞いた瞬間、メールの主が凛である事も同時にわかった
僕はやはり凛に試されていたんだ…


言われてみればそうだ…。
さすがの凛でも
見つかったら何をされるかわからない
異常者相手に長時間尾行をするのは
余程きつかったんだろう…

そう思うと
そんな時の唯一の頼みの綱の僕に
無視される気持ちは
僕の二時間なんかよりも
はるかに心細く、哀しかったに違いない


僕は、僕はなんて事をしてしまったんだろう

自分のバカさ
半端さに
胸が苦しくなった

そして同時に
アソコがまた
急激に萎えてゆくのがわかった


「ごめん…。ごめん…なさい。」


出すぎて
もう出ないと思っていた涙が
またドンドン溢れてきて
止まらなかった
そんな僕に凛はやさしいトーンでこう言った


「…分かってくれたら…それでいいの…ひどい事しちゃって…ごめんね。
でも私、本当に怖かったし…苦しかったし…哀しかった。
今まで…ふたりでひとつだと思っていたのに…そう信じてたのに
大事な時に翼は傍に…一緒にいてくれなくて…それが哀しくて仕方なかった…
体の話なんかじゃないよ?心の話。
だって、ふたりがちゃんとひとつになれてないと、これから私たちがやろうとしてる事なんて絶対に成功出来っこないって私は思うから…だから…。
ちゃんと翼にもその事を知っといてもらいたかったの…。
私から口で説明するんじゃなくて…実際に体験して。
そして翼はそれを乗り越えてくれた。
途中で約束を破らずに、独りぼっちの不安や孤独の中、それに打ち勝ってくれた。

メール8件分…二時間。

よく我慢してくれたね。
ごめんね…そしてありがとう。

今から私がする事は、その謝罪と、そしてお礼…。

でも恥ずかしいから
そのまま…目をつぶっといて?
絶対…見ちゃダメだからね?」


そう言うと
凛は僕のアソコの周りやヘソの辺りを指でゆっくりと
何か字でも書くように
その指先でイヤラシク…まるで焦らすように

僕の肌をさわり始めた…。





つづく

第41話 意外な最期

全身から一気に血の気が引いた

僕が今までイメージだと思って思い描いていたものは

イメージではなく
夢だった


凛からのメールを待っている間、考え事をしてる間に
そのまま夢の中に堕ちてしまっていたらしい…

あまりの自分の情けなさ
救えなさに
普段なら
しばらく落胆しただろうが

今の状況で呑気に落ち込む暇などなかった


とにかく急いで携帯をつかみメールを開き中を読む




凜から届いた8件のメールを
時間軸通りに簡単に説明するとこんな感じだった。


僕があいつの居場所を調べてる事を…そして調べきる事が出来ず
とても困っている事を知った凛は
あれから毎朝登校時間を少し早め
あいつと最初にすれ違ったあの場所に行き、あいつを探すようになったらしい。

だから今日偶然、あいつとすれ違ったのではなく
自分からそうなるように仕向け、必然的にそうなったのだそうだ。
そしてその説明の中で、僕が危惧していた制服などの心配に対する答えも
凛はちゃんとしてくれていた。

制服については
最初から尾行をするつもりだったから
いつでも長時間尾行出来る様に
最初から、ちゃんと鞄の中に
羽織る事で制服を隠せる大きい上着とスカートの上から巻ける大きめのスカートを準備してた事、
あいつをみつけてすぐ伯母さんのフリをして学校に嘘の
欠席の電話をかけた事

それからしばらく時間があいたメールでは

あいつはとうとう伯母さんの家を断定出来ず諦めて
家に帰り出した事
(途中コンビニに寄ったらしいが)

そしてとうとう
凜はあいつの家を突き止め

そこは二階建ての小さいアパートだったらしいのだが
あいつが中に入ってく前にあいつがチラッと覗いた郵便受けの場所を覚え
あいつが奥に消えてったのを確かめてから
ゆっくり…慎重に郵便受けに近付き
その郵便受けの番号を見る事であいつの部屋の番号を断定し

それからアパートの、その場所の一番近くにある電柱に書かれた番地と部屋の号数
そしてそこまでの歩き方を事細かに説明したメールが届いていた。

書いてく中で気付き
凛も最後に「ビックリした」と書いていたが
そのアパートの場所というのが、僕の家から、もう本っ当に、
目と鼻の先だったから、僕ももう本っ当にビックリした…。

その最後のメールを送る迄の
僕のメールをもらったあとの凛は、驚く程冷静で
はやる気持ちを抑え完璧に尾行を続けていた。

その後、僕の家の下まで着たらしいが僕からのメールの返事がないから、家の中が僕ひとりかどうかわからずにインターホンを鳴らせずに

「寝てるんだ」

と思って諦めて


「会いたかったけど、今日は帰るね。」


というメールが最後に届いていた。

そこまで読んで
急いで僕が電話したら


すぐに電話はつながって
凜はまだ家ではなく
外にいた


「いってもいいの?」


と凛がいうから

「もちろん」

と僕が答えると
30秒後くらいに
もうインターホンが鳴った

早過ぎてビックリした
それがちょっと面白かった(笑)


家に入ると凛は靴を脱ぎながら


「ずっと近くにいたんだよ?お家…大丈夫?ひとり?」


と矢継ぎ早に質問を投げ掛けてきた


「うん。ちゃんと確かめてないけど…うち共働きだから…この時間なら多分。」

僕がそう答えると
その言葉を遮るように
靴を脱いだ凛が僕に抱き付いてきた

…抱き付くとは言っても僕より明らかに凛の方が体が大きかったから
僕が凛に抱き締められてるっていうか…包まれてる
って表現の方が正しいのかもしれない

「怖かった~」

そんな事を言いながら
凛は抱き締めたまま僕に全体重をかけてきて

それに僕は耐え切れずに
玄関に倒れこんでしまった

「い…痛いよ…凛」

と見上げると
凛の顔がすぐ目の前にあって
ビックリした。
そしてその目付きは
いつもとは少し違っていた…

「どうしたの?」

僕がそう言おうと思って
口を開けると

ど…

ぐらいのところで
凛に口を塞がれた

くちを…

くちで。


それは僕の初めての
キスだった。


突然の出来事で
何が何だかわけがわからなかった

凛の舌が
僕の舌や舌の裏
歯の裏や歯茎
とにかく
口の中をグリグリ…
ぴちゃぴちゃと
激しくイヤラシく動きまわる


あまりの驚きと
あまりの気持ち良さで
ボーッと気が遠くなる


まさに騎乗位といった感じで
凛は僕の上に乗ったまま
僕の硬くなったアソコに
自分の局部のあたりをグリグリと押し付けてきた

スカートとはいえ凛もパンツを履いているし
僕にいたってはパンツはおろか
その上には寝巻きのスエットも履いていたけれど

それでもこすれると
とても気持ち良かった。


「バカッ…どうして返事くれなかったの?寝てたの?私がどうなってもいいの…?バカッ!」

泣きそうな顔と声で
凛は言う
それからの凛の声はどれも弱々しくて泣きそうだった


「ごめん…昨日寝てなくて…気付いたら…ウッ…ッ…ご…めん」


「私を…独りにしないで…。たとえ傍にいなくても
いつも私のことを
ちゃんと見てて…」


「ごめん…ね。ごめ…あ…ダメ…ダメだって…ヤバいって…あっ…」


涙をいっぱいにためて
僕を見下ろす凛の目は
弱々しいとか悲しそう…というよりも
どことなく…怖かった


そしてその息遣いはドンドン激しくなり
同時に、アソコ同士をこすりつける
腰の動きもより一層激しくなってきた


そして凛は僕の両手をとり
自分の制服のその中へと導いた

プニュッとあったかくてやわらかいものが
指先にふれた

どういうワケか凛はノーブラだった


「ブ…ブラジャーは?」


と聞くと


「エレベーターの中で外した…」


と凛は言った

ワケがわからなかった

玄関で
しかも鍵も閉めてない玄関で

僕は、僕らはいったい何をしているのだろう…?


回らない頭を
無理矢理動かそうとしたが
気持ち良すぎて今は何も考えられない
さっきまで自分が何をしていたのかさえ
うまく思い出せないようになっていた

とにかくドンドン下半身が熱く…硬くなってきている事だけがわかった…


痩せてるのに
凛のおっぱいは
思った以上にやわらかく
そして大きかった


それからしばらくして
凛の体から
突然大量の汗が吹き出してきたかと思うと


「あ…うぅ…いっ…いきそ…」


と凛は溜め息混じりで
そう呟き

そして今度は
その細くて長い指で
僕の首を絞めてきた

予想外の行動にビックリした
そしてそれは

首絞めプレイ

とかじゃなくて
本気で殺そうとしているようにしか思えない程の
物凄い力だった

もしかしたらこのまま死んでしまうかもしれない…と本気で思った

絞める力はドンドン強くなり
目の前が真っ白になっていく
それが快感からか苦しみからかさえ
もう全くわからなかった

でも今、本当に死んでしまうかもしれなくても
もうそれでもよかった
僕にはあらがう気持ちなど
微塵もなかった

凛に殺されるのなら
それがいつだろうが
どこだろうが
かまいやしない…。

その後にキチンと最後まで
僕の体をひとくち残らず食べ尽くしてくれるのなら

思い残す事など何もないから…


そんな事を思いながらも薄れゆく意識の中で
咳なのかゲロなのかわからないものが
喉元から込み上げてくるのがわかった、が
きつく絞められているせいか
口から外には出ずに首までで
全部止まっていた


絞められて圧迫されたからか
自分の首やこめかみに
ボコボコと血管が浮き上がってるのが
鏡を見ずともわかった

意識はもう殆どない

だが、そんな苦しみの中を擦り抜けて
下半身からズルズルと快感が体を登ってくるのを感じた

急激に膨らんだその快感が頭のてっぺんまで
下から上に一気に体を貫いたかと思うと
僕の体全体がビクッビクッと大きく脈打ち出した

その頃にはもう
苦しみなどもうどこにもなかった
あるのは快感だけだった

多分射精しちゃったんだと思う

多分…。


自分の体が自分の体じゃないみたいで
もうそんな事さえわからなかった。

ただ体中が尋常じゃないくらい
気持ちいいのだけは
わかった

時間の感覚もまるでない

僕はもう死んだのかもしれない

気持ちよすぎて
頭や心はもう
全く機能していなかった



「あぁ…イグッ…アァ…イ…イッちゃう…」



そんな声だけが頭に鳴り響いてきた

気付いたら僕は目をつぶっていたみたいで
その真っ白な世界に
凛らしき声が
そう言ったかと思うと

ドサッと重いものが僕の体に覆いかぶさってきた

多分凛だと思う。

凛の体も
僕のようにビクッビクッと大きく脈打っていた

首から手を離された僕は
途端に咳き込み
快感を掻き分け
今度は激しい苦しみが
ぶり返してきた


「ゲホッ!ゲホッゲホッ!ウェッ!!ウェ~ッ!!」


咳と吐き気が止まらない


頭がキーンとして
真っ白だった景色から
ゆっくり…ゆっくりと
モヤがとれてゆくように
視界も元通りになっていった

そんな苦しむ僕の様子などお構いなしに
また凛は僕の口を
その口で塞いできた

ただでさえ息がうまく出来ないのに
口を塞がれて
また全く息が出来なくなった

気絶しそうな程苦しかったが…でも
気持ち良かった

しばらくして
口を離すと凛は
僕を包み込むようにギュ~~ッ
と強く抱き締めてくれた

僕の耳元に凛の鼻や口があったからそう感じたのかもしれないが
ゼーゼーとその息遣いは本当に荒く
そして背中に回した手から感じるだけでも物凄い量の汗だった


それから30分くらいかな?どれくらいの時間かは、ちょっとよくわからないけれど
僕らはそのまま玄関で
抱き合ったまましばらく休んだ

僕は目をつぶって横になっていただけだったが
もしかしたら凛は本当に寝ちゃっていたのかもしれない


しばらくすると凛が立ち上がり
立ち上がったかと思うと僕の手を取り、引っ張って起こしてくれて

手を繋いだまま凛の先導で
僕らは一緒に僕の部屋に入った

凛は僕をベッドの上に座らせると
そのまま体を後ろに押して寝かせ
まるで赤ちゃんのオムツを替えるように
僕のズボンとパンツをスルスルッと脱がせた

その時ちょっと見えたんだけど
僕のズボンの外側が白く
カピカピになっていてビックリした

アレはさすがに僕の精液ではないと思う

そう思うと…アレって凛の…汁かな?

と思い、ちょっと嬉しかった。


全部脱がされたあと

「ちょっと寒いかも…」

なんて思っていたら
凛が枕を取って僕の顔の上に乗せて

「押さえてて…私が良いって言うまで…とっちゃダメね」

と冷たく言われた。

目の前が真っ暗になって
何も見えなくなった

何をされるんだろう…?

何をしてくれるんだろう…?

と期待して
ドキドキドキドキドキドキして待っていたら…

ドアが開いて
凛が部屋の外へ出ていく音がした

ドアは開けっ放しのままだ

それから10分くらいが経っただろうか?

まだ何もしてもらえない。

ちゃんと、おとなしく
いいつけを守って
待っているのに
でも待っても待っても

何も起こらなかった

何もしてもらえなかった

それからまた10分くらいが経っただろうか?


もう気が狂いそうだった
もう頭がおかしくなりそうだった
頭の中では最低なイヤラシイ妄想が
沸き上がり駆け巡り続けているというのに

実際は何も起こらない
…何もしてもらえない

そんな状態が続いた。


それからまた10分くらいが経っただろうか?


見捨てられたようで
何だか悲しくなってきてしまって
涙が溢れて止まらなくなった

でも、それでも
その30分の間
僕のアソコは
ずっと…ビンビンに
立ったままだった。


ブーン…ブーン…ブーン…ブーン


そんな時だった
机の上に置いていた
携帯が鳴り始めたのは…。






つづく

第40話 一家惨殺


「わかった。
とにかく気を付けてね!
絶対に無理しないでね!」

そう返事をかえすと
それからはただただ
凛からの報告を待つ事にした。

携帯を持つ手が汗でびっしょりだった
ドキドキしすぎて
気が狂いそうだった

さっきまで眠かったハズなのに
眠気は何処かへ
吹き飛んでしまったみたいで
そんなものは今はもう
微塵もない


本当は凛にすぐにでも

今の状況はどうなのか?

無事なのか?

あいつの家はわかったのか?

…と、聞きたい事は山程あったけれど

僕から凛に連絡する事で
携帯(の音)が鳴ってしまったり

マナーモードにしてたとしても
場合によっちゃ
バイブでさえ大きな音を立ててしまう事もあるから


今はただ
何もせず

ひたすら黙って待つ事にした


自分でそう決めたくせに
それでも携帯を何度も開いては
…時間を見たり

メールが届いていないか
何度も新着メールの問い合わせをした


それから、もうほとんどフルに充電出来てるハズなのに
それでも充電が気になり
もう一度充電器を携帯に差し込んだ


待つ事しか出来ない
何も出来ない自分に対する
無力さと焦りで
胸がグゥーッと苦しくなる

壁にかけた時計を見ると
時計は8時40分くらいを指していた


無限に感じる時間も
一応は進んでいるみたいで

気付いたら最初のメールからもう30分近くが経とうとしていた


それでも
凛からの連絡はいっこうにない


今まで生きてきて
こんなに長く時間を感じたのは初めてだった


いっこうに連絡がない理由は何だろう?

尾行がバレて捕まったのだろうか…?

凛は無事だろうか?

用心深い凛の事だ
大丈夫に違いない

そう信じてはいるが

それにしても連絡がなさすぎる

何か別の事をして待っていようかとも思うけれど
気が散ってしょうがなくて
何も手に付かない

事前にプリントアウトしていたこの辺り一体の地図を机の上に広げる

凛があいつと擦れ違ったという交差点を中心にして、その半径2キロくらいをプリントしたものだ。


手には勉強用の黄色とピンクの蛍光ペンと鉛筆を持ち

ノートパソコンも立ち上げた

こんな事になるなら凛の携帯をGPS(現在、携帯がある場所を通知する機能)登録しとけば良かった
と後悔した。

何が起きたって変じゃなかった

凛が街で、先にあいつに気付かれて捕まって拉致される可能性すらあったんだ…

完全に僕の落ち度だ…。


もしも今すでに尾行がバレて拉致されてたら…
その時点で凛の足取りは全く掴めなくなってしまう。

良くないイメージばかりが先行し頭を埋め尽くす



そんな時、ようやく携帯が鳴った

この音はメールだ

恐る恐る携帯を開く

メールが届くという事は無事ということだ

いや、待てよ…

拉致られて携帯を取り上げられて
中を見られ自分が尾行されていた事実を知り
無理矢理打たされていたら…

安心と不安のカオスの中

〈新着通知ありEメール1件〉

という通知画面を押した

〈凛〉と書かれたフォルダの色が反転してかわっている

ドキドキしながら
またそこをクリックする…開いていない便箋のイラストが光っている…
汗ばみ震える親指でそこをクリックして中を見る…



「連絡遅くなってごめん。まだ尾行中。今私の家の近くをグルグル回ってる。あいつがどこまで知ってるか分かんないけどあいつきっと私の伯母さん家を探してるんだと思う。あいつきっと家に忍び込んでわたしたち家族を皆殺しにするつもりなんだ。そんな事させない。絶対に許せない。伯母さんたちに何かあってからじゃ遅いの!今すぐ後ろからメチャクチャに刺してブッ殺してやりたい。あれから護身用に果物ナイフ持ち歩いてたの。ダメ?ねぇダメ?」


メールを読みながらあまりの急展開に鼓動が速くなりすぎて息がうまく出来なくなる


そして凛もきっと今そんな状態なんだと思う

いつもなら絵文字がたくさん入った、にぎやかなメールを打ってくれるのに
状況が状況だとはいえ
絵文字はおろか改行さえされてない
ギュウギュウ詰めの書き殴った文章に、凛の焦りと緊張と、そして激しい怒りが伝わってくる

このままでは凛が犯罪者になってしまう

いや、それどころか
反撃にあって命を落とす可能性だって低くない


まずい…


事態は静観できる様な状況じゃない


まずは凛を落ち着かせなくては…


素早くも的確に考えを練る

時間の流れを遅く感じていたさっきとは打って変わって
時間は急激に速度を増す


考えて文字を打ったのでは間に合わない

打ちながら考えなければ!


「今すぐ手を出しては絶対ダメだよ。
一瞬で殺してしまっては、それでは苦しみを十分に味わわせることが出来ないから。
大丈夫。あいつが今すぐ凛たちを殺すつもりなら、この時間は選ばないよ。
やるならきっと家族が揃う時間…夕方か夜だ。
それに近くをウロウロしてるって事は、詳しい住所までは解ってないって証拠だよ。
凛のお母さんと伯母さんは今は名字も違ってるハズだし探すのは困難なハズだ、大丈夫。
仮に今、家をみつけられても凶器を持ってない状態で今すぐに中に入ったりする事は殆どないと思う。
あいつには前科もあるし、もしもそんなモノ持ってたら銃刀法も犯すし、家も断定出来てない状態で、さすがに不用意に凶器は持ち歩かないハズだから

大丈夫。
全然大丈夫だから落ち着いていいよ。

とにかく今はそのまま
何もせずに尾行だけを続けてね

あと…こちらから沢山連絡しても支障がないように、着信音はオフでバイブも出来れば切ってサイレントモードの方がいいな。
それと出来れば制服はすぐに着替えた方がいい
今はよくても、時間が遅くなれば学生服を着てる人の数が減って目立つし、その時間、学生が街を歩いてること自体、不自然だからさ…
あ、着替えは持ってる?
あいつを見失わないようにしながら、着替える事なんて可能?」



携帯に来たメールだったが時間がなかったため
パソコンから返した。

キーボードを打つのは慣れていたから
携帯で返すより何倍も時間を短縮出来たと思う。
思い付くかぎりを詰め込んで書けたと思ったが
送信後
これで良かったか送信済みメールを何度か読み返した。


メールでは「全然大丈夫」なんて書いたが、勿論全然大丈夫なワケなんかなかった。
どちらかというと
状況は良くないと思う。

手ぶらで家に押し入り
伯母さんだけを先に撲殺し、死体になった伯母さんと家に潜み、凛や旦那さんの帰りを待ち、襲う可能性だって十分考えられた。
凶器なんてどこの家庭にも、キッチンにさえ行けばいくらでも手に入る。

けれど僕は、逆にあいつの異常さに賭けてみる事にした。

相手は完全なる変態で異常者だ。

だったらなるだけ自分の事を満足させられる、興奮出来る環境で皆殺しにするハズだ。

例えば、あえて家族みんなが揃う夕飯時にでも家に押し入り
一番最初に近くにいた人間を凶器で脅し
その人間を人質にして他の人間を掌握し

他の人間が見ている
その目の前で

愚行に興じるハズだから
…。

家でひとりで何度も何度もきっと頭の中で
マスターベーションでもしながら犯行を事細かにシミュレーションしているハズだ…

僕は目をつぶり
あいつの行動や心理を先読みするために
あいつになったつもりでイメージしてみた

そんな事ぐらいしか今の
無力な僕には出来なかったから…



最近の空き巣がそうするように
逆に目立つ私服ではなく背広を着て
伯母さんの家のチャイムを押す
時間は夕飯時がいい、家族がバラバラな時間や、一緒にいたとしても特別何もしていない時よりも
食事をしていたり
幸せな時間、家族の団欒の時間などを壊す方が何倍も興奮出来るから

凛の話では、伯母さんの家は古いマンションでオートロックではないらしいからドアの前までは容易に行ける。
でも、もしも下がオートロックになってたとしても
オートロックを回避して部屋のドアの前まで行く手立てなどはいくらでもある
そんなのは問題ではない

ドアの前に立ったらバッグの中から
凶器の刃物とドアチェーンを付けたままドアを開けられた時用に、それを切断出来るだけの強力なペンチを取り出す

来客が来て表に出るのは男性ではなく、大概女性である凛か伯母さんだ。
力の弱い女性に刃物でも押しつけ家の中に入れば
力が同等かそれ以上の男性がいたとしても人質を盾にいいなりに出来る

残りの二人のうち力の弱い方…すなわち女性に、用意した頑丈なロープなどで男を縛らせ、それから口の中にティッシュ等を詰め込みガムテなどで上から塞ぐ

そうやって、声と体の自由を奪う

それから今度は残った女性を、
凶器を当てた人質の女性に、さっきと同じようにして口と体の自由を奪わせる。

それからはゆっくりと
楽しみながら、今度は自分の手で最初の人質の体を縛り、口を塞ぎ
身動きがとれなくなったら

仮にロープが解けてもいいように、ふたりの目の前で旦那の手足を切り
切断は出来なかったとしても
活発には動けないようにし、死なない程度に腹でも裂くだろう

人間(生き物)は腸が少し外に出たぐらいではすぐに死ねない

色々な生き物を生きながらに解剖し、殺し続けてきたあいつなら
それを知っているだろうし
内蔵や腸を傷つけないよう
腹の皮と肉だけ裂いて腸を外に引きずり出す事くらい手慣れたものだろう

今すぐには死ねないが
極近いうちに必ず死ぬ状況に先ずは旦那を追い込み

それを見て発狂するだろう奥さんをその旦那の目の前で
手を伸ばせば届きそうな近い距離で、犯す

それを楽しみながら
痛みと怒りで泣き叫ぶ旦那の目の前で奥さんを
犯しながら凶器で切り刻んで殺すハズだ

例えば正常位で犯しながら腹を裂きハラワタを引きずり出しながら、それを自分の体に巻き付けたり食べたりしながら胸か首、または顔か頭に凶器を刺し
トドメを刺す
死んだ状態でもしばらくは犯し続け
死後硬直の影響でドンドンきつくなる膣の圧迫で射精をし
凌辱し終わった使用済みの膣の中にナイフを奥まで入れ
そこから縦にヘソ、そして胸からノドと
骨を避けながら顎のしたまで左右に真っぷたつにする。

あいつがもしもバックが好きならば
バックで犯しながら四つんばいの奥さんの腹を手探りで一気に裂いて
アンコウをさばく時のように
ハラワタが床にドチャッと落ちる瞬間と音を楽しむかもしれない

そのまま性器はアソコに挿したまま
膣に貫通しないように肛門に刃物を射し込み
一気に背中まで裂くのもいい
あ、だが背骨の事を考えたら
桃を割るようにお尻だけをバカッと割って楽しむに、とどまる可能性もあるな


とにかく最初に伯母さんを楽しみながら殺し
その後は旦那にはあえてトドメを刺さずに生き地獄を味わわせ

その一部始終を見ていた
メインの…自分の性器を噛みちぎった仇の
もっとも憎いであろう凛を
ジワジワジワジワと
犯し、じっくり時間をかけ、なぶりながら殺すハズだ


「お前のせいで、伯母さんと伯母さんの旦那さんは死ぬんだよ…お前さえいなければ二人は死なずに済んだんだ…全部お前のせいだ…お前が悪いんだ…」


とでも耳元で囁きながら…
自責の念を味わわせながら…犯し…殺す…


「あれ!?…でも、性器って途中で噛みちぎられてても勃起は出来るのかな…?」


不意に出た疑問に我に返り
顔を上げ、それから自分の下半身を見ると
アソコが今にも破裂しそうな程に勃起してて

そんな自分に心底嫌気がさした

自分の愛する人が絶望し、殺されゆく様を思い描きながら興奮する自分が
情けなくて、どうしても許せなかった

とてつもなく深い罪悪感に包まれ涙が溢れそうになる


そんな気持ちに潰されながら、ふと机の上に開きっぱなしにしていた携帯を見ると、そこには…



〈新着通知ありEメール8件〉



という字とともに
デジタル時計は、もう既に8時台ではなく



   10:29



をさしていた…。









つづく。