サプリも含め、薬が体内に残りやすくなり、腎機能の低下からも、多剤は飲みたくないところ・・・

 

 心より愛と感謝をこめて

 

ベンゾジアゼピン系の睡眠薬・抗不安薬

 のみ続けると転倒骨折認知機能の低下を招きやすいとして、高齢者はできるだけ使用を控えるべきだとされている睡眠薬抗不安薬が65歳以上に多く処方され、ピークは80代だった。厚生労働省のデータをもとに朝日新聞が解析し、リスクの高い薬が多用されている実態が浮かんだ。▼2面=薬切れパニック症状も

 

 ■転倒・認知障害の恐れ

 睡眠薬や抗不安薬は、中枢神経の興奮を抑えるなどの作用があり、眠気をもたらしたり不安感を少なくしたりする。ただ、高齢者がデパスやハルシオンなどの「ベンゾジアゼピン(ベンゾ)系」といったタイプを使うと、転倒や認知機能障害が起こりやすくなるという研究が数多くある。やめられなくなる依存も起こしやすく、死亡リスクが上がるという報告もある。

 

 高齢になると、薬を分解して排泄(はいせつ)する能力が低くなることから、薬が効きすぎたり、副作用が強く出たりしやすい。日本老年医学会の高齢者の薬についての指針は、これらの薬について「使用するべきでない」「可能な限り使用を控える」と求めている。

 

 厚労省は医師が診療報酬を請求するのに使う明細書の情報をもとに、処方量の多い薬を性別・年齢層別にまとめ、NDBオープンデータとして公表している。データ作りに携わった吉村健佑・千葉大特任教授(医療政策学)の協力を得て、2017年度に外来処方されたベンゾ系の睡眠薬・抗不安薬について集計。人口千人あたりの処方数を、年齢層別に出した。

 

 ベンゾ系の睡眠薬・抗不安薬のうち、性別と年齢層が判別できる約39億8千万錠を解析。53%の約21億錠が65歳以上に、33%の約13億1千万錠が75歳以上に処方されていた。

 

 男女別では女性が多く、千人あたりの処方量は、女性では80~84歳が約9万7千錠でピークに。この年代は年に平均100錠近くのんでいる計算になる。続いて85~89歳、75~79歳と続いた。男性は85~89歳が約6万2千錠と最多だった。

 

 ■複数の不調で受診、重複も

 なぜ高齢者に多く使われているのか。

 

 東京都医学総合研究所の奥村泰之・主席研究員は「別々の診療所から同じタイプの睡眠薬・抗不安薬を処方されて必要以上の量をのんでいる人が少なくない」と指摘する。

 

 ベンゾ系の薬には、筋肉を緩めて痛みを抑える働きもあり、多くは抑うつに使うことも認められている。高齢者は複数の不調を抱えやすく、整形外科で腰痛、精神科でうつ、内科で不眠に、と同じ種類の薬が別の治療目的で、安全性への配慮が十分にされないまま出される例がある。

 

 日本老年医学会理事長の秋下雅弘・東京大教授(老年病学)は「老年病科や内科、かかりつけ医など、高齢者がかかわる幅広い診療科で『慎重に処方し、安易に続けない』といった啓発を一層進めていく必要がある。特に高齢の方やその家族には、これらの薬にはさまざまなリスクがあることを知ってほしい」と話す。(編集委員・田村建二)

 

 ■代表的な睡眠薬・抗不安薬(商品名、カッコ内は一般名)

・デパス(エチゾラム)

・ソラナックス(アルプラゾラム)

・リーゼ(クロチアゼパム)

・ハルシオン(トリアゾラム)

・ワイパックス(ロラゼパム)

・メイラックス(ロフラゼプ酸エチル)

・セルシン(ジアゼパム)

・レキソタン(ブロマゼパム)

・ロヒプノール(フルニトラゼパム)

・グランダキシン(トフィソパム)

本日 朝日新聞 朝刊 より