ハリウッド版ゴジラ ざっくり感想 | 怪獣玩具に魅せられて

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つい先日、アマプラにて1998年版の『GODZILLA』を久しぶりに見返したもので。そういえば、ハリウッド版のゴジラ映画ってざっくり感想やってなかったなあと。現時点での最新作は個別にレビューしたんですが、改めてざっくりなミニ感想で紹介していきたいと思います。

 

 

GODZILLA(1998)

 この作品はねえ……。僕が小4の頃に公開されたんですが、めっちゃ期待したんですよ。コロコロコミックとかでも大々的に宣伝されていて、ゴジラのアクションフィギュアとかも出て、それが玩具屋に並んでてね。アメトイ×ゴジラっていうのが、たぶん初めてだったから、それまでのゴジラのソフビとは全然違う雰囲気で、すごく欲しかった記憶があります。その時はあんまり映画そのものにハマっていなかったから、リアルタイムで観ておらず、中学に入ってから初観だったと思います。

 たぶん、その時には既に「思ったよりも不評だった」という結果を知っていて、その上で観た。今ではそれなりに再評価されていて、「ゴジラとして観なきゃ面白い」という声もあるようですが……。改めて観たけど、そういうことじゃない。ゴジラはともかくとして、人間側のドラマがどうしようもなくつまらない。まず主人公とヒロインに魅力がゼロ! 蚯蚓の研究をしているオタク風の科学者と、特ダネのために主人公を平気で裏切るどうしようもない元カノ。そこに関わってくる、無駄に度胸の据わっているヒロインの同僚とか、何でこんな映画に出てんの!? っていうジャン・レノとか、一人一人が極めてどうでも良いキャラに成り下がっている。逆に引きの画とか、兵隊の皆さんがテキパキ動いているところとかは、おっ! と思わせる部分があって、特に序盤はかなり楽しめた。ゴジラの扱いについては、本国のそれとは大きく違うけれど、ゴジラを見た瞬間の主人公の顔やそこで盛り上がる音楽なんかを考えると、たぶんこのトライスター版のゴジラは、「生命の神秘」的なものへの言及が一側面としてあったんだと思う。つまり『ゴジラ』ではなく、『ロストワールド ジュラシック・パーク2』だったと。ベビーゴジラの群れからの逃走劇なんか、どう考えても『ロストワールド』後半のラプトルからの逃走劇と同じ。あと、ツッコミどころは多いけれども、マンハッタンのビル街でのゴジラとの追いかけっこは、やっぱりテンションが上がる。ここのスピード感は、日本のゴジラが出そうと思っても出せないところかも。改めて観てみて、面白いところは多分にあり、一方でダメなところはどうしようもなくダメという、その落差で風邪を引きそうな映画だなあと。人間ドラマを倍速で観るというアウトな見方をすれば、ストレス軽減されるかもしれません。

 

 

 

GODZILLA(2014)

 ギャレス・エドワーズ監督によるレジェンダリー版ゴジラの一作目。これが公開されるってなって、予告編や特報が流れた時には漏らすかと思うほどテンショングが上がりました。もちろん映画館で観たけど、この映画は「ゴジラをいかに魅せるか」という命題に対して、当時最強の正解を打ち出していたと思う。とにかくゴジラの全貌の初お目見えシーンがこの上なくエレガントで、もううっとり。映画館では陶然として見入ってしまったし、このシーンだけ後から何度もyoutubeで観直した。ゴジラのデザインは、これまでありそうでなかった造形で、針の穴を通すような絶妙なバランス。これがモンスターバース版のゴジラのベースとなっていったのも頷ける。ゴジラが出てくるシーンは軒並みハイレベルで、これは本当に凄い! って当時は感心していたけれど、今の基準で考えると、けっこう出番が少なくて、それが不満な点になってくるかも。怪獣被害のほとんどをMUTOが担うのも、GODZILLAの仕切り直しの作品としてはちょっとなあ。多くの人が指摘していた通り、どちらかというとゴジラじゃなくてガメラ。あと、本作もやっぱり人間ドラマがあんまり上手くなく、渡辺謙は役に立っていないし、主人公二人も、『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』の二人を持ってきた割にはとっても影が薄い、上に主人公が自ら進んで死地に赴く動機に弱い。これは、ハリウッドで製作されたゴジラ映画に通底するダメポイントなのかも知れぬ(ただ、じゃあ日本版のゴジラがそこをクリアしているかと言われれば、そんなこともないのだけれど……)。ただ、この後のトンデモ展開、ナンデモ展開に比べると、怪獣という相当な空想を産物を中心においていながら非常に手堅く現実に即していて、モンスターバースにおけるゴジラ映画の中では一番腑に落ちる。あとはとりあえず、日本産の怪獣を出しておきながら日本の描写がいつまでも「なんちゃってジャパン」でしかないので、そこはもう少し勉強して欲しかった。

 

 

 

GODZILLA KING OF THE MONSTERS(2019)

『三大怪獣 地球最大の決戦』がまさかのハリウッドリメイク。といっても、ストーリーはモンスターバースに即したものになっていて、『三大怪獣』と共通しているのは登場する怪獣くらいのもの。それぞれの怪獣描写は前作のゴジラを遥かに凌ぎ、5年でここまで怪獣表現が進化することにビックリ。キングギドラの「巨大感」や三つ首それぞれの個性、ラドンの「圧」など、新しく登場する怪獣たちの表現が一々カッコいい。特にラドンは、ラストの「ゴマすり糞バード」的な転回以外は本当にカッコよく、初登場からの襲撃シーンは痺れた。ゴジラはゴジラで、最後にバーニングを髣髴とさせる形態になり、ギドラを圧倒するなど、とにかく怪獣バトルには見どころが多い。けど! その怪獣バトルを成り立たせる骨組みとなるべき全体のドラマ進行がいくら何でも乱暴すぎる。とりあえず、ヴェラ・ファーミガ演じるお母ちゃんのアウトっぷりが半端ない。主人公の親子もモナークの面々も大して魅力ないし、サリー・ホーキンスはすっごくあっさりと退場するし、チャン・ツイイーは小美人オマージュなのか知らないけれど意味なく双子だし……今回から重要怪獣の片翼としてモスラが登場しますが、あのモスラも人間に媚びすぎ。モスラだって初登場映画ではとんでもない被害を出したし、『大怪獣総攻撃』でもけっして優しいだけの怪獣ではないというところを見せつけていたはずなんだが。今回のモスラの登場で、怪獣自体のキャラクター化が進行したことは否めない。あと、基本的に夜とか煙ったところでの戦いが多くて見にくいってのはやっぱりノイズには感じましたね。ラスト、勝利したゴジラの周りに群がる怪獣が、東宝怪獣の面影の欠片もない奴らばっかりだったりと、ここまで規模をでっかくしておいて、詰めるところはあんまり詰まっておりませんなあ感はあった。とりあえずモナークが全面に出てきたところで、現実からすっかり乖離しており、いつの時代の出来事なのかも見えなくなっている。そういうところでもイマイチ乗れない作品ではあった。

 

GODZILLA VS KONG(2021年)

『キングコング対ゴジラ』のレジェンダリー版。人間側に近しいのはコングの方なので、ゴジラは突如としてあらわれては周りをボッコボコにして帰っていく厄介な存在として、一歩引いたところでの活躍となった。まあ、ゴジラ的には美味しい立ち位置かも。物語の流れがピンと来ていないんだけれど、ゴジラとコングがいがみ合っていて、コングが地下世界の故郷へ帰って、ゴジラが地上から「おーい」って呼びかけてきたから上にあがって行って殺りあって、そしたらメカゴジラが出てきて、共闘の上で「お前のこと、認めたぜ?」みたいな感じで完――!! って理解で合ってる? それにしても何だ、この2014年版から遠く離れてしまった感じは。地下世界があったとして、そこに行くための乗り物がもう、現代から乖離しまくっている。もうそういうもんだと諦めるしかないのだろうか。ゴジラの見せ方としては、ゴジラを主役に置いていた前作よりも、一歩引いたところで良い味を出してる本作の方が好ましく見れたし、ここは作り手側も相当気を使って、ゴジラを好きにならずにはいられないように扱っていると思う。肝心のゴジラとコングのバトルは今回、完全にゴジラが圧倒。これには驚いた。両者に華を持たせるわけではなく(もちろん最後の良いところはコングが持って行くけれど)、両者の戦いに絞ればかなりの力差があって、これはゴジラ応援派としては嬉しいところ。今回も人間ドラマは急速に記憶から抜け落ちるレベルでどうでも良く、演者の顔もほとんど覚えていない。あれ? 小栗旬が出てたのってこれだっけ? というレベル。あと最大の不満点は本作のメカゴジラ。単純にカッコよくない。確か情報がおもちゃバレか何かしたんだけど、心底がっかり。『レディ・プレイヤー・ワン』に登場したメカゴジラの方が1億倍カッコよかった。ただ、これまで夜だとか吹雪だとか雷雨だとか、とにかく見通しの悪い中での戦いしかなかったのに対して、今回は洋上でもネオン街でも、朝焼けの中の最終決戦でも、ちゃんと明るい中で戦ってくれるので、画面の抜けが良くて、そこは楽しめた。怪獣バトルの切り抜きだけ楽しむなら、一番おススメかも知れない。

 

 

GODZILLA X KONG THE NEW EMPIRE(2024)

 以前に個別で感想書いたので、こちらを参照のこと。

 ネタバレなし 『ゴジラXコング 新たなる帝国』ざっくり感想 | 怪獣玩具に魅せられて (ameblo.jp)

 

 

 

 

 以上、ハリウッド版ゴジラのざっくり感想でした。

 何か、新作が出るたびに辛辣になっている感がありますね。これは僕が怪獣映画に何を求めているかに関わる部分が大きいと思います。僕は怪獣の出現によって日常が崩れていく様こそが怪獣映画の肝であり、故に崩れるその「日常」こそを、精巧なミニチュアや特撮技術で作り上げていくところに価値を見出しているので、作品を重ねるにつれてどんどんリアルから乖離していっているモンスターバースにはどうしても不満が残るというか……そういう意味では、リアルなマンハッタンの街中を縦横無尽に駆け巡る、トライスター版の『GODZILLA』は、実はけっこう楽しく見れたんですよね。

 ただ、やっぱりハリウッド規模の予算を投入したバトルシーンは必見の価値ありだし、映像の切り抜きとして観るなら、これ以上の娯楽はないとも思っています。惜しむらくは、その映像を支えられるだけの安定感のある物語がなかったことで、こればっかりは致し方がないかなと。お国柄と言うこともあるし。今年の『ゴジラXコング』でゴジラもコングもそれぞれの居場所を見つけたわけですが、モンスターバースは今後どうなっていくのか……。正直、個人的に望んでいる方向にはいかないだろうなあと思っているのですが、それでも新作が出れば、毎回毎回期待を持って劇場に行くのでしょう。レジェンダリーは早くも続編の可能性を仄めかせており、次はゴジラのバックグラウンドを掘り下げる話にすると言っているようですが――

『ゴジラxコング 新たなる帝国』続編情報まとめ ─ トリロジー構想&ゴジラがメイン?モンスター・ヴァース拡大へまっしぐら | THE RIVER

 

 いっそのこと、人間を完全な背景にしたゴジラのオリジンを語る作品とかで、一度勝負かけてみてほしいですね。それはそれで、見てみたい。