ネタバレなし 『ゴジラXコング 新たなる帝国』ざっくり感想 | 怪獣玩具に魅せられて

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日本では4月26日公開。『ゴジラXコング 新たなる帝国』。公開初日に見に行きました。

 

リアルタイムで感想をしたためたかったのですが、息子の胃腸炎騒ぎで一日遅れた。

 

ゴジラについては以前、東宝純国産のシリーズを一挙纏めてレビューマラソンしましたが、ハリウッド版については、まだでしたね。一応全て、劇場で見ているのでそのうちやるとして、取り急ぎ、今回の『ゴジラXコング』についてのみ、ざっくりした感想を書いてきます。ネタバレはなしの方向で行きますね。

 

 

【良いところ】

 良いところとするべきかは微妙なんですが……とにかく怪獣映画がアツい、この現況を続けてくれるような作品が公開されたことは素直にありがたいと思います。

 昨年は『ゴジラ-1.0』が映画館を席巻し、ネトフリでは『ガメラ』がアニメとはいえ復活し、ウルトラマンも『ブレーザー』という異色なウルトラマンが人気を博した。『グリッドマン ユニバース』という神映画が公開されたのも昨年初めでしたね。そういった具合で、怪獣を題材とする作品、今すごく勢いがある。

 その勢いのまま、トンデモない予算とトンデモないCGでダイナミックな怪獣破壊シーンを見せてくれる「モンスターバース」シリーズは、やっぱ特別枠と言うか。映画館で怪獣映画を観る悦びを最も強く感じさせてくれるシリーズではあるわけです。

 その最新劇場公開作となると、行かない選択肢はない。事実、ディザスターシーンは最高でしたね。『ゴジラ -1.0』でも今までとはちょっと質を異にする怪獣破壊シーンが描かれていましたが、「-1.0」のそれを「凄惨」と呼ぶのなら、『ゴジラXコング』は本当に「豪快」。特に最近は、「怪獣こそが地球の支配者」という構図が定着してしまったからか、人間の歴史が積み重ねてきた偉大なる建造物が、外連味すら感じる暇なく破壊される(笑)。ゴジラ、おま、そこで寝るんかい――と。突っ込んだ人多数だと思います。けど、そこが良い。もはや世界遺産ですら映画の「見せ場」ではなく、最大の見せ場はやはり、周りを一切気にしない怪獣同士の肉弾戦。

 そこで興味深かったのが、ゴジラの描き方ですね。これまでレジェンダリー版ゴジラと言うと、特に初期は巨大感、重量感が全面に出ておりました。それが今回、基本ゴジラは走る。予告編で初めて登場して視聴者の腹筋を崩壊させた、あの走りもばっちり見せるし、それ以外にもとにかく敏捷に走るんですよ。ムートーを倒してビルの下敷きになってため息ついていた、最初期のゴジラよりも遥かに身軽になっている。

 ゴジラから重量感が失われるのは一見マイナスと思われるかもしれないのですが、僕は今回のゴジラはありかもな、と思いました。というのも、ある過程を経てビジュアルが変わるんですね。具体的には背びれが紫に発光する。おもちゃとかを見ると、体格もかなりスリムになっているようなんですが、それも変化の一つに含まれるのかまでは、まだ1回しか見ていないので判然としませんでした。とにかく紫になってからが非常に身軽になるんですけど、この色、そして身軽なアクションの方向性は、本家東宝で言うとミレニアムゴジラを意識していると考えて良いと思う。

 

『ゴジラ2000』『ゴジラXメガギラス G消滅作戦』に登場した、いわゆるミレゴジは背鰭の色が紫なんですね。そもそも、タイトルに「X」とつけだすのもミレニアムシリーズからだし、あれほど機敏に動きまわるゴジラは、ミレニアムシリーズの最終作『ゴジラ ファイナルウォーズ』のゴジラに近しいものがある。

 ミレニアムシリーズはVSシリーズに比べて興行成績的にも高く評価されていない(『GMK』は除く)し、後年はハム太郎との同時上映などで自ら終息の道を辿った感はあるのですが、僕個人としては嫌いになれないというか、ぶっちゃけ観返すときも、VSシリーズよりミレニアムシリーズを先に観るんです。そんなだから、今回のミレニアムシリーズを意識したゴジラのデザインも肉弾戦も、けっこう好ましく観ました。この世界線で、こういう方向性で行くなら、それもアリかなとは思ったんです。

 

 このゴジラのデザインチェンジは、けっこう多くのファンに好意的に受け止められているようですね。その証拠に、最新版のゴジラのムビモン、買おうとしても中々安くなってないし、予約段階で完売のところも結構多いんですよ。コングはそんなことにならないのにね(笑)。みんな、なんだかんだ言って、この背鰭紫版のゴジラ好きなんじゃんって、思いました。

 

 

【もう少し何とかならないのか……ってところ】

 結論から言うと、上の良かったところ以外の全てです。

・怪獣映画の隆盛を継続させる作品として登場

・ミレニアムシリーズを彷彿とさせるゴジラのデザイン

 以外の部分が、正直きつかったです。

 そもそもレジェンダリー版に対する僕の温度なんですが、2014年『GODZILLA』は、ゴジラの活躍時間が短いことと、渡辺謙扮する芹沢博士が何の役にも立っていなかったこと(というか全体に人間ドラマが緩いところ)を除くと、たとえば怪獣の見せ方などは凄く良いと思いました。続く『コング 髑髏島の巨神』――これが、モンスターバースの中では一番好きかもしれない。舞台を髑髏島でのサバイバルに限定し、そこにコングと、ベトナム戦争感を持ち込んだ、かなり変わった作風のモンスター映画でしたが、島の中での王者決定戦みたいなテンションと、情け容赦のないモンスターの生々しいビジュアルがとても良かったです。

 ところが、『キング・オブ・モンスターズ』になってくるとけっこう厳しくなってくる。特に人間ドラマへの興味がなくなっていきました。214年版から実はそうだったんですが、人間サイドに魅力的なキャラクターが全然いない。特に本作においては主人公側ともつながりがある、ベラ・ファーミガ演じる元嫁さんが、どう考えてもアウト的な行動に走ってしまうので、おいおいそれは……と。世間ではゴマすり糞バードなんて言われましたが、ラドンのビジュアルと活躍シーンは、とっても良かったんですけどね。

 続く『ゴジラVSコング』は――ちょっと世界観そのものに付いていけないというか。2014年版のゴジラと同じ世界観ですか? と。一部の科学技術が進歩しすぎて、もう何が何やら……と言う感じ。地底世界とか、ネオン街での死闘とか、映像面では凄いところもあったけど、もう何でもありすぎて逆に驚けない。メカゴジラも、そんなにカッコいいとは思えなかったですね。何より、もう人間ドラマは完全に投げている。小栗旬の役割とか、マジで謎でした。

 それを引きずっての本作ですから、ちょっと、もう少しどうにかならないの? を引きずりまくっての鑑賞となるわけで、世界観やドラマ部分に厳しい目が行ってしまうのは仕方がない。まず、モナークって一体何を目的としているのかが全然分からず、この世界で彼らの力や影響がどこまで及んでいるのか、よくわからない。配信ドラマ見れば分かるようになってんのかな。映画だけでは全然呑み込めませんでした。

 登場人物も基本的には前作からの続投なわけで、魅力を感じない人たちばかり。魅力を感じないっていうか……こいつ、誰だっけみたいな人が多い。あのコングと意思を疎通できる女の子くらいしか、ピンと来なかったですよ。でもこの子もね……ちょっと成長しすぎちゃってね。『VSコング』の時は本当に可愛かったんですけどね。

 

 ドラマ的にも、『キングオブモンスターズ』以来の問題点を引きずっていると思います。事が大きくなればなるほど結局、人間は背景になってしまう。それが今回は特にヤバい。これは、スケールのでかさ、とんでもないディザスターを売りにしている反面の問題点だと思います。つまり最後は結局、怪獣同士の周りを一切考慮しない肉弾戦になり、そうなると人間は、たとえ主人公であっても背景になるしかないんですよ。そしてドラマの持って行き上、どうしたって「怪獣同士の肉弾戦を肯定する」方向にしか行かない。特にコングが明らかに人間サイドに立っているという物語上の設定と、ゴジラとコング、両方の「スター」を際立たせるためという事情があって、今回に限らずどうしたって「敵怪獣」が必要で、その敵怪獣を倒すところにカタルシスを求めざるを得ない。だからモナークという組織が、昔ウルトラシリーズに登場する防衛チームがよく揶揄されているように、「怪獣被害から人類を全然守ってくれない」組織に見えてしまう。この辺は、東宝本家のゴジラも、特に昭和ゴジラは同じような轍を踏んでいましたが、こっちはそれでも途中に『ゴジラ対ヘドラ』のような一作を入れておくことで、人間側にとっても「脅威」という一線は、ある段階までは守っていましたよね。平成ゴジラは改めて人間の脅威となったし、平成ガメラは人間の味方のようでありながら実は……っていうところの距離感が本当に上手かった。

 

 本作の序盤に、ゴジラが出現して大変ね、っていうところへの言及はあるにはあるんですが、ヒロインの「人間では太刀打ちできない怪獣に対して、ゴジラが代わりに戦ってくれる」という答えが全てを示している。人間社会にどんな犠牲が伴おうと、とにかくゴジラが相手を倒してくれる方が良いのだという「怪獣至上主義」。これはこれで良いのかも知れませんが……そうなると都市破壊が単なる約束事というか段取りに過ぎなくなって、どれほど大規模な破壊になっても重みがないんですよ。特に今回なんて、ゴジラが歩くだけでも橋が次々に破壊されて、車が川に落ちて、恐らくは人命が犠牲になっているはずなのに、そこへの言及は全くない。ってか最終決戦では肝心のモナークでさえ、怪獣のサポートに専念するのみで、怪獣バトルに関してはもう存分に暴れてくださいという放置状態なんですよ。これは……さすがに駄目でしょう。

 

 これ以上、突っ込んで書くとネタバレになりますので、ここらで止めおきますが、個人的にはちょっと乗り辛いところも多い作品でした。寝不足ってことも、もちろんあるんですけど、コングと一緒に地下世界に行った辺りで、寝かけましたね。別に、話の展開が緩慢だからとかじゃないんです。むしろ置いてきぼりを食らいそうになるほど、話のテンポは速いです。地上と地下、二つの世界を行き来するわけですからね。そうじゃなくて、たぶんモンスターバースが、「僕の知らない遠い異世界での話」になってしまったからだと思います。怪獣映画に僕が求めているのは、怪獣という異物によって日常が崩壊していき、それをいかにして乗り越えていくかという展開なのだと、改めて気付かされました。『ゴジラXコング』は――いやむしろ、前回の『ゴジラVSコング』で、今のテクノロジーを調節したメカニックや地下世界を出してきた段階から、もう僕のいる世界と地続きなものとは捉えられなくなったのでしょう。つまり、僕が怪獣映画の魅力だと思っていた部分から乖離して、全然違う方向性へと舵を切っている。だから、乗れなくなってきているのだと思います。

 

 ただそんなことを言っても、モンスターバースで新作映画が登場すれば、また観に行くでしょうし、ムビモンで良い奴がでれば買うだろうし――(笑)。モンアツで出た今回の紫背鰭版のゴジラ……高いんですけど、たぶん買ってると思います。もはや義務で観ているといっても良いんですが、このシリーズが持っている、あまりにも規模のデカい破壊シーンは、やっぱりこのシリーズでないと観れないものなので。そしてそれは、映画館で観てこそ、価値があるものなので。

 

 ただ願わくば、そしてここからは少々余談ですが――別にモンスターバースでしなくて良いんですけど、もう少し実生活のリアルからアンバランスゾーンへと突入していく作品が見たいです。大規模すぎる破壊シーンじゃなくても良いから、とにかく僕らが生きているこの世界を地続きな世界が、怪獣によって崩され、それに対してどのように戦っていくかと言う、「等身大の奮戦」が観たいです。そしてそれは、たぶん、ゴジラやコングのようなスター怪獣では難しいと思う。だからこそ僕は、今年70周年を迎えたアンギラスを推したい。あるいは数年後に同じく70周年を迎える大怪獣バランでも良いんですが、実はああいう四足歩行怪獣(どちらも二足になれますが)こそ、目線や体高的な意味からいっても、「リアルに怖い視線」に近く、怪獣破壊の生々しさだって強く印象付けられると思うのです。『シンゴジラ』でみんなが一番ギョッとしたのが、蒲田君の進撃だったように。そのような、大規模ではないけれどもリアルで臨場感のある、「渋い」一作が出てくるような土壌にするためにも、怪獣映画は今度とも応援していかなければならないなと、思った次第です。

 

 ぜんぜん、ざっくりじゃないですね。『ゴジラXコング 新たなる帝国』。とりあえず、こんな感じです。