介護環境快適化講座 -17ページ目

30.地域に出て行きやすい建物にしよう

 
介護環境デザイナーの間瀬樹省です。


介護施設建設についての打合せをすると「地域との関係をもちたい」「地域とつながりたい」という言葉をお聞きします。


そのために地域の方を呼び込むためのスペースを設けることをお考えになることが多いですが、その前にやることがあります。


それは、施設の方々、利用者さんや職員さんがまず地域に出ていくことです。


普通、地域で暮らしていると、地域にある様々なサービスを利用しながら生活しますよね。


その「当たり前」をまず行う事が大切だと思うのです。


普通、欲しい物があれば買い物に行きますね。
髪の毛を切りたければ理容室や美容院に行きます。
お酒が飲みたければ居酒屋に行くでしょう。


介護施設にいると、向こうから来てもらうのが当たり前になってしまって生活が建物内で完結してしまいがちです。


それで「地域で生活している」「地域の一員」になるのは難しいのではないでしょうか。


まずは自分たちが外に出て行き、存在をアピールしサービスを受けながら暮らす地域の一員であることを認識してもらう事が必要です。


建物としては、外出が行いやすいように、出入口付近に洗面や手洗いを設けるなどの工夫を行うようにします。


それを実施した上で、地域の方を招く空間をつくるのであれば、そこで提供するサービスは本格的なものにする必要があります。


コーヒーを出すのなら、本格的なものを気の利いた空間で提供。
趣味活動ならカルチャーセンターより本格的なプログラムを。


そうでないと、わざわざ地域の方は来てくれません。
安易な考えで中途半端なサービスを提供しても利用してくれる方は残念ながらほとんどいないのです。


ここにわざわざ来てもらう理由が必要です。その為には他にない充実した空間、サービスをつくる必要があるのです。


地域とのつながりは大切、その方法を空間、サービスの両面からぜひしっかり考えてみてください。


介護施設の新築や改修の計画の際には、ぜひこの点についても考慮して設計にするようにしてくださいね。


20140707_入口洗面
入口付近に設けた洗面台(手洗い)の例。写真右側にトイレも設けています。


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29.将来を考えた建物にしよう

 
介護環境デザイナーの間瀬樹省です。


介護施設には様々な設置基準があり、その基準に従って建設することが求められます。


基準を守らないと介護施設として運営できませんから、当然基準は守って建設することになりますが、さらに考えておくべき事があります。


何かと言えば「将来を考えておく」という事です。


介護施設を設置する時には、どうしても今のニーズに目がいきがちですが、建物は一度建設すると長い期間使用するものです。


ですから、今後50年くらい使われる事を考えて、どのような建物にしておくのか考えるべきです。


例えば、都心ではベッド数の確保や低所得者への配慮として特養の多床室整備が復活しています。


今は多床室を必要としている人がいるかもしれません。


しかし、将来を考えると、個室が当たり前の環境で育った人が利用者となるので、その方々が多床室に住む事は考えにくいです。


また、この問題は個室という建物が悪いというより個室の費用が高いという制度が悪いだけです。


行政からの要望で安易に多床室をつくると、近い将来利用者から選ばれなくなり、大規模な改修を行う必要が発生するかもしれませんね。


また、現在入浴は最低基準の週2回で実施されていることが多いと思いますが、これは将来もずっと続くでしょうか。


現在の利用者は、毎日お風呂に入っていたわけではない方が多い年代ですが、今の現役世代は毎日の入浴は当たり前です。


介護が必要になったら急に週2日で我慢できるかというと、難しいのではないかと思われます。


であれば、将来入浴が増えても良いように整備を行っておく、という配慮も必要かもしれませんね。


このように、将来まで考えた計画にしておく事が必要です。


このようなアドバイスは、残念ながら行政の方はしてくれませんし、通常そこまで見込んだ設計を行ってくれる設計事務所もありません。


法人自らで将来を見越した計画を行う必要なあるのです。


介護施設の新築や改修の計画の際には、ぜひ将来まで考えたより良い整備を行う設計にするようにしてください。




浴室の種類、数はどうしたらよいか、将来を見越した計画にしたいものです。


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28.骨折を防止する床にしよう

 
介護環境デザイナーの間瀬樹省です。


介護施設における事故と言えば、真っ先に挙げられるのが「転倒」だと思います。


そして、事故の結果として起こるのが「骨折」ですね。


骨折は、怪我をしたご本人はもちろん辛いですが、担当していた職員にとっても精神的に辛いものだと思います。


骨折が起こらないように、ご本人の動きを評価し安全な移動ができるような環境を整える事は大切です。


しかし、どんなに環境を整えても転倒をゼロにすることは不可能です。


転倒して骨折すると、元気な方でもその間に筋力や体力が落ちてもとに戻すのは大変なもの、お年寄りの場合はもっと大変になりますね。


そこで、転倒が起きてもなるべく骨折が起こりにくいような配慮を建築側でも行っておくべきです。


具体的には、床に倒れてしまった時の衝撃を吸収しやすい床にすることが必要となります。


鉄筋コンクリートや鉄骨造の建物ですと、床はほとんどコンクリートになります。


このコンクリートに直接ビニールシートやフローリングを貼るととても硬く衝撃を和らげることのできない床になってしまうのです。


このような書き方をすると「とても硬そうだな」と思われるでしょうが、残念ながら多くの建物の床はこのような構造になっています。


ではどのように対策を行うかというと、大きく分けると2通りです。床を二重にする方法と衝撃吸収シートを使用する方法です。


床を二重にする方法は、コンクリートの床の上に木などで床をつくるのですが、コンクリートの床との間に空間をとっておきます。


そうすると、床の上に荷重がかかると材料がたわんで衝撃を吸収することができるのです。


衝撃吸収シートは、床材のメーカーが発売しているもので、ビニル床シートやカーペットの下に敷いて使います。


厚みは数ミリ程度ですが、衝撃の吸収には効果が高いようです。


床をカーペットにすると、他の素材よりは表面が柔らかく衝撃を吸収しやすくなりますが、能力的には十分ではないようです。


床をカーペットにする場合でも、どちらかの対策を行っておくと十分な衝撃吸収性能をもたせることができます。


床材の選定は、利用する方の健康や命に関わる問題です。


介護施設の新築や改修の計画の際には、ぜひ優先してコストをかけてより良い整備を行う設計にするようにしてくださいね。


20140625_カーペット
改装で床材をカーペットにした例。「家の中なら靴を脱ぎたいよね」ということで、計画しましたが、転倒時の衝撃吸収だけでなく、履きっぱなしの室内履きを止める事による水虫激減の効果もあったそうです。


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