菊五郎劇団による、日生劇場での「12月大歌舞伎」を見に行ってまいりました。
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日生劇場 十二月大歌舞伎
平成22年12月2日(木)~25日(土)
12月25日(土) 昼の部 11時開演
通し狂言
一、摂州合邦辻
序 幕 住吉神社境内の場
二幕目 高安館の場
同庭先の場
三幕目 天王寺万代池の場
大 詰 合邦庵室の場
玉手御前 菊之助
羽曳野 時 蔵
奴入平 松 緑
次郎丸 亀三郎
俊徳丸 梅 枝
浅香姫 右 近
桟図書 権十郎
おとく 東 蔵
合邦道心 菊五郎
二、達陀
僧集慶 松 緑
堂童子 亀 寿
練行衆 亀三郎
同 松 也
同 梅 枝
同 萬太郎
同 巳之助
同 右 近
青衣の女人 時 蔵
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↓今年は歌舞伎にオペラに狂言に通った日生劇場。3月の「染模様恩愛御書」が遠い昔のことのようです・・・
↓来てみてびっくり、この日は楽日でした。楽日は26日かと思っていました。(汗)
それでは、ますます心して拝見をば・・・
↓それにしてもこの劇場、出来た当時は画期的なデザインだったことでしょうね。
↓上演時間。「合邦辻」は、通し狂言なので合計3時間。たっぷりですねえ。
一、摂州合邦辻
菊之助さん演ずる玉手御前は、濃厚な雰囲気を醸し出しておいでで、年増の女性も演じられる貫録を
すでにお持ちになられたのだなあと、嬉しく拝見させていただきました。細すぎない首のラインも美しかったです。
俊徳丸、浅香姫が、若手の梅枝さん、右近さんでしたので、年齢的にバランスがよく、
そこもまたよかったと思います。
脇で光っていたのは、町人役の橘太郎さん。
この方のほんわかとした、「善」といった風情のあの持ち味は、
狙って演じようと思ってもできるものではなく、非常に得難いものだなあと
今回も強く感じた次第です。
終盤で、玉手が本心を明かす場面で、菊之助さんの目の下の紅が、
涙で流れたかのようにどんどん流れて広がっていたのですが、
普通、どんなに汗をかいたって、涙を流したって、そうそうお化粧は崩れるものではありませんよね。
あれは、涙のように流れていくことを狙っての演出だったのだろうと思うのですが、
いったいどういう仕掛けだったのか気になりました。
それにしましても、この「摂州合邦辻」、濃厚な感情のやり取りが続く重たいお芝居で、
見終わりました後は、どっと疲れが、といいますか、深いため息が出たほど、見応えがありました。
役者さんたちはこれを1日2回演じておられるのですから、驚異的です。
二、達陀
こちら、未見の演目で、面白そうだととても楽しみにしておりましたが、
いや~~、本当にこれは、異色といいますか、画期的といいますか、
これは歌舞伎!?舞踊?!芝居!?ショー!?
「舞踊劇」とのことですが、まさにその通りで、ストーリー色の濃い舞踊ショーでした。
これは、歌舞伎好きな人にも、見たことのない人にも、ぜひ一度見ていただきたい作品ですね。
こんなに見応えのある舞踊の演目は、自分がこれまで拝見した演目の中では
なかったかもしれません。
何が見応えがあったかと申しますと、いくつか理由があるのですが、
まず一つ目に、扱っているテーマが「東大寺の僧侶の修行」という、
極めて特殊なものであるということ。
そのような場面を見たことがある人はそうそういませんから、
しかも、ただ念仏を唱えているだけでなく、
密教の修行を思わせるような荒行の修行ですから、
これはもう、ひたすら「好奇心」で、舞台の成り行きを食い入るように見てしまうわけです。
第二の要素は、振付の大胆さ。
松緑さんが、「日舞とは使う筋肉が違う」「ダンスのようなカウントの取り方をする場面もある」
とインタビューでおっしゃっていたように、日舞とはまったく違う振付で、
群舞シーンもありましたし、この点も、歌舞伎の舞台ではまず見ることができないものでした。
整列した僧侶たちが、順々にタイミングを合わせてトンボを返したり、仏倒しをするところなど、
日舞でもなければ、ダンスともまた違い、非常に珍しい独特のものであったと思います。
ダイナミックで力強く、あんなに大勢での群舞は、歌舞伎では見たことがありません。
隣の人とぶつかるんじゃないかというくらい、大勢の役者さんが、まさに「所狭し」と
踊っていました。
セットもリアルで、照明も普段の歌舞伎の照明とは全く違う、現代演劇で用いられるような
照明で、舞台効果を盛り上げていたと思います。
僧侶たちが、足や膝を床に打ち付けて行う「五体投地」の修行シーンが出てきましたが、
「五体投地」といえば、チベット仏教の巡礼者たちが体を地面に投げ出して、少しずつ巡礼路を前進する
映像は皆様ご覧になられたことがおありかと思いますが、日本の仏教でも、それに似た修行が
行われているとは驚きました。
実際、東大寺ではこのような修行が荒行が、限られた時期にせよ、行われているそうですが、
僧侶の方々の膝は大丈夫なのかと、心配してしまいました。(笑)
音楽も、通常のお囃子や下座音楽とは異なり、非常に多くの種類の楽器が用いられていたようで、
膨らみのある音楽でした。本職の僧侶の声での録音も用いられており、
いやはや、異次元の世界が出現した、といった感がありました。
大勢の役者さんが同じ振付で踊られるシーンでは、
それぞれの役者さんの踊りの個性が見えてきましたが、
松緑さんのどっしりとした、あの安定感のある踊りは、今回の芯を勤めるポジションにとてもよくあっていました。
この演目、また再演の機会があれば、見たことのない人にもぜひ見せたい演目だと思いました。