『義経千本桜』の思い出と、『星合世十三團』 | ふうせんのブログ

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小林蕗子のブログです。2013年5月に始めたときはプロフィールに本名を明示していましたが、消えてしまいましたので、ここに表示します。。
主に歌舞伎や本のことなどを、自分のメモ的に発信したいなあって思っています。よろしく!!

前回のブログで、『星合世十三團』(ほしあわせじゅうさんだん)は、『通し狂言 義経千本桜』の凝縮されたものということを書きました。

【南座での『通し狂言 義経千本桜』の思い出】

そして、2010年9月南座で、九月大歌舞伎【訪欧凱旋公演『通し狂言 義経千本桜』 市川海老蔵 忠信・知盛・権太、三役相勤め申し候】を、私も観たことも書きました。
その時の公演内容は https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kyoto/print/205
そのブログを書きながら、あの時、「道行」「川連法眼館」の〈静御前〉と、「碇知盛」の〈お柳実は典侍の局〉を共演してくださった坂東玉三郎の姿が、私の頭の中から離れませんでした。
夢のような美しい舞台でした。

「道行初音旅」「川連法眼館」「蔵王堂」
特に「道行初音旅」、海老蔵の佐藤忠信=源九郎狐に、

玉三郎の静御前。美しかった! 力強かった!!
清元は入らず、竹本(義太夫)だけ。

ですから、清元の柔らかさのある道行とは違いました。
東大夫、愛太夫、蔵太夫、そして鳴門太夫!! 
文楽のように、屋島の合戦の場面が浮き上がってきました。
忠信(海老蔵)が舞い語る「平家の侍・景清が、源氏の三保谷四郎の錣(しころ)を引き、…」に続いて、
静御前(玉三郎)が語る「弓の名手、能登守教経が義経めがけて矢を放ったその時、佐藤継信が矢面に立ち、命を落とした」というくだり。ここが強調されました。

継信は忠信の兄です。この継信の功績があるからこそ、義経は忠信に自らの着背長(=鎧)を与えたわけです。
この時の通し狂言では、四の切「川連法眼館」に大詰「蔵王堂」までが入り、忠信の兄・継信の仇、能登守平教経が登場しますから、特にこの話は重要でした。
7月の歌舞伎座でも、海老蔵の13役の中に能登守平教経が入っていますから、継信の功績を浮き立たせることは重要。
と言っても、理屈っぽいわけではありません。
力強い華やかさとともに、佐藤忠信の憂い、源九郎狐の憂い、静御前の憂いが織りなす、絶妙な美の世界に満ちた舞台でした。

その憂いを象徴するかのように、狐の人形が登場して、

人形遣い(坂東薪車=現・市川九團次)とともに舞い踊りました。
なんとも言えない風情が、舞台に漂いました。
今回の7月歌舞伎座では、ここまではやれないかもしれませんが、
海老蔵は「川連法眼館」にも狐の人形を登場させたことがありますから、どこかで登場させるかもしれませんね。
どんな舞台になるか楽しみです。

【7月の『星合世十三團』】

さて、来る7月歌舞伎座について、【海老蔵が語る歌舞伎座「七月大歌舞伎」】が歌舞伎美人のサイトに出ました。
こちら https://www.kabuki-bito.jp/news/5517
通し狂言『星合世十三團』については、
――――一部抜粋
平成22(2010)年には、南座で通し狂言『義経千本桜』に出演し、忠信、知盛、権太の3役を勤めた海老蔵ですが、「そういう経験も踏まえたうえで、やはり挑戦するのであるならば、いつか千本桜ですべての役をやりたいな、と思っておりまして」と心境を語りました。―――以下、省略
この企画は、5年前くらい前から構想されていたのですね。
13役の早変わり、「大変どころじゃないですね」と、縷々書かれもています。
是非お読みください。このサイトから海老蔵の心意気を感じてください。

その13役の特別ポスターも発表されましたね。
こちら https://www.kabuki-bito.jp/news/5498
予告動画はこちら https://www.kabuki-bito.jp/news/5540
13役というけれど、このポスターの13の姿だけではなく、例えば、狐忠信だけでも「鳥居前」「吉野山の道行」「川連法眼館」で拵えが変わりますし、碇知盛も渡海屋銀平との二通りの拵えですから、実際には16変化ぐらいになるのかしら…?
いや、歌舞伎や文楽の通り演じれば1日掛かりなのですから、省略されるところもあるはず。
どういう台本なのか、気になりますね。
義太夫は、どの程度入るのかしら…とか。

今回は織田紘二(おりた こうじ)さんが、原作の補綴と演出に入られたるので、心強い。
織田さんは、約50年前の国立劇場創世記から、古典歌舞伎の復活・通し狂言にスタッフとして携わってこられた方。
当時の名優たちに可愛がられ(?!)、鍛え上げられた方ですから、海老蔵にとっては、頼もしい先達さんです。
そして、若手の仕事人として、石川耕士さん、川崎哲男さん。
海老蔵の新作には欠かせない藤間宗家・藤間勘十郎。
ベストメンバーですね。

そして、今回の通し狂言の中心は、
―――――一部抜粋
『義経千本桜』に登場する人物の多くが、命を絶っていくことに対し、「今回のテーマは、死ぬ、ということなんです」と真剣な面持ちで述べます。「動物の心をもっているのが狐忠信という役なんですけど、その狐の無垢な心が昇天していくところが、ひとつの眼目。―――以下、省略
さあ、どういうことになるのか、楽しみです。

6月21日、麻央さんのお命日の前日夕方、逮夜ですね。

歌舞伎座の昼の部のあと、夜の部の3幕目の幕見までの時間に、
青山墓地に、お墓参りに行くことができました。
7月歌舞伎座が無事に、大盛況のうちに千穐楽が迎えられますよう、お守りくださるよう、成田屋のご先祖様、麻央さんにお願いしました。
――――――――――――
6月歌舞伎座も、もちろん拝見しました。
ただ、5月後半に2週間ほど、咳と微熱の続く風邪に罹って、その後遺症のために、頸椎の具合が悪化して、満足な観劇ができませんでした。
6月からは、週に2回リハビリに通っていますので、忙しいです。
ブログは、後日書ければ、書きたいと思っています。

7月の公演までに、体調を万全に整えたいと思っています。
おやすみなさい

※ なお、敬称についてですが、プロの芸術家や文筆家の方は広い意味での公人ですので、舞台そのものや作品について記す時は、私は敬称を付けません。昔からの慣例です。プライベートな内容と思われる時は「さん」の敬称を付けます。よろしくご了承ください。