そして僕は途方に暮れる | p・rhyth・m~映画を語る~

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英題:And So I'm at a Loss
監督:三浦大輔
キャスト:藤ヶ谷太輔/前田敦子/中尾明慶
配給:ハピネットファントム・スタジオ
公開:2023年1月
時間:122分




このタイトルを見て,甘く切ない声と歌詞,パンチの効いたリズムを思い出す人は多いんじゃなかろうか。カップヌードルが食べたくなる人もいるかもしれない。個人的には多感な時期に出会い,以降人生の様々な局面で幾度となく心に奏でられたBGMの1曲で,今でも時々カラオケで歌う,作詞:銀色夏生/作曲・歌:大沢誉志幸による1984年の名曲だ。

そんな思い入れのあるタイトルだから,この作品の公開時に予告編を見た時,自分の中にある歌の世界観との乖離を感じ鑑賞を見送っていた。ところが劇場公開から1年経つと,頻繁に配信メニューに表示されるようになり,その度に脳内でオリジナルの楽曲が鳴り止まなくなる。今夜紹介するのは,そしてついに見てしまった『そして僕は途方に暮れる』。原作・脚本・監督は『愛の渦』(2014年・クロックワークス)娼年』の三浦大輔で,2018年に上演された舞台に引き続き,Kis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔が主演を務めている。

自堕落な日々を過ごしているフリーターの菅原裕一(藤ヶ谷太輔)。ある日,同棲して5年になる恋人・里美(前田敦子)と些細なことで言い合いになり,真剣な話し合いに耐えられず衝動的に家を飛び出してしまう。その夜から,同郷の幼なじみで親友の伸二(中尾明慶),大学の先輩でバイト仲間の田村(毎熊克哉),大学の後輩で映画の助監督をしている加藤(野村周平),東京で暮らす姉・香(香里奈)のもとを渡り歩くが,バツが悪くなるとその場を逃げ出すことを繰り返す。

ついには母・智子(原田美枝子)が1人で暮らす北海道・苫小牧の実家へたどり着く裕一。しかし,母とも気まずくなり,雪の降る街へと出ていく。最果ての地のバス停で行き場をなくし,途方に暮れる裕一の前を通りかかったのは,10年前に家族から逃げて行った父・浩二(豊川悦司)だった。父の家に誘われた裕一は,スマホの電源を切り,すべての人間関係を断つのだったが…。

面倒な現実と向き合おうとせず,ひたすら逃げ続け,次第に追い詰められていく裕一のダメっぷりが続くのだが,それは誰もが持つ逃避願望を具現化したようで,「おいおい」って思いながらも見入ってしまう。そして終盤,オリジナル楽曲の世界観に少し寄せられたストーリーでシメられて…。

エンドロールと共に流れるのは大澤誉志幸自身による『そして僕は途方に暮れる 2023 movie version』。口ずさみながら自分の中の40年に共振し,気づけば涙が止まらなくなっていた。


映画クタ評:★★★★


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