老後の資金がありません! | p・rhyth・m~映画を語る~

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監督:前田哲
キャスト:天海祐希/松重豊/新川優愛
配給:東映
公開:2021年10月
時間:115分




3夜連続で,前田哲監督作品を紹介。今夜はまず,2021年に公開された人情コメディ『老後の資金がありません!』。近年,監督作の連続公開で耳目を引く前田監督だが,そんな中でも『そして、バトンは渡された』の翌日という,最短スパンでの公開となった。

原作は2015年に垣谷美雨が発表したベストセラー小説。いまや“人生100年時代”。高齢になっても働くのは当たり前,社会の仕組みもどんどん変わり,「老後の資金は2000万円必要」とも言われる中,生きていく上で必要な備え,立ち向かうべき課題が詰め込まれたお金のコメディ・エンターテイメント作品だ。

主婦・後藤篤子(天海祐希)は困っていた。自分のパートの稼ぎと,家計は妻に任せきりの夫・章(松重豊)の給料をやりくりして,フリーターの娘・まゆみ(新川優愛)と,大学4年生の息子・勇人(瀬戸利樹)を育て上げた。節約をモットーに,自分に許した小さな贅沢と言えば,月謝5000円のヨガ教室程度。憧れのブランドバッグも我慢して,老後の資金をコツコツと貯めてきたはずだった。

そんな,身の丈に合っていたはずの篤子の生活が,突如綻び始める。入院していた舅の今際の際に,章の妹・志津子(若村麻由美)から喪主を押しつけられ,葬儀代400万円近くを支払うことに。そのタイミングで,密かに正社員登用を期待していたパート先をリストラ。なかなか次の仕事が見つからないところに,まゆみが結婚相手を連れて来る。相手は年収150万円のバンドマン・琢磨(加藤諒)で,地方実業家の御曹司のため,芸能人御用達の式場での盛大な披露宴を希望とか。しかも費用は両家の折半で,最低でも300万円の負担。700万近くあった貯金があっという間に底をついてしまいそうな後藤家大不況の中,章の会社がまさかの倒産! 住宅ローン完済の当てにしていた退職金は当然0円。結婚30周年を目前に,夫婦そろって失職するハメに陥るのだったが…。

天海祐希のキャラが,共演者たちも見る者も巻き込んで進むストーリーは,老後資金問題という,シリアスな素材をライトでコミカルに伝えてくれる。物事の相場に対する教材的な部分も多いし,けれど事態は次第に混迷していく面白さ。いったい,どう収めるつもりだろ? って心配しながら見入ってしまう。笑いだけでなく沁みるシーンもあって,バランスよくまとまった秀作だ。


映画クタ評:★★★★


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