ロストケア | p・rhyth・m~映画を語る~

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英題:LOST CARE
監督:前田哲
キャスト:松山ケンイチ/長澤まさみ/鈴鹿央士
配給:東京テアトル/日活
公開:2023年3月
時間:114分




人口の約27%が65歳以上,その5.4人に1人が要介護だという日本。世界一の少子高齢化社会が様々な政策や地域構造に影響を及ぼす現状には,早急な対応が求められていると言える。

さて今夜は,そんな介護を素材にしたミステリー『ロストケア』を紹介。原作は2013年に選考委員の絶賛を浴びて第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した葉真中顕(はまなかあき)の『ロスト・ケア』。昨夜の『老後の資金がありません!』と同じ監督が撮ったとは思えないテイストで,また,この作品の3ヶ月前に公開された『水は海に向かって流れる』とも趣の違う器用さを見せつけられる。

“ケアセンター八賀”で働く斯波宗典(松山ケンイチ)は,若くして白髪だらけな風貌だが,とても献身的な介護士。親切で気遣いの細かな仕事はセンターの利用者からも好感を持たれ,新人ヘルパーの足立(加藤菜津)や同僚,センター長の団(井上肇)からも信頼される好人物だった。ある朝,センター利用者の自宅で老人と団の死体が発見される。犯人として捜査線上に浮かんだのは何と斯波だった。

やがて,検事の大友秀美(長澤まさみ)は,ケアセンター八賀での利用者の死亡率が異常に高く,それが斯波の休日と合致していることに気づく。真実を明らかにするため斯波と対峙する大友。団への正当防衛を主張し,老人への犯行は“殺人”ではなく“ロストケア(=喪失の介護)”であると主張する斯波だったが…。

ここに出てくる老人たちとその子との関係を,物語中の極端な例だと完全にフィクション視できる人はどれほど居るのだろう? サスペンスよりもむしろ,そんな“リアリティ”や“危機感”で迫ってくる作りに唸らされる。

冒頭の聖書の1節,
人にしてもらいたいと思うことは何でも,
あなたがたも人にしなさい

が,“親の介護”と“家族の絆による呪縛”に苦しむ人々に絡めて描かれていく。しかし,「自分がしてもらいたいこと」と「相手にしてほしいこと」は常にイコールなのか? 誰がそれをジャッジできるのか? と見る者に問いかけ続ける秀作だ。


映画クタ評:★★★★


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