犬王 | p・rhyth・m~映画を語る~

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英題:INU-OH
監督:湯浅政明
キャスト:アヴちゃん/森山未來/柄本佑
配給:アニプレックス/アスミック・エース
公開:2022年5月
時間:97分




“犬王”という名を耳にしたことのある人は少ないかもしれない。室町時代,世阿弥と人気を二分したと言われる実在の能楽師で“道阿弥”とも呼ばれる。世阿弥と同じく足利義満から高く評価されていたにもかかわらず,その作品は一切現存しないという,謎に包まれた人物だ。

今夜紹介するのはその“犬王”の物語。キャラクター原案は『鉄コン筋クリート』『ピンポン』の漫画家・松本大洋,脚本は『アイアムアヒーロー』『罪の声』の野木亜紀子,監督は『きみと、波にのれたら』の湯浅政明。

時は室町時代初期。壇ノ浦の漁師の息子・友魚(ともな)(森山未來)の家に京から侍が訪れ,源平の合戦で海に沈んだ天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)を引き揚げるよう依頼する。しかし引き揚げた剣を引き抜いた途端,剣の呪いで父(松重豊)の体は真っ二つに裂け,友魚も盲目となってしまう。恨みを抱えて亡霊となった父の声に従い,仇である依頼主を探そうと京へ赴く友魚。道中,宮島で知り合った琵琶法師・谷一(後藤幸浩)に弟子入りし,2年以上にわたり共に諸国を遊行した後,上京し谷一の所属する“覚一座”に入り琵琶法師となる。

一方,京の都の猿楽の一座“比叡座”に生まれた犬王(アヴちゃん)は,その異形の姿から周囲に疎まれ,顔を瓢箪の面で隠されて育つ。しかし悲嘆することなく,見よう見まねで能を学び,個性的な舞を会得していった。ある夜,京の橋で出合った友魚と犬王はすぐに意気投合し,バディとなることで互いの才能を開花させる。唯一無二のステージで乱世の人々を熱狂させていく2人だったが…。

琵琶の音色とロックの融合が心地よい。もちろん創作だが,いっさいの作品が既存していない犬王の,民衆を熱狂させる音楽という意味では「ありかも?」と思わせてくれる。さらに友魚という架空の琵琶法師を絡めることによって,生まれた時から肉体が奇怪な形をしている犬王と,生まれたときは普通の身体で天真燥漫,親の愛情もある環境で育ったのに,誰かのせいでその全てを奪われた友魚との対比。だからこそ通じ合える2人のキャラ設定が秀逸。

終盤の互いへの思い,それが600年の時を経て昇華されるシーンまで,よく作り込まれたストーリーと映像に,アニメの底力を存分に見せつけられる1本だ。


映画クタ評:★★★★★


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