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原題:Arrival
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
キャスト:エイミー・アダムス/ジェレミー・レナー/フォレスト・ウィテカー
配給:パラマウント映画/エンターテインメント・ワン/ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
公開:2017年5月
時間:116分




人間は,出来事や変化を認識するための基礎的な概念として“時間”というものを定義した。それは“今”を基準として過去と未来を捉え,繋ぐもの。しかし“時間”を認識したが故に,“時間”に振り回されてはいないか? 過去や未来にばかり思いを馳せて,“今”の現象や感情を,疎かにしてはいないか?…そんな問いかけを,見る者の心に投影する作品を今夜は紹介。ずっと予告編が気になっていたもののスケジュールが合わず,劇場公開時には観ることが叶わなかった。

原作は人気SF作家テッド・チャンの短編小説『あなたの人生の物語(Story of Your Life)』。監督は『プリズナーズ』や昨年の『ブレードランナー 2049』(ソニー)で好評価を得たドゥニ・ヴィルヌーヴ。主人公ルイーズが言語学者という設定も,個人的には興味をそそる。原題の『Arrival』は「到着;登場」の意味だが,語源的には「予定の時や時期の訪れ」の意味もあることを考えると,タイトルの深さに唸らされる。

ある日,宇宙から飛来した巨大な楕円形の飛行体が地球の12ヵ所に突如姿を現わし,そのまま上空に静止し続ける。その目的が判然とせず,世界中に動揺と不安が広がる中,言語学者のルイーズ・バンクス(エイミー・アダムス)のもとに,アメリカ軍のウェバー大佐(フォレスト・ウィテカー)が協力要請に訪れる。こうして,同じく軍の依頼を受けた物理学者のイアン(ジェレミー・レナー)とともに,アメリカに飛来した飛行体の内部へと足を踏み入れるルイーズ。

彼らの任務は,飛行体の中にいる7本脚の2体の地球外生命体“ヘプタポッド”2体と接触を試み,その飛来の目的を探ることだった。試行錯誤の末,墨を吹き付けたようにして描かれる“ヘプタポッド”の文字言語の解読に没頭していくルイーズとイアン。しかし同時に,ルイーズの中では不思議な光景のフラッシュバックが強くなっていくのだった…。

原作未読で見るのがお薦め。“よくあるUFOモノ”と捉えていると見事に心地よく裏切られる。時と人物関係を映像のトリックにしながら,見事にミスリードさせる序盤。中盤になって少しずつ「あれ?」と疑い始め,終盤ではタネ明かしと共に,もうひとヒネりを見せてくれる。そして,未来を知ってもなお,“今”の想いに正直な主人公に帰結させ,それは穏やかで優しい“メッセージ”として,見る者の心に届けられる。

展開や次元設定は『インターステラー』に近いかもしれない。しかし『インターステラー』の1/3以下の製作費で,リアルに,物理より人に根ざした展開を見せ,その構成が物語にキチンと活きて繋がる。見終わった後に“今”という時間を,そして自分に関わる人々を,愛しく感じさせる1本だ。

吹替で見る人は,終盤の日本語字幕をONにして,“ヘプタポッド”の文字言語を判読できるようになったルイーズと感覚を共有しつつ見てほしい。そこで初めて彼らの飛来の目的が語られる部分だが,吹替版では判らない仕組みになっている。そんな小ワザにも惹かれてしまう。


映画クタ評:★★★★★


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