少し前に上記のような記事がありました。ざっと概要をまとめますと、
・子供が中学受験の勉強についていけなくなってきた
・ので親ができる範囲でフォローをした
・結果として成績はあがったが、そのことを塾に言うと
・「親は手を出すな(教えるな)、塾に任せてください」と言われた
そして、親が「はぁ?」となった、というような話です。
これは、麻布や開成、灘などに入学すると、必ず最初に言われることと同じです。大半の進学校では、
・もう子供は子供ではない。一人の人格として自主性を育てるべく
・親は介入するな
ということを入学時に言われるようです。これはおおむねその通りです。
僕が入学した当初の中1の3月の新入生の集まりでも「稚気を去れ(もうガキじゃねえんだよ)」というようなことを校長自らが仰っていました。
とはいえ、そういう自覚を促しつつも、先生方の強力なリーダーシップ(時に介入)に僕らは引っ張られていたわけですが。
僕の実感としては、中学受験期の「親御さんは教えないでください」は、中学以降のものとは全く意味が違ってきている、と感じます。
中学受験における、親が教えるな、という意味あいは、
・塾と違うやり方を入れられると混乱する子が一定数いるから止めといた方が無難
という意味でしょう。あとは、
・親に教えられると領域に踏み込まれた気がしてイラッとする、
的な狭量な塾講師プライドの面が強いと思います。
塾の先生からすると、塾では教える順番なども計画して教えているのに、親が勝手に先を教えたり、便利と言われるしょーもないショートカットの解法ばかりを教えて、子供がいわゆる応用の効かない「バカ」になっていくので、難色を示すのです。
これは、僕もかつて塾講師だった経験上、わかる気はします。
ただ、いざ家庭教師の視点になり、家庭側の視点に立つと、
・ほとんどの家庭は親がまあまあ教えている
・それが無理な家庭も家庭教師などが普通についている
そういう子たち、もしくは元から遺伝的特質の高い子たちが、家でいろいろフォローされて、塾ではトップ層にいるだけ。という現実が見えてきます。
この現実を20代から僕は、教える側教えられる側の両面から家庭を見て知っていたので、塾講師としてもなるべく時間をとってフォローはしていましたが、「親がちゃんとできるようにしといてくれたらええなぁ」くらいには思っていました。
変なやり方を仕込まれたら確かに嫌なのですが、その際でも、マイナスにはならないことの方が多かったです。
また、サピや浜学園では、おそらく上記のようなことは少ないと思います。それらの塾では自分のところで子供をできるようにして帰すというのは無理だし、ビジネスモデルとしても難しいとわかっています。
むしろ、どんどん親もフォローしてくれ、と心のどこかでは思っていることでしょう。
ただ、そうやって親がべったり、ではやはり親も忙しいでしょうし、子供の人生の自主性が育ちません。中学入学後、べったりをしすぎてまったく自分からは勉強をしなくなる子が本当に多く、それが開成や麻布レベルでもかなりある、ということが僕の視点からは言えます。
そこで僕は「自走させる」ようにもっていってあげないとダメなんだな、と思うようになっています。
<ではどこまで親はフォローするべきなのか>
まず、低学年ではもちろん子供は意志が弱いものですし、7割くらいの子は親が見ていたりしないとちゃんと学習することはできないでしょう。
ただ、それでも例えば、公文を1日1枚、としたときでも、計算や漢字はべったりついていなくてもそこそこはできるでしょうから、そういうものから手を放していく感覚は大事です。
問題はサピやグノーブルでいう小4後半、四谷や早稲アカの小5前半、日能研での小5後半あたりにくる、急に難しくなる時期です。
この時期にコケた場合は、子供一人でやれと言ったって結構厳しいです。この時期にできない場合は、放っておくと下位で固定されてしまいますから、ある程度のフォローが大事です。
明らかに週の宿題がまわってない、テストの点数が落ちた、などはフォローして走ってもらいましょう。
家庭教師の先生なども小6でつける方が多いですが、このしんどい小5前後の時期に着けてあげた方がよいように思います。(とはいえ、小6でもういらんわー、ほな、とはしにくいですがw)
過去の本でも言っていますが、
・この時期までに、ある程度の計算力と読解力をつける(できれば体力も)
・それが発育のスピード的に不可能だった(間に合わなかった)場合は、親もしくは個別・家庭教師などである程度フォローするしかない(受験に落ちるよりマシ)
ということが言えます。
自走といっても単に放任すればよいものではありません。そこまでの時期に、子供一人で走れるだけの基礎的な能力がいるのです。自走という言葉が最初の著書をだしてから受験界でまあまあ広まってきましたが、「目指すところ」が自走であって、親も忙しいし放任する、という意味合いではないのでご注意ください。
また、手を放してみるなら小4いっぱいまでで一度くらいは試みてみることをおススメします。一度は点数が落ちるかもしれませんが、子供の自覚が育てばそれのほうが良いです。
ここで放してみないと、一番しんどい時期に手を放すことになりがちです。子供の大変な時期に、はじめて手を放すパターンにはならないようにしましょう。
<塾は言うほどお任せできるクオリティにない>
もうひとつ言えますことは、上記記事中でもある親御さんの不安の通り、
・塾にまかせてたら成績伸びないじゃん
問題があります。
塾講師も毎日の予習にテストの採点と成績の打ち込み等々、事務作業が結構あり、子供のフォローに昔ほど時間を割けないのが実情です。
子供に勉強する自主性がある程度育っていて、なおかつ塾ができない生徒もちゃんと伸ばそうとするカリキュラムが両立できている時のみ、塾にお任せできます。
塾にお任せするために塾に最低限必要なカリキュラムとは
・小テスト
・宿題チェック
・それができていない場合の時間の確保。居残りや土曜補習など
・模試などで成績の4教科把握(つまり各講師が自分が担当していない科目も全員分知悉しておく)
・復習テスト(マンスリーや月例、組分けテスト)の対策
これらすべてです。通われている塾がどれだけできているかチェックされてみればよいと思います。
おそらく、これをしっかりできている塾というのは、大手では希学園くらいで、あとは神奈川と東京のいくつかの個人系塾がいいセンいっている、くらいのものでしょう。
そのフォローの手厚い小規模塾も、いろんな塾のカリキュラムをそのままコピーして使って居たりして、著作権法的には「やばいんじゃ?(訴えればいつでも潰せる)」と思える塾が多いです。
また、フォローに塾講師が時間を割いている分、やはりサピなどに比べるとカリキュラムの甘さや演習量の少なさが気になります。
ただこれはトレードオフの関係(彼方立てれば此方が立たぬ)なので、しょうがない部分があります。
教育者の端くれとしては、できない生徒も育ててなんぼでしょ、と思う反面、受験のプロとしては、結果を出してなんぼでしょ、という面もあり、僕自身も難しいです。
ただ今後、ますます女性の社会進出が進んでいくことが予想されますし、両親とも働くのが当たり前、という時代がきています。
ですから、サピや浜学園のようなノーフォロー塾というのはさすがに敬遠されていくのではないか、もしくは家政婦さんなどをつけている超がつくお金持ちだけが行くのではないか、と思っています。
そのお金持ちも、今の日本の経済状況では頭数が減っていくことでしょうね。
そもそも、中学受験というのは、
・中高6年で伸びる資質があるか
を見て、資質がある子を多くとって伸ばしたい、というのが進学校の在り方です。
英語も要りそうな(それが主流にはならないと思っていますが)状況になると、すでに受験マシーンとして「完成品」を中学側が欲しているような錯覚にとらわれますが、良い進学校ほどそうではなく良い原石を欲しがっています。
良い原石の条件とは、基礎学力と基礎知識、それに読解力です。それがありますよ、と入試である程度示せればよいのです。
家庭側が勝手に完成品を目指さないようにしましょう。
いつも読んでくださってありがとうございます。
女子SPAさんで受けたインタビュー記事です。ご参考までにどうぞー
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<追記>
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