【400文字作文】下半身は地球を救う。 -2ページ目

【400文字作文】俺の顔(にーまるいちいち)

【400文字作文】下半身は地球を救う。-110919

携帯電話のアラームが鳴り、目を覚ます。
ゆっくりと立ち上がり「さて」と思い、外を
眺め天気を確認し、顔を洗いに行く。
 洗面台の前に立ち、水を溜める。波打ちな
がら上がってくる水面を眺めながら「よし」
と思い、鏡で自分の顔を見る。
 瞼はまだ薄く腫れており、目やにが詰まっ
ている。頬には寝痕が残っている。何度か顔
を洗い、目やにを丁寧に取る。
 鏡で、水滴をつけたままの顔を見ながら、
誰かに良い顔をしていると言われ嬉しかった
ことを思い出す。それはイケメンだというこ
ととは意味合いが違っていたので、嬉しかっ
たのだ。と、同時に居酒屋のカウンターで目
が死んでいる知らない男に、兄ちゃん俺の若
い頃の目にそっくりだ。と言われたことも思
い出し、鏡から目を逸らした。
 鏡で自分の顔をじっくり見ると、あまり良
いことはない。ということを久々に思い出し
「はあ」と思い、もう一度外を眺めた。

【400文字作文】風と井草と畳と女

 $【400文字作文】下半身は地球を救う。

 扉を開けると、民宿のような、井草の薫り
がした。律儀に並べられた真新しく青い畳は
まるで、気合いを入れて角刈りにしてきまし
た的な感じでそこに、収まっていた。
 そんな畳に一歩踏み込む。足裏にザラりと
井草の感触が伝わる。と同時にフワりと藁の
柔らかさも、伝わる。
 ザラりな感触を楽しんでいると、窓~窓か
ら風が吹いた。畳の上を撫でるような優しい
風だった。
 私はすでに、お漫画的な汗を二三十粒ほど
頭皮から額、そして顎先へと運び、気ままに
畳へと落としている。汗が落ちた跡の畳は秋
色へと変わるがすぐにまた、青く戻る。
 私は畳の上で大の字になり、じわじわと汗
をかくことを楽しんだ。畳は私の汗を吸い、
茶色くなった。
 私は上半身だけを畳から起こし、その汗の
跡を眺めた。青く戻るだろうかと不安に想い
ながら、眺めた。

【400文字作文】雑魚寝の仔猫

 $【400文字作文】下半身は地球を救う。-110712


 朝焼けを見るのは、ひさしぶりだった。
 私の隣では男達が、胎児のような格好で寝
ている。私は彼らを起こさないようにそっと
起き上がり、カーテンの隙間から外を見た。
紅くて、官能的な朝焼けだった。
 私は興奮し、膨張した性器のよう朝焼けを
眺めながらタバコをくわえたまま、火は点け
ずにそれを眺めた。
 朝焼けが好きな人はロマンチストで、夕焼
けが好きな奴はセンチメンタリストなんだ。
と、私に言った男のことを思い出した。だか
ら男は夕陽に向かって走ったり叫んだりする
のね。と私が言うと彼は口を曲げ、首を傾げ
て柔らかく微笑んでみせた。
 何も……どこも見ていない自分に気付き、
もう一度朝焼けをと外を見る。すると微笑ん
でいる自分の顔が、窓にうすく映っていた。
 私は私と目が合った。そして、頭の中では
「感傷」という言葉がゆっくりとスクロール
していった。

【400文字作文】ぽぽぽぽいんと、カード。

$【400文字作文】下半身は地球を救う。-110423



 ポイントカードはお持ちですか?という問
いに、私は「いいえ」と答える。
 いいえ。私はポイントカードを管理するの
が下手だし、出すのも面倒だし、頼ってもい
ないし、信用もしていないし利用するほどに
困ってもいないし、スーパーで買い物をする
ことも週に一度あるかないかだし……。とい
う風情を醸し出しながら、そして攻撃的にな
らないように「いいえ」と言った。
 「ありがとうございます。」と、なぜか礼
を言われるのもいつものことで、「いいえ」
と言える場面ってそうないな、と思いながら
レジを離れるのもいつものことだった。
 買った物を、四千七百円で買ったエコバッ
グに詰める。そんな私の隣では、若い男の子
がポケットから出したコンビニ袋を広げ、買
ったものを詰めていた。
 私のポイントをその彼に譲れないものかと
一瞬思ったけど、きっと彼もポイントには期
待していないだろうな、と思った。

【400文字作文】妻と娘と にゃにゃにゃにゃにゃ

$【400文字作文】下半身は地球を救う。-110303

 あかりをつけましょぼんぼりにぃ おはな
をあげましょ にゃにゃにゃにゃにゃぁ……
 私の妻は歌詞がわからなくなるとなぜか、
ハミングではなく「にゃにゃにゃ」で、その
後のメロディを口ずさむ。 ごーにんばやし
のにゃにゃにゃにゃにゃぁ……
 小さな和室で妻は、いくつか木の箱を広げ
て、小さな雛壇を飾ろうとしている。娘はそ
の様子をじっと、見ている。
 木の箱の中には優しい紙に包まれた人形が
入っている。妻はそっとそれを両手で取り出
し娘に、きれいねー。と言った。娘は無表情
で、うん。と言いながら頷いた。去年の雛祭
り、まだ娘は「うん」と言うことも頷くこと
もできなかった。来年の雛祭りには、何と言
うのだろう。
 子供の頃、仕舞ってあった雛人形を勝手に
開けて遊ぼうとしたら、人形の首が取れたこ
とを、和室に座っている妻と娘の後ろ姿を見
ながら、僕は思い出していた。