今回は、不動産業における会計処理の論点についてご紹介したと思います。
ある不動産事業会社のお客様の決算資料を確認していた中で、売却済の不動産に関する、購入時及び売却時に支払う仲介手数料が、共に「売上原価」で計上されていました。
この点に関する適切な会計処理は、
・購入時:不動産の取得価額に算入⇒売上原価でOK
・売却時:「販管費」の支払手数料で処理
となり、購入時と売却時では取り扱いが異なります。
上記の結論については、不動産会社や税理士さんのブログなど、様々なHPで言及されています。
売却時の仲介手数料の処理に関する理論的な考え方は、一言で言ってしまうと、
「販売活動に関連するコストなので販売費に該当」するためです。
詳細は、下記2点の税法上の規定が根拠となり、会計上も、これら税法上の趣旨に沿った形で処理されることとなります。
【根拠①:法人税法施行令 第54条 減価償却資産の取得価額】
不動産購入時の仲介手数料は、不動産取得時の付随費用として、棚卸資産(販売用不動産)の取得価額に算入する旨の定めがあるが、売却時の仲介手数料については、同じような個別的な定めは無い。
よって、購入時以外の仲介手数料は棚卸資産の取得価額を構成しないと考えられるため、会計上も不動産売上の計上時に、棚卸資産から売上原価へ振替処理される性質の費用ではない。
【根拠②:租税特別措置法関係通達 61の4(1)-8 情報提供料等と交際費等との区分】
税法上「取引の媒介(仲介)を業とする者に対して支払った情報提供等の対価は、交際費に該当せず、全額損金算入できる。(税法の文言を簡略化しています)」旨の規定がある。すなわち、購入時を除く不動産仲介業者に対して支払う仲介手数料は、発生時に費用処理(損金算入)する性質を有するため、会計上も期間費用である「販管費」に該当するものと考えられる。
すなわち、売上高と紐づける形で費用計上するのではなく、「発生=即費用認識」という期間費用としての処理が適切といえる。
今後も、簿記テキストや会計基準にはそのまま書いていないような、これまでの実務において発生した会計処理の論点・結論についてご紹介したいと思います!