大昔、とある漫画雑誌の原作コンクールで入賞した。
その後、私は「持ち込み」時代に入るのだが(「持ち込み」についてはこちらでも触れています→ 「一生懸命」)、
そういうことをやるのが新人の当然、ということすら知らなかった頃で、知り合いの真似をして出版社詣を始めたものの、その基本姿勢みたいなものを全く理解していなかった。
「どんな話を書いていきたいですか?」
担当編集者さんにそう聞かれた。
……どんな?
女性漫画誌だったので、「子育てと仕事の両立」とか「嫁姑関係」、「不倫について」、「女性にしては珍しい職業」等……そういった答えを待っていたのだと、今ならわかる。
けれどそのときの私は全くそういう読みができず、しかも自分の中に確固たる「これ」という書きたいテーマもなく。
ただ物語を創るのが好きで、自分が読みたいと思える話を書ければそれでよかった。
なので、いくつか書きためてあったストックの中でお気に入りのものを想定して答えたのだった。
「セカンドヒーローが書きたいです」と。
これは、タイトル「ヒーローになれない」という短編シナリオで、簡単に言うと、「肝心な時に失敗をして、勉強にしろ運動にしろ恋愛にしろ、一番にはなれなくて悩む男」の物語だった。
それを「セカンドヒーロー」と呼ぶのかどうか、今思うとちょっと違うような気もするけれど、とにかく「一番」を取れないこと。そのジレンマ。だけど結果として取れた「二番」がその人の「一番」だったりして。みたいな話。
時代劇でも殿様の家老とか、会社でも社長の右腕とか、サポートする人が「できる」と全体が上手く回るわけで。
まあそこまで突っ込んで書いた話ではないけれど。
特異の才能がある選ばれし者で、子供の頃から考え方も行動も普通の人とは違う天才の話(いわゆる偉人伝)は、昔は好きだった。
でも、そこそこ大人になってからは、そういう人よりその周りの人が気になった。そっちの人たちを書きたい、と思うようになっていた。
つまりまあ、自分が凡人だから凡人なりの模索の方が共感できた、というわけなんだろう。
そのときの編集者さんは、ふんふん、と、うなずきながら聞いてくれたように思う。そして何かアドバイスをいただいたはずなのだが、……残念ながら覚えていない……。
今思うと、「こいつ、1人で黙々と好きなものを書いている方がよいタイプ? 商業誌向けじゃないかも」みたいに思われたんじゃないか。
その後、「『女性にしては珍しい職業』を書いてはどうか」と提案をいただいたりしたので、おそらくその想像は当たらずとも遠からずだったのだと思う。
商業誌で書くなら、売れるもの。作者が書きたいものより、そのターゲットの読者層が読みたいものが求められる。
だから、あのときの私の答えは相当とんちんかんだったわけで。
当時、こういうことをもうちょっとわかっていたらな、と思う。そうしたらもう少しいい結果を残せた気がする。
ただ、その頃、そんなおバカさんにいろいろとチャンスやアドバイスをいただけたことは、今でも感謝しているし、自分なりの栄養になっていると思っている。
(了)
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