出版社に漫画の原作を「持ち込み」していた時期がある。
「持ち込み」とは、例えば「私は元看護師なので医療ものがリアルに書けます」といった企画でもよいし、書きあげたシナリオなり原稿なりの形になっている読み物として面白いとアピールできるものでもいい。
事前に連絡を入れると、プロの編集者さんが時間を取って読んでくれる。アドバイスもくれる。うまくいけばその雑誌に掲載される可能性もある。
という「持ち込み」だけれど、これが雑誌によってかなり反応が違うと思い知らされたことがあった。
当時、漫画原作コンクールを募集している雑誌社が結構あった。それが縁で「持ち込み」へと進む。
その頃、私は女性誌と男性誌、どちらのコンクールでも佳作にひっかかった。それも同じシリーズとして書いた違う話で、だった。
内容は、女性が主人公だけれど女性ウケしないとされた題材だった。それが壁になり、先に受賞した女性誌ではその話のシリーズ化は難しいと言われた。
ので、男性漫画誌にそのシリーズの一つとして新たに書いたものを応募してみたところ、受賞できたわけである。
で、その男性誌でそのシリーズをやりたいと売り込んだら、今度はそれは男性にウケないと言われた。
なぜなら、主人公の女性が「かわいくない」から、と。
自分としては、この「かわいくない」ところがこのシリーズの売りで、キャラ的に肝で、だからストーリーが展開していくのだと思っていて、だからこの「かわいくない」ところは譲れなかった。
結果、男性誌でもボツ。
男性漫画誌は当然ながらターゲットが男性であり、男性のためにある雑誌。世の中の多くの男性は「かわいい」女性を求めているのだと、このとき思い知った。
では「かわいい」とはどういうことなのか。
そのとき読んでくれた編集者さんはとても親切で、ちゃんと答えてくれた。
「『一生懸命』ということだよ」と。
女の子が一生懸命恋をする。一生懸命追いかけてくる。一生懸命励ます。一生懸命応援する。とまあ、こういうことらしかった。
私が売り込みたかったそのシリーズの女主人公は、ひねくれていた。相手を応援したくてもきつい言い方でしかできない。励ますのも逆に叩きのめすような言葉で鼓舞するキャラ。仕事には真面目だけど世の中を斜に見ていて素直ではない。
明らかに需要と違った。
「見るからに一生懸命で必死で駆け寄ってくるような女の子がいいね」と言われ、ケッと思ってしまったのだった。
今思えば。
各県知事とかお国の代表がテレビに露出する機会が激増したこのご時世に思えば。
女性だろうがそうでなかろうが、一生懸命さが伝わる人に好意を持つ気持ちがよくわかる。同じことを言っていても紙を読むだけなのと一生懸命必死で考えた末なのとは違うとわかるから。
一生懸命、大事。
世の中を斜に見るような女の子でも、どこかにちょっとでも「見るからに一生懸命」な要素のあるキャラ。
そういうのを考えてみればよかったんじゃないか、と今更ながら思うのだった。
(了)
↓「お迎え」がお題の短編です。13分で読めます!
↓「子供の頃の友達」がお題の短編です。13分で読めます!
↓「夕立」がお題の短編です。12分で読めます!





