読書体力の低下、という話を聞いたことがある。
読書好きだったのに、何行かを読み飛ばすことが多くなり、内容もなかなか頭に入ってこなくなる、という。
自分もその傾向が最近顕著にあって、困ったな、と思っていたとき、そういう人が他にもいることにちょっと安心した、というわけで。
同じように(同じかどうかはわからないけど)、何年か前から書き飛ばすことも増えてきた。手書きで何かを書くときに、一文字二文字飛ばしてしまうのである。
例えば「もねちゃんがふるさとにかえる」と書こうとして、「もねちゃん」が「もねやん」になったり(「ち」が飛んでいる)、「ふるさとに」が「ふるさとか」(「に」を飛ばして次の「かえる」の「か」を書いている)とか。
気持ちが逸るのか、物事の先を急ぎすぎなのか。
「書く」ことに関しては、私の場合、かれこれ30年以上かけて、ワープロからパソコンやスマホに変わるも、書く=打ち込む、という形が、手書きを侵略していった。今や比率として9:1くらいになっていると思う。
筆記用具を持って手で書くのは、下書きやメモばかり。だからかなり雑で適当だ。
その下書きメモ書きは、本当に汚くて、後から読み直してもほぼ読めない。買い物リストなんか、スーパーで何のことかわからずに立ち尽くすこともある。
義務教育くらいまでは、「字は丁寧に書きなさい」と教えられ、素直にそうしていたと思う。書道も習っていたから、字をきれいに書くことを楽しんでもいた。
今じゃ年賀状に添える「一言」くらいしか、字に対する緊張感というか丁寧さを持って向き合っていない気がする。う~ん、ゴメンナサイと言えばいいのか……。
そういう環境や気持ちの面の他に、体力の低下も原因なのかなあと思う。
パソコンのキーを叩く方が、文字を書くより速い。「考えながら打つ」ことは、頭と指が同じスピードでできている気がする。
でも「考えながら書く」のは、書く方が遅い。最近は手や指が固くなって素早く書けず、思いや気持ちの方が先に行っちゃうのだ。結果、手が追いつかなくて、頭で今思っていることを書くと、何文字かを書き飛ばす。
というような原理なのかと分析している。
でもそんな現象、他の人から聞いたことがない。こんな分析、自分だけどっか退化してきているのかも、との不安を打ち消すためだけのムダな努力かもしれない……。
(了)
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