Twitterで見つけて、noteの更新を何度か読んだら、全部読みたくてたまらなくなった。それほど愉快で元気で愛おしいエッセイ。毎度楽しみにしていたら、書籍化されたと聞き、早速一気に読了。
「こう見えて元タカラジェンヌです」(左右社)
著者は、元宝塚花組の男役、92期生の天真みちるさん、愛称たそさん。この芸名と愛称を決めた経緯も記されているが、これからしてもうおかしくて楽しくて。
他、多くの苦労や失敗、同期や先輩後輩への思い、宝塚への愛情と感謝。代名詞のタンバリン芸。アドリブ。そんなあれやこれやの舞台裏が、軽快にくるくると語られている。
そもそも宝塚の男役といえば、カッコよくてキザで華やかで……というイメージがあるけど、たそさんの場合、ちょっと異質。
何せ、おじさん道を極めた方なのだ。変なおじさんからイヤなおじさん、愛すべきおじさんなど、私が観劇した舞台はそう何回もないのに、ものすごく印象に残っている。
私が特に好きだったのは、別箱公演の「はいからさんが通る」の車引きの牛五郎。お辞儀するときの反り返り方が半端なく、動きにキレとコミカルさが同居していて、もう彼(彼女?)が出てくるだけで笑いっぱなしだった。
「オーシャンズ11」でのブルーザーは、ワルで腕自慢だけど負けるのも早くて何だか憎めなかった。「金色の砂漠」のゴラーズは、真面目で優しい求婚者。つらい話の中でほんわかできる空気を作っていた。いずれも出番はそんなに多くない。なのにインパクトは強烈。
私は当時花組だった別のジェンヌさんにハマってしまったのだが、そちらに視線が行きまくりの中でも、たそさんの演じた味のある役はすぐに思い出せる。
宝塚に入りながら、カッコイイとかスマートとか、いわゆる男役の普通の道ではなく、老け役を目指した目の付け所がすごい。
私の好きな元野球選手で、里崎智也さんという方がいる。彼はプロに入るに当たって、自分のポジションであるキャッチャーが手薄そうなロッテを目指したという話を聞いた。「試合に出てこそなんぼ」という生き残るための考え方が、たそさんの老け役道と通じる気がしている。
そんなたそさんを、2メートルくらいのすぐ間近でお見かけしたのは、2年ほど前全国ツアー公演を観に行ったとき。
宝塚メイクではないナチュラルなお顔だったので、宝塚初心者の私には瞬時には判別がつかなかったのだが、同伴の宝塚通が教えてくれてマジマジと拝見。
……美しい! 可愛い! 顔が小さい! 宝塚はもう卒業されたというのに光っている!
おじさんばかりを演じていたからって、なめたらいかん宝塚!
というわけで、とにかくこの本は舞台のたそさんを知らない方でも存分に楽しめる1冊。
明るくなりたい、笑いたい、元気を出したい。そんな人に超オススメです。
(了)
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