9月に読んだ本は3冊(図書館本3冊)でした。
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<満足度> ★★★ オススメ ★★ 面白い ★ 収穫少なめ
『敗軍の名将』 古谷 経衡 (幻冬舎新書 2021.9)
【満足度】★★★
【概要・感想】想像以上に面白かった!太平洋戦争中の名将として取り上げている人物は4人。インパール作戦に従軍した佐藤幸徳中将、そして佐藤配下の第58連隊を指揮する宮崎繁三郎少将。沖縄戦における「戦略持久」を立案、実行した八原博通大佐。さらに自部隊から特攻隊を出さず、海軍幹部を前に堂々と正論を言ってのけた29歳の美濃部大佐。インパール作戦の牟田口司令官の指示を聞かず、独自撤退した佐藤師団長が手負いの部下を励ましながら「白骨街道」を進んだ話など同調圧力や上司の理不尽な要求に正論で抵抗し、合理的な精神を貫いた指揮官たちから得られる教訓を発掘。著者は実際に戦地へ足を運んで取材しており、若干、紀行文的な内容もあり、それがかえってリアルに捉えることの一助となりました。
【ポイント】
*この作戦構想に絶対反対の姿勢を崩さなかった筆頭は、第15軍参謀長小畑信良少将
であった。基本的に参謀長は総司令官を補佐するナンバー2で、軍の意思決定に重大な
影響を与える。小畑少将は当時の日本軍には珍しい補給の権威であった。(p.80)
*東京の大本営とも連絡を取り、牟田口とも直接会話(説得)のできた稲田副長(※総参謀
副長)が南方軍からいなくなったことで、もはやインパール作戦を止める実力者はいなく
なってしまった。(p.84)
*佐藤中将率いる第31師団は、インパール作戦の中でも最もインド奥地に進出した部隊(p.91)
*インパール作戦を前線で実行する3個師団の師団長の中でこの作戦に最も苛烈に反対して
いたのは一番南を行く第33師団の柳田中将だった。(p.93)
*宮崎連隊はただ1個だけ、インパール作戦の最後の最後まで食料問題は起こらず、兵士
たちはただの一兵も餓死をしないで済んだ(p.124)
⇒現地人の協力が最も重要と理解し、食料の収奪等日本軍の行動を戒めた
*参謀本部とは、陸軍の作戦を立案する実務上のトップ =中略= 軍令部とは海軍の作戦を
立案する実務上のトップ =中略= トップの役職は、参謀総長、軍令部総長 (p.148)
*沖縄戦時の日本軍の指揮系統(p.176)
台湾方面軍(第10方面軍)-第32軍-第9(転出)・24・28・62師団-その他5個旅団
*美濃部率いる芙蓉部隊だけが、夜戦専門の航空部隊として特攻に頼らない独自の戦法を
考案した。(p.235)
『史伝 北条政子』 山本 みなみ(NHK出版新書 2022.5)
【満足度】★★
【概要・感想】 政治家としての北条政子に焦点を当てた1冊。同時代を生きた牧の方などにも触れ、鎌倉時代の女性についての考察もあります。政子を軸に書かれているため、ちょうど頼朝の挙兵直前から死去に至るまでと、大河ドラマとドンピシャの内容。
【ポイント】
*平安後期頃より、後家は次に家長への中継ぎとして亡き夫の持つ家長権を代行し、子どもたち
を監督する権限をもった。(p.33)
⇒忠盛の後家である池禅尼が清盛に、政子が頼家や実朝に意見し、政治に関われた
*中世では =中略= 夫を失った女性たちには再婚と、後家(夫の遺領相続)という二つの
選択肢があった(p.84 要約)
*実朝は、鎌倉殿就任と同時に征夷大将軍となった初例 =中略= 以後、これが通例化(p.126)
『指揮官たちの第二次大戦』 大木 毅(新潮選書 2022.5)
【満足度】★
【概要・感想】2021年に月刊誌で連載されたコラムに書き下ろしを加えて再構築した本。日本軍の他に各国含め12名の指揮官が登場します。一人につき20ページほど割いているのですが、なにぶんヨーロッパ戦線は、戦史も人物もさっぱり詳しくないため(世界の戦史を知ってる人には平易なのかも)、理解が追いつきませんでした。日本軍の南雲忠一大将、山口多聞中将、インパール作戦の相手だったスリム司令官の章は興味深かったです。
【ポイント】
*「水雷屋」南雲が、まったく畑違いの航空戦部隊の指揮官に任ぜられた(p.16)
⇒年功序列を原則とする海軍人事の硬直性が作用した
*「プリンス・オヴ・ウェールズ」のリーチ艦長のみならず、東洋艦隊司令長官である
フィリップ提督までも、死して責任を取ったという「神話」は、日本海軍の司令、司令官、
ついには司令長官を死に駆りたてた。(p.93)
⇒艦長が乗艦と沈むのが定法としても司令官や司令長官が自死をとげる必要はなかった。