読書日記 -5ページ目

読書日記

自分用の読書備忘録。
なので、よほどのことが無い限り画像とか一切無いです。
そしてアップはけっこう遅延しがち。

11月に読んだ本は5冊(図書館3冊・購入2冊)でした。
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<満足度> ★★★ オススメ  ★★ 面白い  ★ 収穫少なめ 

 

クリップ『会って、話すこと。』 田中泰延 (ダイヤモンド社 2021.9)

【満足度】★★
【概要・感想】 twitterの投稿がそのまま本になったような内容で、徹頭徹尾ふざけてて面白い。その中に本質っぽい話も隠れていますが、読後、何も残らなくてもそれはそれでアリ。会話術系のビジネス書とか思わず、楽しみながら読むのが吉です。個人的には好きな本。

【ポイント】
*「どうでもいいことを話す」(p.60)

 ⇒二人が向かい合うのをやめ、同じものを見て、確認し合う(共感)

*人の意見になにか言いたい時でも、意見の中身ではなく、「意見の述べ方」について考えた

 ならば、少しだけ賢くなれる。(p.87)

 ⇒関係ありそうな、なさそうなことを返すこと。
*あなたができる最も身近な社会貢献とは、よい言葉とよい笑顔である。(p.170)
*別に何かの役に立てようと知識や経験を仕入れるのではない。それが偶然、何年後か、

 何十年後かに他人と響き合ったときが「出会い」なのではないだろうか。(p.228)

 

メモ『全員を戦力にする人財育成術』 有本 均 (ダイヤモンド社 2020.4)

【満足度】★★
【概要・感想】 著者はマクドナルド24年間の勤務(最後はハンバーガー大学学長)を経て、46歳でユニクロ大学の部長職に転職、その後、独立したコンサルです。それら現場経験からの知見を学べます。例えば、マクドナルドでは「いつまでに、これができるように」という区切りがあり、確かにそれだと教える側も教えられる側もわかりやすい。著者の考案した「グローインサイクル」の「要求する」と「評価する」が機能すれば誰でもやるようになるという指摘はその通りですし、逆に、「評価されない」ことをしないのは当たり前という指摘もその通り(やって欲しいことは評価項目に入れるべき)。 SVがたまに来て店長の育成など不可能という指摘も鋭く、スタッフ職段階で、その店長がOJTにて店長教育をしておく、と。育成にあたっては評価者の評価教育が必要な点も同感です。

【ポイント】

*ゴール設定と同時に、「要求する」ことも育成のカギ(p.36)

 ⇒教えっぱなしではなく、教えたことを実践してもらう。やったら、評価もする。

   マクドナルドとユニクロは「要求する」ことを徹底している

 

クリップ『すべての組織は変えられる』 麻野耕司(PHPビジネス新書2015.9)

【満足度】★★
【概要・感想】 麻野氏がリンクアンドモチベーションの執行役員時代に書いた本。2019年に書いた「THE TEAM 5つの法則」が面白かったので本書に遡って読んでみました。2015年時点で、“戦略から人へ”という潮流があって、未だに解決が遅れている課題ですが、本書は組織をどう作るか?(主にヒトの面。リーダーシップのあり方)についてクローズアップしています。今読むと類書と同じですが、当時としては革新的だったのでは。

【ポイント】
*マネジメントの鉄則は「何が正しいか?」ではなく、「どうすればうまくいくか?」をつねに追求

 していく(p.115)

*リーダーの「自分流の押しつけ」は、人材育成で失敗するもっとも典型的な指導法 =中略=

 状況や相手に合わせた指導をする。(p.135)
 ⇒メッシがここを蹴るんだと何回か言えば誰でもできるようになるのか?

 

メモ『これからの会社員の課題図書』 田端 信太郎(SBクリエイティブ 2021.6)

【満足度】★
【概要・感想】 著者の田端氏はリクルート・ZOZO・LINEなどを渡り歩いてきた人物。インターネットはおやつ、本はごはん、という位置づけにはしっくりきましたw 仮に5分しか読書する時間がなくても、5分で読めるだけを当たりをつけて読み、それを元に自分の考えを構築せよ、って指摘はその通り過ぎますが、貧乏症でつい一言一句読みたくなる・・・。

 

本『「非モテ」からはじめる男性学』 西井 開(集英社新書 2021.7) 

【満足度】★
【概要・感想】 男性の「非モテ」についての社会学の本だったので、苦悩の内実が中心。モテない原因を探る本ではありません。なので、予想外に重い内容でしたが、例えばボランティアなど偶然辿りついた新しいコミュニティで普段と違った他者との関係性に遭遇する
ことで変わってくるものがあるって話は大事かなと思いました。

10月に読んだ本は4冊(図書館4冊)でした。
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<格付基準> ★★★ オススメ  ★★ 面白い  ★ 収穫少なめ 

 

本『ソニー再生』 平井 一夫(日経新聞出版 2021.7) 

【満足度】★★★
【概要・感想】 ソニーの元・社長で現・シニアアドバイザーの平井氏の著書。今年読んだ本の中でナンバー1候補。平井氏はCBSソニーとSCEを経て、ソニー本体の社長になったのですが、その経歴にとても興味が湧きました。幼少期から海外を行ったり来たりし、35歳でSCEAのCOOとなって経営再建。その後、本体のSCEに転身し、また経営再建。そこで結果を出し、ソニーの再建。(と言っても、いずれの再建シーンでも強力な相棒がいたことも覚えておきたい) 姿勢もひっくるめて、「異見」をと取り入れて順応する、これが経営再建成功の秘訣のひとつ。ルーツは別次元の人ですが、社長でありながら、カウンセラーか!ってくらいの足を使って現場の声を拾っていく手法は参考に。あと、やはり潔い引き際(=社長退任)ですね。何から何まで凄い。

【ポイント】
*部下による選挙が行われたとしよう。自分が当選する自信がありますか?(p.86)

*リーダーの資質として重要なのは「だったらサポートしましょうか」と、部下たちに思って

 もらうこと(p.134)

 

メモ『承久の乱』 本郷 和人(文春新書 2019.1) 

【満足度】★★
【概要・感想】 本郷氏による本書は大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の放送決定前に上梓されたものですが、その時点で、承久の乱という知名度低の渋い企画をよく通せたものだと感心しますw ただ、承久の乱自体は約40ページちょっとの記述で、そこに至るまでの経緯はやはり鎌倉幕府の成立からの話になってしまうようです。(そして、一連の終わりに承久の乱) 結果的に「鎌倉殿の13人」ど真ん中の内容ですので、予習復習にはもってこいです。
【ポイント】

*頼朝、頼家二代の将軍から実力者として重用された人物としては、梶原景時が挙げられます。

 そして、頼朝が最も信頼を寄せた一族は比企氏でした。(p.65)
*平賀氏こそ承久の乱の「影の主役」(p.110)

 ⇒平賀義信は義朝を知り、源氏の正統を担保する生き証人で、頼朝と共に納骨に立ち会えた

    数少ない御家人。頼朝は義信を比企氏に嫁がせ、生まれたのが朝雅。長男の惟義は伊賀

   の大内荘より家を創って大内惟義と名乗る。

   後鳥羽上皇がスカウトに成功した武士で、一番の大物が大内惟義
*歴史学の世界では、中世の日本を二つの大きな見方でみています。(p.147)

 ①権門体制 ②東国国家論
*後鳥羽上皇は、学問好きの実朝のために都の一流の知識人を家庭教師に(p.150)

 藤原定家

 源仲章・・・学問の師

*たまたま京都に来ている武士たちが朝廷軍として組織された、とみるほうが実情に

 近い(p.196)
 ⇒大番役でない武士は戦っていない可能性が高い。

   任国の武士に招集もかけず、統率もしていない。

*上皇と武士たちの身分が違い過ぎて、直接、会話を交わすことができなかった(p.199)

 ⇒大内惟義ですら日野資実経由。一方、幕府は「御恩」と「奉公」という一対一の契約。


メモ『指導力』 仁志 敏久(PHPビジネス新書 2021.6)

【満足度】★
【概要・感想】 今年から横浜DeNA二軍で指揮を執っている仁志の著書。ここ数年、サムライJAPANのコーチなども歴任していたので、どういったマネジメントをしてきたのかと期待していましたが、本書ではU-12での経験談が主で、子供の指導・しつけにフォーカスされている感じ(子育て論?)。ただ、しっかりした内容ですので高校野球までの指導者は参考になるかも。

【ポイント】
*必要以上に「集団の中の一人」と感じさせないように(p.195)
 ⇒一人くらいいいやとならないように、見ているよとメンバーに感じさせる

 

メモ『「あなたから買いたい」と言われる超★営業思考』 金沢景敏(ダイヤモンド社 2021.2)
【満足度】★
【概要・感想】 著者は早稲田→京大(しかもアメフト部)→TBS→プルデンシャル生命→独立という経歴。いわゆるモーレツ社員なので、このご時世、マネ出来る人は少ない気が。結論は富裕層にコネを持ち、紹介してもらうというオチでは・・・。とは言うものの、著者は挫折を経て考え出した経験談ではあるので目先の売上より信頼が大事、など参考になる部分もありました。

【ポイント】
*「自分は運がいい」と思うからこそ、「何かいいことはないかな?」と探すようになる。(p.301)

 ⇒「運が悪い」と思っていると落ちているお金にも、たまたまいる女優にも気付かない

9月に読んだ本は5冊(図書館本4冊・購入1冊)でした。
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<満足度> ★★★ オススメ  ★★ 面白い  ★ 収穫少なめ 

※以下、満足度順

 

メモ『職場の「感情」論』 相原 孝夫 (日経新聞出版 2021.3)

【満足度】★★★
【概要・感想】 コロナ禍の影響で、リモートワークをきっかけとした職場環境の変化が出てきました。そもそも心理的安全性が確保されている職場であれば問題ないとして、それが無い職場は信頼関係の欠如が露呈する状況も。マネジメントが難しくなる中、重要になってくるのは働いている人の「感情」と著者は言います。幸福感と仕事の進め方、という観点からのエンゲージメント論です。

【ポイント】
*リモートワーク中心の働き方になると、対面を前提とした人当たりの良さなどよりも、「言語化

 能力」こそが備えるべき重要な要素(p.30)

 ⇒メラビアンの法則によれば、視覚情報が55%、聴覚情報38%

*職場の同僚との関係は「マイクロムーブ」に左右される(p.77)

 メールの返信が遅れた、ランチに誘わなかったなど取るに足らない些細なことが関係に影響を

 及ぼす行動や態度(不安定な関係性だとネガティブに働きかねない)

 ⇒些細なことこそ職場の感情を左右する。この点を念頭に置き、些細なアクションを起こす
*旅行から帰って、良き思い出として記憶に残るのは、旅先で出会った人たちとの交流である

 ことが多いのではないだろうか。(p.115)

 ⇒孤独感を抱いている従業員は組織に対してのコミットメントが低い

*幸福は無数の小さな出来事の総和(p.155)

 ⇒大きな幸福な出来事は一過性のもの。高い給料や肩書よりも日々の貢献、同僚との会話

  によって左右される

*職場に必要なのは、ハイパフォーマーよりも、機嫌のいい人(p.161)
 ⇒ムードメーカーはメンバー間の距離を縮め、協力を促し、生産性を高めている面がある

*仕事の終わり方が重要(p.172)

 ⇒終わりよければすべて良し。最後の印象が良ければ全体の印象も良く思える

 「ツァイガルニク効果」⇒人は達成出来なかった事柄や中断している事柄に対して強い印象を

 持つ

*理想は「一緒に働く仲間のために頑張る職場」(p.265)
 

本『世界で一番やさしい会議の教科書 実践編』 榊巻 亮(日経BP社 2018.5) 

【満足度】★★★
【概要・感想】 贔屓のブロガーが薦めていたので読んでみたところ、かなり勉強になる1冊。会社人生でわりと時間を割いている会議のやり方を人から体系立てて教わることがないのは、考えてみればとてもおかしな話です。仕事の仕方は効率化!と言いながらも、その会議のリーダーの自己流もしくは野放しで進めていく実態の企業も多いのではw 会議のファシリテーションとは司会者のことではなく、ゴールを達成するために人の能力を最大限に引き出す技術です。その基本、応用、根付かせ方についてのノウハウが学べます。あとは基本動作を押さえた上で、結局それをやるかやらないか、だけです。

【ポイント】

*基本動作(p.18~)

 ①終了時に、決まったこととやるべきことを確認する

   担当者と期限をセットに。議論の流れをダイジェストする。決まっていないことも確認。

 ②開始時に、会議の終了条件を確認する

   人の状態(意思決定が出来る・○○が使える)・物理的なモノ(資料が完成)・合意

   (1つに決めた) 

   ex.共有や異論することが目的ではなく、課題を出しきった状態やコピー機が使える状態

 ③開始時に、時間配分を確認する

 ④会議中に、議論を可視化する

  決まったこととやるべきことを書く。問いや論点をはっきりと。 

 ⑤会議前に、準備する

  会議の終了条件・参加者・進め方や時間配分・結論を出すための必要な情報を揃える

 ⑥会議中に、全員から主張を引き出す

  発言に共感し、肯定する→具体的なイメージは?なぜそう思った?他に気になることは?

 ⑦会議中に、対話を促し合意形成する

  相手の経験や価値観を理解できて、対話が成立する(なぜそう思った?で引き出す)

 ⑧会議後に、振り返りをする

  ex.1人20秒で感じたことや良かったこと、悪かったことを話して下さい

*困っていることを素直に表明し、参加者を巻き込んで一緒に困ってみる。そして、一緒に

 解決策を探そうと提案する。(p.117)

 ⇒困りましたね。この先どうやって議論を進めましょう?

*議論に入る前に決め方を決める(p.169)

 投票・全会一致・社長の一存・基準に沿って評価して決める など

*会議は「x時10分開始」にする(p.183)

 

クリップ『変われ!東京  自由で、ゆるくて、閉じない都市』 隈研吾・清野由美(集英社新書 2020/7)
【満足度】★★
【概要・感想】 「新・ムラ論TOKYO」→「新・都市論TOKYO」と続いての3部作が本書です。前著は未読ですが、普通に楽しめます。本書はジャーナリストの清野氏との対談形式。シカゴ大火・リスボン地震を経て、ペストの流行で都市は現代の「オオバコモデル」に至ったとの歴史が興味深いです。そしてコロナ禍。大企業がオオバコの本社を縮小したり、地方に移転したりしているのも「オオバコモデル」からの脱却が始まっているのではないでしょうか。本書で取り上げられている隈建築はTHE・新国立競技場ではなく、吉祥寺「てっちゃん」というマイナーな建築中心。そこに今後の建築のあり方のヒントがありそうです。 

【ポイント】

*国立競技場では、「設計・施工一括(デザインビルド)」という枠組みの中で、ゼネコンの大成

 建設と、大手の梓設計と組んで僕は参加しています。(p.27 隈)
 ⇒ゼネコンが建築の意匠デザインも含めて、クライアントと一括契約するやり方。

   建築家がゼネコンの下で設計にあたる。

*小径木こそが日本の文化(p.130)

 ⇒小径木を媒介にして、山は日常生活の延長となり、都市と山が一体となり持続可能な環境

   システムをつくっていた。

*自分でリスクを負って建築に向き合いことが、建築と社会との新しい関係を作る。(p.226)
 ⇒美学的建築はデザインも研ぎ澄まされるが、社会のニーズとは切れて排他的になってしまう

 

メモ『組織が変わる』 宇田川 元一 (ダイヤモンド社 2021.4)
【満足度】★★
【概要・感想】 著者は埼玉大学の准教授。今、流行りの“1on1”ではなく、“2on2”とは組織における慢性疾患に医療のアプローチを応用する手法で、根治ではなく、症状を落ち着かせる状態を目指すことや、一生付き合っていく覚悟に認知を変えるというもの。それに有効なのはセルフケアのための対話。つまり、組織で起きているモヤモヤについて、自分と異なる解釈の枠組みを生きている他者からの断片的な視点を持ち寄って、みんなで理解をつくっていく。それを通じて、わかっていないことがわかってくる。そして打開策を見出す、という次第。一番、驚いた手法は「反転の問いかけ」という、あえてその状況を悪化させるにはどうしたらいいかを問うもの。なるほど、新しい意味合いが生まれてくるかも。
【ポイント】
*自分もその問題の一部であると気づく。(p.70)

 ⇒自分が認識している問題と、どう関わりがあるか発見する

*心理的安全性は結果的に高まるもの(p.80)
 ⇒何でも言いあえるようにすることにフォーカスし過ぎ。 

    なぜ言いたいことが言えないのかを考える。

*「なぜ?」と問わない(p.129)

 ⇒「どんなときに?」「いつ頃から?」「」どんなきっかけで?」

   なぜモチベーションが低いのか、ではなく、どんなときにモチベーションが低いのか

*新しい物事の理解を導き出すには、少し違う言葉の投げかけをする(p.218)

*人が問題なのではなく、問題が問題(p.247)

 ⇒なぜ、その行動を取ったのか?自分たちに出来ることはなかったのか?を掘り下げる

 

本『江戸式マーケ』 川上 徹也 (文藝春秋 2021.6)

【満足度】★
【概要・感想】 目のつけどころは面白いと思い、読んでみましたが、ビジネス書としても歴史エンタメ本としても薄い内容。ビジネス書や歴史に興味の薄い人には読みやすいのかも? 取り上げられている商売人は三井家の始祖・三井高利、大丸創業者・下村正啓、河村瑞賢、山本山の山本嘉兵衛、にんべんの高津伊兵衛、肥前佐賀藩主・鍋島直正、そして伊能忠敬など。成功しているのは、絵に描いた商売人のタイプですが、「先義後利」「社会問題の解決」は現代においても普遍的なキーワードです。

8月に読んだ本は7冊(図書館6冊・購入1冊)でした。
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<満足度> ★★★ オススメ  ★★ 面白い  ★ 収穫少なめ  

※以下、満足度順

 

本『源氏将軍断絶』 坂井孝一(PHP新書 2021.1) 
【満足度】★★★
【概要・感想】  来年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の時代考証の坂井氏の著書。源氏将軍の誕生という観点から頼朝を取り上げ、次に頼家、そして北条氏に擁立された実朝と、鎌倉幕府の3代将軍について書かれています。その昔は頼家、実朝の政治家としての評価は低かったと思いますが、近年は変わってきたとのこと。また、実朝の暗殺により源氏の将軍が途絶えたあとも鎌倉幕府の将軍は続いていたのも意外と知りませんでした。さて、実朝がそのまま生きていたらどうなったのでしょうか。

【ポイント】
*十三人が一堂に介して合議したという資料は一件もない。(p.109)

*実朝は、和田義盛や朝盛と個人的に親しい関係にあった。しかし、御家人たち全体の主君である将軍

 という立場に立てば、=中略= 将軍親裁をともに推進してきた義時と一体となり、和田勢を倒さなく

 てはならなかったのである。(p.194)

 ⇒和田氏は義時ら北条氏にとって強力なライバル
*和田合戦は将軍御所が焼け落ち、千数百人もの死傷者を出した激戦だった(p.195)
 ⇒義時が実朝を補佐する形から両者が互いに補完・協調しつつ幕府を発展させる関係への転機

*出家数の多さは、=中略= 実朝が、いかに御家人たちから慕われていたか、いかに大きな存在で

 あったかということを客観的に示す証拠(p.292)

*平家都落ちの直後「三種の神器」なくして践祚し、壇ノ浦で宝剣を失った後鳥羽は、常に天皇としての

 正統性にコンプレックスを抱いていた。そこで、多方面にわたる抜群の才能によって自らの正当性を

 証明し続けていた。(p.296)
*後鳥羽が目指したのは討幕ではなく、あくまで義時追討(p.297)

 ⇒幕府本体の軍事力を実朝を通じて支配下に置きたかった。義時が意に沿わないことが明らかに。

 

本『気持ちよく「はい」がもらえる会話力』 谷原 誠(文響社 2017.12) 

【満足度】★★
【概要・感想】  弁護士の谷原氏の著書。交渉系の本は谷原氏の著書が一番しっくりきます。すでに既刊本を読んでいるため目新しい知見はありませんでしたが、それでも復習には十分。テクニックを使えば、すぐイエスが引き出せる、という内容ではないあたりが親切です。本当に解決すべき課題について交渉しているか?であったり、目先のイエスではなく、別の解決策も考慮するといった、百戦錬磨の弁護士ならでは。イエスという権利は100%相手が持っている以上、相手の感情に十分、配慮して交渉をまとめる、その極意が学べます。

【ポイント】
*企画を必ず通す方法(p.136)
 両者の関係を「企画を通す側」と「拒絶する側」の対立関係ではなく、「それに協力する人」の関係にする

 ⇒ノーと言われたら、どう改善すればいいのか詳しく聞かせてもらえないか?と理由を質問する

*ラべリングによって人を動かす(p.155)
 ex.期限に遅れたことがあったとしても、「いつも期限内に仕上げてくれて助かる」と言う=ラベリング

*行動をかえてもらうことが目的なのであれば、=中略= 相手の自尊心に配慮する(p.184)

 ①相手の今までの行動を肯定する。 (みんな挨拶は出来ている)

 ②相手が悪いからではなく別の理由で変化を依頼  (課の方針で強化することになった)

 ③変化後の行動を称賛する。     (強化したら、社内の雰囲気がよくなったから、このままでいこう)

*「私の力ではとてもできないから助けて欲しい」「あなたにしかできない」という言葉は、言われた人の

 自尊心を大いに満足させます。(p.189)
*相手に聞く耳を持ってもらうためには、まず相手が言いたいことを全て言い切った状態にすることが

 重要(p.194)

 ⇒言いたいことを言いきって気が済めば、聞いてあげようかと余裕がでてくる。よく質問する。

*反論せずに反論する(p.201)

 相手の意見をひとまず認め、「だからこそ良い」という形で展開する。

 ex.デザインが派手→だからこそよい、きらびやかなものを身につければ見た目も若くなる

*論理的にイエスを引き出す方法(p.216)

 ①そもそも○○に同意するか?(価値観:○○すべきだよね?)

 ②ところで○○に同意するか?(自分の事情:私はこうしているけど)

 ③だとすると○○ではないか?(①と②に同意するなら、③じゃない?)
*一貫性の法則を利用し、あるルールを守って欲しいなら、「○○してもらえますか?」と聞き、イエスと

 言わせる(p.243)

 ⇒○○してくださいね、ではなく。

 

本『建築家になりたい君へ』 隈 研吾(河出書房新社 2021.2)
【満足度】★★
【概要・感想】  最近、立て続けに本を出している隈研吾氏。本書は「14歳の世渡り術」シリーズですが、特に子供向けというわけでもなさそう。「ひとの住処 1964-2020」や「変われ!東京」に同じく、本書も自叙伝です。学生時代のアフリカ旅行・アメリカ留学・伊豆の家・石の美術館・竹の家のエピソードなどが語られていました。新国立競技場で知名度が上がった隈研さんですが、大成建設と一緒にやった「アオーレ長岡」の評判がよく、新国立競技場の建築デザインの話が舞い込んだらしいです。今後、コンクリートや鉄に代表される「大きなハコ」は解体し、「小ささ」の先に新しい日本、新しい建築があります、との主張でしたが、実際、社会全体でちょっとづつ、そんな流れも出てきていますよね。

【ポイント】
*デザインの後ろには、必ず社会や政治の複雑な情勢が控えている(p.68)

 ex.白い壁(=衛生を重要視する背景) ・整然計画された都市(=不潔な街はペストの温床)

*建築設計の授業では、過去の正解と同じものを提出した人間は、人マネしかできない、能力のない

 人間として、最低の評価をもらう(p.85)
 ⇒過去の正解を否定する勇気

*設計の仕事(p.104)

 ①基本設計(間取りを決める) ②実施設計(詳細な図面・材料・ディテール・構造設計や環境設計) 

 ③現場監理(工事が図面通りに行われているかチェック)

*建築“家”(p.137要約)
 建築設計者というと施主の言うことを素直に聞いて、それを形にするエンジニア。大手設計事務所や、

 建設会社の設計部に勤めている人は自分のことを建築家と言わない

*建築家と呼ばれる人は、オーケストラで言えば指揮者のようなもので、全体をリードするのが役割

 (p.164)

 ⇒その下に意匠設計・構造設計・環境設計(どういう環境システムが最適か決定する)というチーム

*1990年代までは、=中略= 必ず誰かの紹介という形をとって、設計を依頼されました。(p.194)

 ⇒信用のある紹介者。岸田氏の弟子は気に入られるために日本舞踊を練習した。
*僕と職人さんで直接、膝をつき合わせて話すと、材料の新しい使い方を思いついたり、今までに

 なかったような解決方法を見つけることができます。(p.202)

 ⇒ゼネコンはスケジュールとコストを自分ですべてコントロールしたいので、設計者と職人の直接の

   対話を嫌う

*公共建築の場合、設計者を選定するためのコンペの際に、「類似の建築物の実績」という項目の

 提出が求められ、実績があればあるほど高い点数が付く仕組みになっています。(p.209)
 ⇒コンペという形は取るけど、馴染みの大手設計事務所と仕事したいという行政の下心

 

本『陰翳礼讃』 谷崎 潤一郎 (パイインターナショナル  2018.1) 
【満足度】★★
【概要・感想】 谷崎の「陰翳礼讃」の全文を写真家の大川裕弘の作品とともに掲載。読みにくいのかと思ったら、エッセイなのでとても読みやすい。文章として読むと、「薄暗さの中の美」は本当によくわかります。暗い光なのに「昼光色」の電球を使ってみたり、間接照明を好んだり、そういった傾向も日本人としての美意識のルーツからきているのかもしれません。


メモ『改訂版!人生で大切なことはみんなマクドナルドで教わった』 鴨頭 嘉人(かも出版 2021.1) 

【満足度】★★
【概要・感想】  著者は元マクドナルドのアルバイトで、社員登用後、店長、SVになり、その後、独立起業したYouTube講演家(?)。 2012年に出版した著書の改訂版です。経営者が語るマクドではなく、アルバイト=現場目線から語られる会社の話は興味深く、面白かったです。ただ、現在、経営者になっているほどの著者なので、そもそもの資質は全然、普通の人ではなく、その日常はいちいちドラマティック。20数年前のマクドに入社したエピソードから退職に至るまで語られていて、読み物として読むのが良いのかなと。

【ポイント】
*仕事を任せるときに、“その仕事の価値を伝える”ことで、責任はモチベーションへと変換される(p.116)

*共有すべきはアクションではなく、目的とゴール(p.123)

 ⇒自分の作業指示と、マクドナルド体験を良いものにすることを同時にクリアできる提案を。
*部下の声にならない声を聴けるようにならんと、上司はお払い箱(p.285)

 ⇒部下をよく観察して、洞察力を働かせ、小さな変化を見逃さない

 

メモ『考え続ける力』 石川 善樹(ちくま新書  2020.5)

【満足度】★★
【概要・感想】 前著「問い続ける力」の続編で、創造的に考えるとはなにか?がコンセプト。異なる分野で創造性を発揮している日本人を条件に、元パナソニックの技術者、日立の技術者、ヤフーのCSO安宅和氏など5名と対談集。
【ポイント】
*「幅広い知識や経験を備えたシニア」と、「カッティングエッジな知識を持つ若手」の組み合わせこそが、

 最も破壊的なイノベーションを起こしやすい。(p.40 永山・法政大准教授)

*「思考とは何か?」というような茫然とした問題は、小さく分けて考える。(p.63 石川)
 ex.思考とは入力を出力につなげること。

 

クリップ『人と組織のマネジメントバイアス』 曽和利光, 伊達洋駆 (ソシム 2020.4)

【満足度】★
【概要・感想】 「物理学を知らないエンジニアはいないが、組織論や行動科学を知らない人事やマネージャーはたくさんいる」という序文には期待大だったのですが、各見出しがわかりにくいことでとても読みにくい内容になっている気が。働き方改革は社員のやる気を引き出すか?といった実務上に見られる一般的に良しとされる、人と組織の常識が本当に正しいのかを学術的な切り口で考察していて、その点は面白かったと思います。

【ポイント】
*ブランドハップンスタンス理論(p.19)
 個人のキャリアの8割は予想もしていなかった出来ごとによって決定されるから、偶発性を受け入れる

*上司との関係性が良好だと部下は自らフィードバックを求める傾向がある(p.108)

*会社は、組織の愛着や一体感を高める施策よりも、まずは社員たちが働きやすい環境を整備し、仕事

 そのものを面白く感じられるようにするほうがいい。(p.208)
*ワークエンゲージメントを高めるには、個々人の差異に応じて、人事施策やサポートを変えていくことが

 重要(p.243)

 ⇒ふだんから周囲と会話を交わして、個々人の価値観や志向性を押さえ、その上で適切な仕事や

   支援が求められる。(人によって捉え方が変わる)

 ◆ワークエンゲージメント・・・働く個人と仕事の関係→仕事そのものを面白く感じる状態

 ◆従業員エンゲージメント・・・働く個人と会社の関係

7月に読んだ本は4冊(図書館4冊)でした。
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<満足度> ★★★ オススメ  ★★ 面白い  ★ 収穫少なめ 

 

メモ『0から学ぶ「日本史」講義 戦国・江戸篇』 出口 治明 (文藝春秋 2020.10)
【満足度】★★★
【概要・感想】 0から学ぶ「日本史」講義シリーズの近代篇。本書の範囲は室町幕府の終焉から徳川幕府の終焉まで。日本史の中でも他の時代に比べ平和で落ち着いた時代だったとされる江戸時代ですが、出口さんいわく、数字・ファクト・ロジックから見れば、江戸時代が日本史上最低の時代だったとのこと。確かに飢饉や年貢による貧困は聞きますもんね。政治だけではなく、江戸期の○○文化といったことにも章を設けたり、世界史から俯瞰したり、また意外な人物にフォーカスしたり、とにかく切り口が多彩です。徳川幕府で一番将軍職が長かったのは11代将軍の家斉で50年だそうです。知らなかった!
【ポイント】

*はじめに(p.8)

 古代と中世 1068年 後三条天皇即位(藤原氏を母に持たない天皇)

 中世と近世 1568年 織田信長の上洛

 近世      1668年 明治維新

*大内氏は、明との交易を右手に、また世界的な石見銀山を左手に(p.23)
*公卿とは、参議、官位三位以上の、朝廷の政治に参画できる高級官僚(p.53)
*今川氏は京都勤務を免除されていました。(p.56)

 ⇒関東公方が攻めてこないように、警備役として置いておいた。そのため、下剋上が起きず大大名に。

*勘定奉行だけはプロパーからの実力登用が時々行われ、荻原は、平社員から叩き上げでトップの奉行

 まで上り詰めた(p.178)
*それぞれの天下は、織田信長十五年、豊臣秀吉十六年、徳川家康十八年。(p.350)

 ⇒清盛が太政大臣になって没するのが15年、頼朝が平氏を滅亡させてから没するまでが15年。


本『陰謀の日本中世史』 呉座 勇一 (角川新書 2018.3)

【満足度】★★
【概要・感想】 保元・平治の乱、義経の謀反、鎌倉幕府の歴史、応仁の乱、そして本能寺の変、関ヶ原の合戦などを取り上げ、“陰謀論”を最新学説で徹底論破しています。龍馬の暗殺にしてもそうですが、陰謀論自体は想像が膨らむのでいいとして、どこまでが史実か切り分けて楽しまないとそれに取り憑かれてしまいますよね。

【ポイント】
*保元の乱は、王家と摂関家における家督争い(p.15)

 ⇒家督争い自体は珍しくないが、武力を伴った点が画期的
*平治の乱は、大きく二段階に分かれる。(p.28)

 ⇒藤原信頼・源義朝らによるクーデターと平清盛によるクーデター政権の打倒
*頼朝は以仁王の呼びかけに応じたというより、以仁王・源頼政が敗死した後、平清盛が諸国の

 源氏への監視を強めた結果、むざむざと討たれるよりはと半ば自暴自棄の形で挙兵した(p.67)

*承久の乱で後鳥羽上皇が鎌倉幕府に敗れて以降、幕府が事実上の次期天皇決定権を握っており、

 後醍醐が息子に譲位するには幕府を打倒するしかなかった。(p.132)
*足利氏は源氏の名門だから幕府内で重んじられたのではなく、北条氏の姻戚であるからこそ北条氏

 中心の幕府において厚遇された(p.145)

*義政を含め、代々の将軍は室町幕府政所執事の伊勢氏のもとで養育されており、義尚が将軍候補者

 として遇されたことは明白(p.181)

*秀次と親密だった大名は秀吉の不興を買い、窮地に立たされたが、その多くは徳川家康の取りなしに

 よって救われている。(p.274)

 ⇒関ヶ原では東軍に。秀吉が秀次を葬ったことが結果的に家康の利に。

 

本『関西人はなぜ阪急を別格だと思うのか』 伊原 薫( 交通新聞社新書  2020.8)

【満足度】★★
【概要・感想】 著書は鉄道ライター。阪急グループ創業者の小林一三氏は鉄道を、人を運ぶ手段ではなく、郊外住宅や都市を発達させ、人々の生活を豊かにする手段として考え、住宅開発、宝塚歌劇、阪急百貨店の事業を興しました。百貨店では阪神・大丸より、鉄道では他の私鉄より、なぜかちょっと高級感のあるイメージです。三番街や歩く歩道からいろいろなネタはありますが、主に鉄道に紙幅が割かれています。本書の最後には、阪急の新線(なにわ筋連絡線・神戸地下鉄への乗り入れ・大阪空港連絡線)の話もありました。また、箕面動物園・香櫨園遊園地など阪急沿線の過去の遺構なども紹介されており、知らないことも多かったです。阪急電鉄を知るには最適。

【ポイント】
*建築限界と車両限界は全線で統一されている。(p.118)
 ⇒自社建設の神戸線と新京阪が建設の京都線では基準が違う。京とれいんは神戸線を走れない。

 

本『同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか』 鴻上 尚史(講談社現代新書  2020.8)

【満足度】★★
【概要・感想】  佐藤氏は「世間」の問題を追求する「世間学」の評論家とのこと。まさにコロナ禍で世の中が荒んできた緊急事態宣言下の20年5月の対談になります。大なり小なりどこの集団や組織に属していても「世間」とか「同調圧力」というものは感じますが、それはどこから来ているのか、それに立ち向かう方法はあるのか、特にネットが普及し、一億総批判社会になり、批判している人達とはなんなのか。そういったことを考えてみるきっかけになる本です。

【ポイント】
*日本においては、「世間」と「社会」の違いこそが、ありとあらゆるものの原理となっている(p.31 佐藤)

 世間:自分に関係ある人たちだけ(会社・学校・隣近所)で形成される世界

 社会:自分とまったく関係のない人たちによってつくられた世界

*「世間」の本質とは、その暗黙のルールに従いなさい、みんなと同じことをしなさい、という同調圧力の

 こと(p.56 鴻上)
*「社会」に属する人と会話する。(p.94)

 ⇒知らない誰かと楽しく会話できるスキルが身につくと、ずいぶん生活は楽になる
 ⇒外国は知らない人でも挨拶する。あなたの敵ではありません。

6月に読んだ本は5冊(図書館5冊)でした。
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<満足度> ★★★ オススメ  ★★ 面白い  ★ 収穫少なめ 

本『美術展の不都合な真実』 古賀 太( 新潮新書 2020.5)

【満足度】★★★
【概要・感想】 著者は国際交流基金を経て、朝日新聞の文化事業部・文化部記者の経験もあり、企画展の表と裏を知り尽くした人物。美術展の暴露本的な内容ではなく、舞台裏といった方が正確かも?日本の美術館は所蔵品(常設展)を見るのではなく、内外から集めた作品を見る企画展として認知されており、世界的には特殊なようです。実際、有名企画展の大行列を見れば一大イベントですし、日本の展覧会は世界的に見ても1日当たりの入場者数が多いとのこと。イベントとしての企画展になっているので、新聞社やテレビ局が企画するのもわかる気が。海外の美術品の貸し借りなど、お金の切り口から、見えてくる話が大変興味深いです。
【ポイント】
*国立館では学芸員を研究員と呼ぶ。(p.40)
*協賛社は主催と違い、お金は出すが儲けを分配することはない。=中略= 「後援」というのは、お金も

 出さないし、特に協力もしない。(p.115)

 ⇒「後援」は「○○大使館」や「文化庁」などだが、一種の権威づけに近い

*学芸員は専門職であり、一番の仕事は「博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究」(p.138)
 ⇒最大の仕事は収蔵するコレクションの形成と保存、展示で、展覧会の企画は補足的な仕事。

 

メモ『0から学ぶ「日本史」講義 中世篇』 出口 治明 (文藝春秋 2019.6)
【満足度】★★★
【概要・感想】 0から学ぶ「日本史」講義シリーズの中世篇で平安~室町までになります。日本史に詳しくなると一番、面白いのは幕末でも戦国でもなく、中世かもしれません。中世は摂関政治が終わり、武士の台頭の時代という日本の大きな転換点です。藤原氏や源氏や平氏、北条氏など登場人物が同じような名前が出てき過ぎて訳分かりませんが、大河ドラマの配役と重ね合わせれば、ちょっとはイメージしやすいかも。22年の大河は「鎌倉殿の13人」なので、引き続き予習しておきたいものです。
【ポイント】
*唐宋革命の日本への影響の中で一番大きいのは、禅と浄土教(p.15)
*鎌倉幕府の骨格といわれるものは、全部清盛が作っている(p.82)

*「鎌倉幕府」(p.108)

 鎌倉幕府の名称が使われるようになるのは明治20年代以降。「関東」と呼ばれていた。

*鎌倉幕府が東日本を見る、六波羅探題が西日本を見て、朝廷も見張る(p.121)

*足利幕府は、日本を東西に分けて統治する政権構造(p.242)

 関東は鎌倉公方。その執事とお目付けにおいて家臣の上杉氏を「関東管領」の職に。
*守護が「守護大名」化した経緯(p.292)

 将軍に任命された県警本部長である守護が、任地の町村長を部下にして、いつの間にか県知事にも

 なってしまった、さらに「戦国大名」になると将軍の権威でなく、大名自身の自力支配の独立国家に。

 

本『「繊細さん」の本』 武田 友紀 (飛鳥新社 2018.8)
【満足度】★★★
【概要・感想】いわゆる敏感すぎる人のことを心理学でHSPというらしく、著者自身もHSPとのこと。少しの音や光なども含め、感じる力が強く、小さなことに気づきやすいのは、脳の神経システムに違いがあるようです。繊細さんでも繊細さんでなくても、繊細さんへの理解を深めるために是非一読を。

【ポイント】
*繊細さんが身につけるべきは、気づかないよう自分を作り変えることではなく、「気づいたことに対する

 対処の仕方」(p.46)
*疲れたということは、自分に負荷をかけてがんばったということ。(p.85)
*人間関係の基本構造とは、「表に出している自分」に合う人が集まってくる、というシンプルな事実(p.96)

*あたたかい人間関係を作るには、苦手な相手をきちんと嫌って遠ざけることが必要です。(p.110)
*モノを置いて相手との境界線にする(p.120)

 ペンやグラスでも何でもOK。相手からできるだけ体を離す

*自分がいいなと思う場所には、似た感性の人が集まります。(p.138)

*やりたいことが、「眠りたい」「休みたい」でもいいのです。=中略= やりたいことをやると、心身に

 エネルギーが溜まります。エネルギーが溜まれば、自然と何かしたくなります。本当にやりたいことへ、

 スムーズにむかえるようになる(p.227)

 

メモ『2020年6月30日にまたここで会おう』 瀧本 哲史 (星海社新書 2020.4)
【満足度】★★
【概要・感想】星海社の“軍事顧問”として数冊、出版した瀧本氏でしたが、まさか20年6月を待たずして、47歳の若さで亡くなってしまうとは・・・。過去の著書には共感しかなかったのですが、ずいぶん前に読んだので、けっこう忘れていました。本書は東大での講義録で、主張はずっと同じ。吉田松陰のように「諸君、狂いたまえ!」と若者を扇動しているw   若者じゃなくても、カリスマに頼るよりも自燈明で行動していくのがこれからの時代です。

【ポイント】
*「教養の役割とは、他の見方・考え方があり得ることを示すことである」(p.30 哲学者アラン・ブルーム)
 ⇒学問は答えを知ることではなく、先人たちの思考や研究を通して、「新しい視点」を得ること

*パラダイムシフトとは世代交代(p.66)

 ⇒天動説から地動説に変わったのは論破や説得ではなく、天動説の人が死に少数派になった
*ダメな交渉は「僕がかわいそう」(p.82)

 ⇒あなたが得をするからこうすべきだ

*交渉は「言ったもん勝ち」ではなく、「聞いたもん勝ち」(p.118)
 ⇒相手が何を重視しているかを分析し、「これはどうですか?」と提案する

 

メモ『スゴい!行動経済学』 橋本 之克(総合法令出版  2020.1) 

【満足度】★★
【概要・感想】心理学×経済学の学問が行動経済学です。最近の知見をアップデートする意味で読んでみました。バイアス系の用語がたくさん出ますが、橋本氏の本は身近な例と結び付けて解説してくれているのでわかりやすい。また、「ナッジ」という用語は今回初めて知りましたが、これに則った具体的な手法は最近の人材マネジメントでよく見かけます。実際、自分の性にも合っていますし、具体策を考え仕事で試すのも楽しいです。

【ポイント】
*ナッジ(p.16)

 強制や命令をすることなく、暗に良い行動を示す ex.便器のハエの絵など
*解釈レベル理論(p.92)

 心理的距離が遠い対象に対しては、より抽象的・本質的・特徴的な点に注目して解釈し、近い対象

 には、より副次的・具体的・表面的・瑣末的な点に注目する

*リバタリアンパターナリズム(p.191)

 権力的強制に頼らず、人々の選択の自由を狭めることなく、人々に有益な行動を促す(もしくは、有害

 な行動を止める)

5月に読んだ本は4冊(図書館2冊・購入2冊)でした。
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<満足度> ★★★ オススメ  ★★ 面白い  ★ 収穫少なめ 

 

クリップ『ひとの住処―1964-2020―』 隈研吾(新潮新書2020.2)
【満足度】★★★
【概要・感想】 建築家・隈研吾の自伝。幼少期の出来事から国立競技場設計までを振り返っています。
特に大学時代、原広司に師事したことや、丹下健三や他の建築家をどう評価しているかなど、これまで聞いたことがなかったため、興味深い内容でした。
【メモ】
*建築家に必要なのは、=中略= その建築に人々が何を求めているか、社会がその建築に何を必要と

 しているかを理解する能力である。(p.50)
*実存する建築以上に大事なものが、その向こう側にある(p.63)
 ⇒伊勢神宮のまわりの森・代々木競技場の隙間の富士山・平和記念資料館の原爆ドーム

*建築というものは、設計図を描く日々から工事が終わるまでの何年かを、そこに関わる人達と一緒に

 走り、作り、語りあったことの結果なのである。結果というよりは、そのプロセス、その何年間の時間

 そのものが、建築なのだといってもいい。その時間の充実がいい建築を作る。(p.144)


クリップ『経営戦略を問いなおす』 三品 和広(ちくま新書2006.9)
【満足度】★★
【概要・感想】 2006年に刊行された名著です。いまだに本屋の棚に残っていますもんね。三品先生は授業が絶対面白いタイプの教授です。“戦略”というカッコいい響き?に騙されないようにと、戦略とは何か?について語った本ですが、抽象的な内容で少しわかりづらかったというのが本音。

【メモ】
*長期利益の安定成長を図ることが本当の戦略(p.33)
 ⇒いつでも、誰でも、思い立った時に立てられるものは短期の戦術

*戦略の真髄は、見えないコンテクストの変化、すなわち「機」を読む心眼にある(p.55)
 ⇒「バカな」と「なるほど」
 

本『人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか?』 山本 一成(ダイヤモンド社 2017.5)
【満足度】★★
【概要・感想】 人工知能について平易(一応・・・)に書かれた本。ですが、2017年時点の話なので、今のAIはもっと進化しているはず。AIの学習パターンには機械学習というコンピュータ自身が自分で値を調整する方法があり、それによって進化したとのこと。ちなみに、そのひとつがディープラーニング(深層学習)と呼ばれるもの。もうひとつは強化学習。人間の手を超えて、暴走するAIという事象がありそうなのもよくわかりました。70ページくらいあった巻末付録の囲碁のくだりはよくわからず。。。
【メモ】
*「簡単な計算」と「記憶」。 (p.17)

 コンピュータは基本的にこの2つ以外のことはできない。

*私たちは、「歩くこと」も「しゃべること」もある意味ほとんどわかっていないのです。(p.34)
 ⇒二足歩行ロボットに教える場合、腕の上げ具合、腰の確度を細かく説明できないとダメ

 

本『リーダーの仮面』 安藤 広大(ダイヤモンド社 2020.11)
【満足度】★
【概要・感想】 昨今のリーダーシップ本とは逆行する「個人の感情を消して、粛々とマネジメントをする」という内容です。例えば、「できていない事実だけ指摘し、その上でどうするかを問う」などの個人的には学ぶべき点もありましたが、このようなチームでは働きたくないですよねw 部下のモチベーションには一切関知しないスタンスですが、一方で感情のある人間に対して果たしてそれで生産性が上がるものなのか疑問が残ります。著者は40代ですから、上の世代の厳し目マネジメントが後々、効いた経験から、この内容なのではないかと思ったり。今やマネジメント手法はもっと進化しているとも思いますが・・・。
【メモ】
*認識の齟齬によって発生するエラーは、上司であるリーダーの責任(p.93)

 ⇒誰が何をするのか、ルールをハッキリさせる
*先に「集団の利益アップ」があり、そのあとに「個人の利益アップ」がある。(p.160)

 ⇒集団に利益アップのために貢献出来ているかどうか考える

4月に読んだ本は4冊(図書館3冊・購入1冊)でした。
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<満足度> ★★★ オススメ  ★★ 面白い  ★ 収穫少なめ 

本『0から学ぶ「日本史」講義 古代篇』 出口治明(文藝春秋 2018.2)
【満足度】★★★
【概要・感想】 出口さんといえば世界史に詳しい人とばかり思っていたのですが、これほどまでにわかりやすい日本史の本はありません! 本書では古代篇と題して、地球の誕生(!?)から平安時代までを解説しています。天智・天武・持統、藤原氏など人物の関係性や時代背景の説明が上手いので、それぞれの繋がりがとても判りやすいです。単なる歴史用語の解説ではなく、歴史の流れとして理解しやすいため、受験勉強にも使えます。

 

クリップ『「具体⇄抽象」トレーニング』 細谷 功(PHPビジネス新書2020.3)
【満足度】★★
【概要・感想】 「具体と抽象」の著者細谷氏の最新作。予想通り、他の著書とほぼ同じ内容でしたが、具体と抽象の往復運動には“考える”というプロセスが必ず入るので、頭を使う→頭が良くなりそうと、つい読んでしまいますw 本書でひとつなるほどと思ったのは、 「具体的でわかりにくい。もっと抽象的に」という引用がありましたが、例えば、時は金なり を具体的に言うと、1時間は10万なり、みたいなことになりますが、これは「抽象的=わかりにくい」「具体的=わかりやすい」わけではないことを示しています。コミュニケーションギャップについても同じこと(バイアスとも言う)が言えて、その解説が一番腑に落ちました。物事の見方・切り取り方は本当に人によって違いますよね。本質を見よ、と言われて本質が見られるようになる人はいない、とは実に本質を突いていますw

【ポイント】
*抽象化するとは事象の関係性を見ることであり、そのためには事象そのものから離れてそれらを客観

 視する必要があります。(p.74)

 ⇒個別の事象の全体を見て、因果関係・相関関係・構造を見つける(=思索)
*抽象化とは、目的に合わせてざっくり分けてしまい、複数の事象をまとめて扱う。その代わり個別の

 特殊性を無視する。(p.96)

 ⇒抽象化とは「一言で表現すること」

*具体的にするというのは、=中略= 「固有名詞」と「数字」に落とし込むこと(p.126)

 ⇒具体化とは問題解決の後半、要は実際のアクションを通じた実行段階なので。

*コミュニケーションギャップの根本原因(p.152)

 横:一人ひとりの経験や知識、思考回路が異なることにより、違うもの(範囲や程度)を見ている

 縦:総論賛成各論反対(抽象化したサンプルや取り出し方)⇒○○を公平に。具体案が自分に不公平

*顧客の抽象度の高いニーズをつかんだら、あとは(具体的の手段は)勝手にベストなものを提供する

 のが仕事の真髄(p.199)
 ⇒「プロの仕事」とは顧客の抽象的依頼に幅広い具体的な業務知識をもってベストな着地点を示す

 ⇒美味しいパスタを食べたい顧客に「何分ゆでるか?」「太さは?」などと聞くのは野暮

*「具体化や抽象化ができるかどうか」ではなくて、そもそも「具体と抽象という視点を持てるかどうか」

 (p.266)

 ⇒どういう条件の下で、どういう目的で、言葉を使っているのか確認する

*抽象レベルでものごとをとらえている人にとっては、=中略= 「全て同じ構造」だと見抜いてしまえば、

 「またあの話か」となる(p.272)

 

本『暗殺の幕末維新史』 一坂太郎(中央公論新社 2020.1)
【満足度】★★
【概要・感想】  一番、有名と思われる坂本龍馬暗殺とか個別の事件では知っていても、暗殺された人物たちだけにクローズアップして幕末を見てみると新鮮です。今更ながら、幕末はとにかく大物が何人も殺されています。そもそも幕末の京都が無法化したのは、治安を担当する町奉行所が逆恨みを恐れ、捜査に本腰をいれなかったからで、「死骸の片づけ役所」とも言われていたそうです。確かそれで京都守護職が設置されたはず。 桜田門外の変、伊藤博文暗殺などはもちろん、ちょっとマイナーな吉田東洋暗殺、新選組の芹沢鴨・伊東甲子太郎暗殺、長州藩の世良修蔵暗殺、横井小楠暗殺、さらにマイナーな天誅第一号と言われる島田左近暗殺、公家に向けられた初めてのテロ・姉小路公知暗殺など取り上げていて、幕末の暗殺事件をほぼ網羅しています。余談ですが、大久保利通暗殺されたときの馬車が現存しているのは初めて知りました!(見てみたい)

 

メモ『ニトリの働き方』 似鳥 昭雄 (大和書房 2020.9)
【満足度】★
【概要・感想】 似鳥会長の著書と思いきや、2/3以上は自社社員の体験談で、新卒向けの会社案内を読まされているのか・・・。日経新聞の「私の履歴書」では、この社長、大丈夫か!?と思うほど、ニトリが大企業になるまでのプロセスがめちゃくちゃ面白かったのですが、本書は大企業になった今のニトリの働き方について知りたい方向け。

3月に読んだ本は3冊(図書館3冊)でした。
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<満足度> ★★★ オススメ  ★★ 面白い  ★ 収穫少なめ 

 

本『応仁悪童伝』 木下 昌輝(角川春樹事務所 2021.1)
【満足度】★★
【概要・感想】 「応仁の乱」を題材にした時代小説。主人公は熒と一若の少年二人ということになるのでしょうか。(熒は最初、少女と思って読んでいた・・・) 稚児灌頂など若干、ドロついてはいますが、日本史で応仁の乱を勉強するより、本書の方が当時の文化も含めてイメージしやすいですね。


メモ『築地本願寺の経営学』 安永 雄彦 (東洋経済新報社  2020.11) 

【満足度】★
【概要・感想】 旧・三和銀行出身でコンサル会社の経営を経て僧侶になった異色の著者。400年の歴史を持つ築地本願寺という老舗寺院をどのようにリブランディングして、その伝統を活かしながら変わろうとしているのか、その改革を紹介。お寺×経営という馴染みのない組み合わせに魅かれて読んでみましたが、マーケティングの知見を持ち込んで成功したという話の繰り返し、そして本願寺の宣伝が微妙でした。終章の「なぜ仏教が必要なのか」の「一日一生」という法話は説得力があり、その章は集中して読めました。
【ポイント】
*「アウェー」に異分子として飛び込んで、相手と共通言語を持ったうえで、自分の信じる「より良い方法」
 を持ちこむ努力をしてきた(p.198)

*悔やんでも、過去に戻って生き直すことはかないません。 =中略= 明日以降のことは、どうなるか、

 誰にもわからないこと。私たちにわかっていて、私たちが影響を与えられるのは、「今日」だけ、「今」

 だけです。(p.212)
 ⇒今日という日が終わったら、もう変えようがない過去。悔やんでも仕方がなく手放してしまえばいい。

 

メモ『すべての働く人のための新しい経営学』 三谷 宏治(ディスカヴァー・トゥエンティワン 2019.9)
【満足度】★
【概要・感想】 図解も多く、けっこう期待して読んだのですが、入門書どころか、難しい云々よりも、とにかく読みにくい。詰め込み過ぎで内容が希薄というか、単に用語を覚えるだけの教科書や参考書としてなら成立するかもしれませんが、ビジネス書として何が言いたいか全くわかりませんでした。類書の方がわかりやすかと。

2月に読んだ本は5冊(図書館4冊・購入1冊)でした。
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<満足度> ★★★ オススメ  ★★ 面白い  ★ 収穫少なめ 

 

メモ『ロバート・ツルッパゲとの対話』 ワタナベ アニ(センジュ出版 2020.1)
【満足度】★★★
【概要・感想】 著者のワタナベ アニさんは広告代理店を経て、今はフリーの写真家です。表紙とタイトルのロバート・ツルッパゲって誰やねん!からスタートして、読み進めるとなかなフザている。でも、こういった巧い文体が大好物なのです。本質を突いている指摘の数々は、自分の脳を活性化してくれます。この本には気づきがあって、今後その学びを生かして、自分ごととして寄り添っていこうと思います。
【ポイント】

*作る能力を持った人は、限界まで突き詰めていいモノを作ろうとします。(p.37)

 ⇒合理性・手を抜く(小説よりラノベという退行)

*同時代に生きているというのはそれだけでとても価値があるのです。ですから、同時代に

 生きている面白そうな人にはできるだけ会ってみたいと思っています。(p.55)
*自分とは無関係な部品が膨大に増えていけば、いつかそれ以外のモノとして外側から

 自分を規定することができるのではないか。(p.102)

 ⇒地図のパズルで群馬県のピースだけがハマっていない状態

*生きている間に世界の総人口中の順位をひとつでも上げることを考え続ける。それが

 向上心です。(p.114)

*経験と体験は多い方がいい。(p.123)
 ⇒鶏肉と豚肉しか食べたことのない人とグルメの話をするのは不可能

*自分の存在、価値が相手にどう受け取られているか、にもっと敏感になるべき(p.190)

 ⇒どんな集まりの中でも、「あの人がいてよかった」と思われるようになればいい

*「ご存じかとおもいますが」「私も最近知ったんですけれど」(p.198)

*自分が知っていることなんて大したことがない。話している相手がその分野の専門家

 かもしれない。つねにそう思っていないといけません。(p.198)

*本をたくさん読まないと埋まらないほど、俺が持っている知識は少ない(p.200)

*結果として、やった人とやらなかった人しかいなくて、「やろうと思っていた人」なんて

 ジャンルはこの世に存在しない(p.205)

 

クリップ『二流が一流を育てる ダメと言わないコーチング』 内田順三 (KADOKAWA 2020.3)
【満足度】★★
【概要・感想】 50年間もユニフォームを脱がなかった野球人は内田さんだけでは?プロ野球界で名伯楽と呼ばれるうちのひとり。内田さんは選手時代、三原脩監督から「一流は王や長嶋がいるから世間は間に合っている。だから、超二流になれ。」と言われたとのこと。実際、Av.252 HR25本という超二流選手で現役生活を終えます。でも、超二流の選手の方が超一流よりコーチとして大成する気がします。そこに共通しているのは観察眼と、実績が無いぶん選手への寄り添い方。内田流は「つくる」・「育てる」・「活かす」を使い分けるのがコーチングの基本。広島で正田・金本・緒方・新井・鈴木、巨人で由伸、慎之助、岡本などを見てきた体験談は、人材育成や適材適所に応用出来る部分が多いかと。

【ポイント】

*新しく入ってきた選手と相対するときは、必ず、スカウトの意見を聞いた。(p.12)
*知らせるだけではなく、できるようにさせないといけないのだ。(p.44)

 ⇒知らせる・わからせる・やらせる・できたな! まで津続けるのがコーチング

*問題解決のタイミング(p.81)

 「勝者は得るものが大きいときに大きな賭けをし、敗者は得るものが少なく失うものが

  大きいときに大きな賭けをする」

 ⇒イチローは毎年フォームを変えていた。伸びない選手は打てなくなってからようやく

   変わろうとする。
*ひとりの選手のミスでチームが負けた。さて、これを指導者がどう扱うか =中略= 

 ゲームが終わっても、彼らはその件に触れない。=中略= ひと通り話した最後に、指導者

 は切りだす。 =中略= 談笑後のことだ。(p.115) 
*「高倉健さんは主役を張るスターだが、健さんだけは映画はできない。脇役が必要だ。

 そして、もし、健さんが二人いれば、どちらかが脇役をやることになる、でも、それはスゴイ

 映画じゃないか?」(p.173)

 ⇒主役にこだわるのではなく新しい役割を与える

 

メモ『原田マハの印象派物語』 原田 マハ(新潮社 2019.6)
【満足度】★★
【概要・感想】  印象派で知られる面々、モネ、ベルト・モリゾとマネ、メアリー・カサットとドガ、ルノワール、カイユボット、セザンヌ、ゴッホをモデルとした短編小説。小説とは思えないような筆致で、まるでそこで見ていたかのようです。マハさんの小説を読めば、メモをとらなくとも自然に『論理的美術鑑賞』が出来ます。各話に出てくる絵画もきっちりカラー図版で掲載されているので、いちいち調べる手間もなくストレスフリー。肩肘はらずにサクッと読めるのでオススメです。


本『論理的美術鑑賞』 堀越 啓(翔泳社 2020.5)
【満足度】★★
【概要・感想】 アートは感性で気楽に観るものですが、一歩踏み込んで、作家のパーソナリティや時代背景などを理解し、色や構図を記憶しながら、きちんと観ることで作品の味わいは変わってきます。それがアートは難しいという固定観念につながっているのですが、論理(という言葉は適当でない気もしますが・・・)を重ねることによって感性も変わってくるとのこと。しかし、それはよく考えれば、自分の好きなことに対しては自然とやっているはずで(例えばアート鑑賞なら作品の色や構図の分析、作家の人生の分析、作品がリリースされた時代の分析など)、要は苦にならなければ普通に出来ることでもあります。本書では、その手助けとしての作品鑑賞チェックシートなどのフレームワークが紹介されています。あと、佐藤忠良「美術を学ぶ人へ」という紹介の一節も良かったです。

【ポイント】

*感性を磨くこととは、この狭い自分だけの世界にとどまらず、自分の枠を超えた情報を取り

 入れ、経験を重ねていき、「自分データベースの情報量と質」を増やし、高めていくことに

 他なりません。(p.26)
*美術鑑賞のレベル(p.29 マイケル・J・パーソンズ)
 ①直感的で表面的な好き嫌い(この色が好き)

 ②本物そっくりがいい(技巧的に美しい・リアル・抽象的でよくわからない)

 ③アーティストの生き様や表現がいい

 ④アートヒストリーをわかった上で判断できる(美術に詳しい人)

 ⑤独自の見解を示せる(悲しい絵らしいけど、温かさを感じる)

*作品に対して観察を行えば行うほど、見方は広がっていきます。(p.73)
*芸術というものは、科学技術とちがって、環境を変えることはできないものです。しかし、

 その環境に対する心を変えることはできるのです。(p.226 佐藤忠良)

 

本『リーダーを目指す人の心得』 コリン・パウエル(飛鳥新社 2017.6)
【満足度】★
【概要・感想】 元・合衆国国務長官の著書。菅総理の愛読書(という人が多く、今になってわりと読まれているようです) とのことで読んでみました。「コリン・パウエルのルール自戒13カ条」と銘打って2ページ目にいきなりどどーんと出てくるのですが、「なにごとも思うほどには悪くならない」などなど、これが人気のキモの部分なんですかね。軍隊とビジネスのリーダー論は親和性があり、それが中心の第1章は面白かったです。2章以降は本書の「はじめに」通り、自分はこれでうまくいったということが書かれているだけで、ある意味アメリカの軍隊経験のエッセイ。そこはあまり記憶に残らなかったです。
【ポイント】

*最終的な成否を左右するのは、たくさんの小さなことだ。リーダーは小さなことまで感じられ

 なければならない――小さなことが起きる組織の最深部がどうなっているのかまで感じら

 れなければならない。 (p.37)