10月に読んだ本は6冊(図書館本5冊・購入1冊)でした。
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<満足度>★★★ オススメ ★★ 面白い ★ 収穫少なめ
『ノモンハン 責任なき戦い』 田中 雄一(講談社現代新書 2019.8)
【満足度】★★★
【概要・感想】本書は18年8月に放送されたNHKスペシャルがベースとなっていて、著者はそのディレクター。1939年に勃発したノモンハン事件。満州国とソ連の国境地帯、遊牧以外に価値のない場所で関東軍とソビエト軍大規模な戦争を始めたのはなぜか。辻政信らエリート将校や上層部の無責任さに焦点を当て、新たな証言を基に分かりやすく構成した内容です。(但し、辻政信の親族にも配慮あり)この手の本にしてはとても読みやすく理解が進みました。ノモンハンでは圧倒的に鉄量の差があったのにソ連の死傷者の方が日本の死傷者を上回りました。そういった結果が、その後の日本の楽観論、情報軽視、精神論重視などの考えを一層強化したのかもしれません。ソ連が手強いことを思い知り、南進論に舵を切っていったことも覚えておきたいです。
【ポイント】
*ノモンハンの兵士の回想録には「道に迷った」「目的地にたどり着けない」という記述が
多数(p.14)
*歩兵中心の軽装備で臨んだ日本に対し、ソ連は最新鋭の戦車や装甲車など近代兵器を投入
し、日本を圧倒(p.19)
*陸軍中央としては、2年前に始まった日中戦争が泥沼化する中で、“余計な”戦争は避けたい
というのが本音(p.20)
⇒戦費がかさんでおり、日中戦争を関東軍と、制御できない陸軍中央という構図の中で
明確な意思決定がないまま戦線は拡大
*満州事変によって、陸軍内部における関東軍の地位も飛躍的に高まった(p.28)
⇒泣く子も黙る関東軍。最大70万規模。天皇に直隷していたため、参謀本部の部長クラス
でも容易に口出しできない気風。
*辻がいなければノモンハン事件は起こりえなかった。(p.52)
⇒関東軍参謀中最年少、身分も少佐だが、関東軍の参謀が異動で総入れ替えとなり、古参
の一人となった。現場に足しげく通い、満州の知識や経験は辻に敵わなかった。辻は
板垣さんが関東軍の参謀長だった頃の懐刀。
*参謀本部作戦課長の稲田正純大佐は、日中戦争の解決を最優先とし、ソ連との余計な紛争
を避けたいと考えながらも、関東軍の面子や裁量をも大事にしたいと考えていた(p.72)
*国境を越えての軍事行動は天皇の大権に属するにもかかわらず、辻ら若手参謀は参謀本部
にもいっさい知らせることなく独断で空爆に踏み切った(p.74)
*自決強要、免官、停職など、中下級指揮官に対する処分は、軍幹部の処分に比べ格段に
重かった。(p.165)
*誰人の意見をも受け付けない辻が、服部の意見に対しては、一も二もなく承服する(p.198)
『「名コーチ」は教えない プロ野球新時代の指導論』 高橋 安幸 (集英社新書 2022.7)
【満足度】★★★
【概要・感想】スポーツの指導論とビジネスにおける人材育成手法はかなり相性が良いと思っています。プロ野球は毎年毎年、高校生が入団する訳ですから、常に最新のコーチング理論として洗練されているはず。本書は石井琢朗、鳥越裕介、橋上、吉井、平井正史、大村巌、6人のプロ野球コーチの指導論。すでに吉井・橋上の書いた本は読んだけど、とても気になっていたヤクルト・広島で手腕を発揮した石井琢朗、SBとロッテでコーチを歴任した鳥越裕介、糸井を開花させた大村巌を取り上げてくれた著者のセンスは素晴らしい。管理という手法がもういかに古いのかよくわかります。いかにしてプレイヤーが自分でやったという風に持っていくか、とても重要ですね。
【ポイント】
*選手に技術を教えるというよりも、選手が自ら努力する方法を教えてあげるのがコーチ
(p.19)
*練習は量でもないし、時間でもない。結局、どれだけ自分をよく知って、役割を知って、
目標設定しているかどうか(p.102 橋上)
*コーチから教えるんじゃなくて、選手が何をやりたいか、はじめに聞いて、それに沿って
アドバイスを出す(p.137 吉井)
*「自分でやったんだ」っていう感じ、=中略= そんな感じを自分で持てれば、モチベー
ションが上がったり、自信がついたりしていくので。自分でできた、自分でやった、という
感覚に持っていくのが、コーチのいちばんの役目(p.141 吉井)
*新人の選手にはコーチングとティーチングの両方が不可欠であって、丁寧な説明とともに
モチベーションを保つための言葉も大事(p.193 大村)
*「諭す」(p.195 大村)
なぜいけなかったのか、なぜしたのか⇒それをどう思っているのか⇒どうしていけばいいのか
*コーチとしての僕の役目は、遠まわしでもいいので、選手にアイデアを出してあげる。
=中略= 自分からやったんだという記憶になるようにしたい。 =中略= 自立させないと
いけない(p.201 大村)
『鎌倉幕府抗争史』 細川 重男(光文社新書2022.7)
【満足度】★★
【概要・感想】 頼朝の落馬から政子が没するまでの期間の内部抗争の歴史を時系列に紹介。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」ど真ん中の副読本として読みましたが、よくまとまっており、わかりやすかったです。巻末に中世日本の基礎知識や家系図といった補助資料も理解を助けてくれました。
【ポイント】
*頼朝時代、御家人で受領に任官できるのは原則として門葉に限られていた。(p.82)
⇒景時滅亡後、時政は遠江守に任官。
*政所は鎌倉殿に限らず公卿の家政機関であり、公家社会では役職に複数の就任者がいる場合、
筆頭者が執権と呼ばれた。(p.164)
⇒時政は広元の上位の政所別当筆頭=執権
*和田合戦の最大の歴史的影響は、この義時の侍所別当就任(p.216)
⇒侍所別当と政所別当を兼職した地位が、これ以後執権と呼ばれる
⇒侍所の副官である所司に北条家の家臣化した御家人が就任(御内人・得宗被官)
*「金槐和歌集」の「金槐」か鎌倉の「鎌」の偏と大臣の唐名「槐」を合わせたもので、
「鎌倉内大臣」を意味する。(p.229)
*泰時の治世十八年間は、大きな抗争も起こらず、おおむね平和な時代となった。(p.293)
⇒合議制としての完成形である評定衆、執権、連署と共に幕府最高幹部
『サイコロジー・オブ・マネー』 モーガン・ハウセル(ダイヤモンド社 2021.12)
【満足度】★★
【概要・感想】タイトル通り、お金にまつわる人間心理について書かれた本。お金に対して慣れていない人向け。心理と言えば、お金に関する悲観的なニュースがみんな大好きという指摘はまさにその通り。年金問題なんてみんな大騒ぎですよね。他にも心理に左右されるのは投資をする時。自分独自の経験に基づいて、その時々に意味があると思われる判断をしているという指摘。実際、株が上がるか下がるかを100%予想できないですからね。そういった身近な事例をエッセイ的に取り入れつつ、本書の結論として著者がよりどころとしているのは「高い貯蓄率」、「忍耐力」、「世界経済は今後数十年、成長するという楽観主義」とのこと共感するところ。投資の世界は特に上がった時も下がった時も「忍耐」です。
【ポイント】
*「何事も、見かけほど良くも悪くもない」(p.40 NY大学教授スコット・ギャロウェイ)
⇒1度や2度、投資に失敗しても自信を失わず、プレイし続ける。運とリスクが影響。
*投資に関する最強かつ最重要のアドバイスが書かれた本のタイトルは「黙ってじっと待て」
(p.84)
*優れた美術品商は =中略= さまざまなアーティストの作品をポートフォリオとして
まとめて購入 =中略= そのうちの数点が高く評価される日をじっと待つ。それが
すべてだ。(p.107)
*富を築くために必要なのが自制心(p.149)
⇒お金を使うことではない。貯金とは収入からエゴを引いたもの。
*市場の変動性を、「間違った判断をしたことに対する罰金」ではなく、「将来的に利益を
得るために支払わなければならない手数料」と考えることは、長期的な視野で投資をし、
利益を得るためにはとても重要。(p.237)
*「悪いことが起こるのを前提にして、良いことが起こるのを待つ」(p.273)
*低コストのインデックスファンドにドルコスト平均法で投資する(p.314)
⇒長期的に成功する確率がもっとも高い投資法
『 鎌倉幕府と室町幕府』 山田 徹・谷口雄太・木下竜馬・川口成人(光文社新書 2022.3)
【満足度】★★
【概要・感想】日本中世史では鎌倉幕府の研究が先行してきましたが、最近は室町時代もブーム。本書は人物、合戦、事件ではなく、制度や権力構造に重点を置き、室町幕府と鎌倉幕府を比較し、特徴を浮き彫りにする手法で解説。鎌倉幕府と室町幕府はどちらが強かったのか?という執筆者4人による座談会も収録。ちょっとお堅い文章でしたが、①公家寺社との関係 ②地方支配(守護)③滅亡 という興味深い切り口で勉強になりました。鎌倉幕府は150年、室町幕府は250年(実は江戸時代よりも長い)続いたという事実も意外でした。
【ポイント】
*室町幕府や江戸幕府と異なる鎌倉幕府の大きな特徴(p.23)
⇒公家政権や大きな寺社勢力に鎌倉幕府はあれこれ命令する立場になかった
*守護とは、播磨国や肥後国といった国ごとに設置される官職である。一方の地頭は荘園など
国より小さい所領ごとに設置される。地頭の地位は本来的に収益をともなう(p.97)
*鎌倉期守護の基本的役割は、任国内の軍事・警察権を担うこと(p.98)
⇒国衙を兼任し、在庁官人を家臣化。公的業務が守護に吸収され、守護領国制の前段に。
*江戸時代には、全国の大名をリストアップした「武鑑」という書物が広く流通しており、
どの国を誰が治めているかは一目瞭然だった。(p.100)
*鎌倉幕府は全盛期のなかで突如滅亡したというにがおおよその学会の共通認識(p.163)
⇒パブリックイメージもない貞時期が幕府全盛
*室町時代の場合だと、守護は基本的にずっと京都にいる(p.234)
⇒但し、九州や東国の守護は京都にいない。
*室町時代の守護は、京都の政界で権力闘争に敗れたら屋敷を焼いて地方に帰る =中略=
一方の鎌倉時代は、鎌倉で兵を挙げて、それでだめだったら一族郎党そのまま滅んでしまう
(p.236)
『東大教授の考え続ける力がつく思考習慣』 西成 活裕(あさ出版 2021.4)
【満足度】★
【概要・感想】渋滞学が専門の西成氏の本。目新しい話がないどころか、ちょっと昔のビジネス書風の切り口だなぁと思って読んでいたら、10年前(!)の2011年に刊行された本の加筆・修正版でした。思考体力をつけるためのノウハウ本です。