お疲れさまですね -16ページ目

12話「最も希望的な観測を並べるだけ」

鬱ノ宮高校の悲劇
第12話「最も希望的な観測を並べるだけ」



事故発生後、数日が経過した。


理事長室に男が2人。
そのうちの背の低いほう、民井幸教頭が言う。


「兄さん。 逃田が放射線量の高さを理由に、撤退を打診してきたんですが…」


よんこぱろ☆


「ふざけるなッ」



背の高いほう、

民井完理事長が例によって短気を炸裂させる。








「こんな危険なモノを造ったのは全部右田と逃田の仕業だぞ!
我々は長年それに反対してきたんだ!
どうして尻拭いをせねばならん!
一から十まで逃田と右田にやらせろッ!」


「…お、落ち着いてください、兄さん」
弟は慌てて短気な兄をなだめる。


「わかりました。引き続き逃田と化学部にやらせます。
…いいですか、次の議題です」



「明日の朝礼なんですが。
いつも通りヤバそうな数字は伏せて
最も希望的な観測を並べるだけ、ということでよろしいですね?」


「…ふう。 ……仕方ないだろう。
事実をそのまま発表すると、
生徒どもがパニックを起こしかねないからな」


生徒会活動から叩き上げて今の理事長ポストをつかんだ完だが、
その目線は生徒からかなり遊離してしまっている。



「それから…
水素爆発による大量の放射性物質の飛散。
燃料棒全量メルトダウン
二重容器の破損による高濃度汚染水の流出。
…この3つをどうしましょうか」


「どどど!どうしましょうかって!
どれも致命的な事態じゃないか!

3つとも右田と逃田が

『決して起こり得ないから安心してください』
と何十年も言い続けてきた事なんだぞ?


それを我々がやっぱダメでしたスミマセンと言わにゃならんのか?」


「 やっぱまずいですよね。 ……
では1~2ヶ月して、ほとぼりが冷めた頃にそろっと発表しましょうか?」


「……むむう。…そうしてくれ…」 



「…それから、既に設定済みの避難区域の北西に、
新たな危険箇所が見つかった件なんですが」


「ああ。 あのIAEAが早々に指摘したホットスポットか。
あれはお前が問題ないと一度突っぱねたではないか」




よんこぱろ☆



痛いところを突かれて、

幸は頭をかいた。




「それが…やっぱり危険だったんで…
このままでは避難区域の拡大もやむを得ないかと…」






「馬鹿者。

それでは我々の落ち度を認めたことになるぞ!」


「……え、あ。はい。
…それでは。…別の用語で新たな避難区域の名称を
ひねり出すというのはどうでしょう?」


「うん。似たような名称が増えるだけだが…まあ名案だな。
まったく。糊塗に糊塗を重ねるから事態がどんどんややこしくなる」





「あ、それから」


まだあるのか!
民井理事長は短気を必死に抑えて弟の言葉を待つ。


「ネット上で我々指導部の発表を大本営発表などと揶揄する、
不逞の輩が後を絶たないのですが」


「何だと。冗談じゃないぞ。
そんな奴らは権力で取り締まるのもやむをえんだろう」

とても市民運動家出身とは思えない決断を、理事長は簡単に下した。


「…わかりました。
ネット上の言論を、監視処罰できる校則を通しましょう」






弟の幸が書類の束を抱えて出て行くと、
理事長室には完だけが一人残った。


「…ふふふ」
机に突っ伏せると頭をかかえ、自嘲気味につぶやいた。


「……これじゃあ…
長年批判してきた右田と何も変わらんじゃないか」


「俺はいったい何のために………何十年もあがいて来たんだろう」


民井完の横顔が急速に老け込んだようだった。




のちに理事長権限で原発を一箇所だけ一時停止させることに成功する。
数的に言えば焼けウランに水、だったが。




よんこぱろ☆ 民井完 (たみい かん)


民井兄弟の兄のほう。
着任したばかりの鬱ノ宮高校理事長。


気は短く、かつ意外に弱い。

左右双方の顔を立てたあげく左右双方の不興を買う、
という最悪のスパイラルに陥っている。


ただ、原発一基の停止だけは評価されている。




民井幸 (たみい ゆき)


弟のほう。教頭で広報担当。

2011年ベストジャンパーニスト
と言ってもよい着こなしぶり。


寝ないでよく喋るが、内容はうすく伝聞が主


落ち着いた美声の持ち主で、
口癖は「落ち着いて行動してください」







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11話「自分の痛み、他者の痛み」

鬱ノ宮高校の悲劇
第11話「自分の痛み、他者の痛み」



至近距離で対峙している緑子と翼。
「前に廊下で怒鳴っているのを聞いたんじゃが」
そう前置きして緑子は言う。


「貴様は化学部のことをかばっておったな?」
「…あ、ああ」


「…生物は高等になればなるほど
他者の痛みを自分の痛みとして感じることができる」

緑子の話は例によって飛躍する。



「その想像力こそが生物の進化の証じゃ。
自分の痛みしかわからん奴はミミズ程度


「子育てをする動物は子の痛みを、
群れをなす動物は仲間の痛みを
我がものとして感じることができる」


「……」

翼や七雲、風紀委員会の面々を順に見回してから、緑子は続ける。



よんこぱろ☆



「だが、貴様ら人類は 
そんな親子仲間の愛情では足りんぞ。


進化の頂点に立つその技術は、
既にとてつもない破壊力を有している」








「人類全体の痛み、他の生物の痛み、
さらには地球全体の痛みまで

自分の痛みとして想像するのが、
貴様ら人類に課せられた義務じゃ」




緑子はまるで自分は人類でないかのように、
「貴様ら人類」という語句を2度繰り返した。




「…翼」

声を落として緑子が言う。


「化学部の心配もいいだろう。
だが近しい仲間の痛みしかわからんようでは、
貴様の知性もせいぜいアリかハチ程度じゃ」


緑子の侮辱に風紀委員たちに一瞬怒気が走るが、
先ほどの翼の制止が効いてるのか動きにはならない。


「今回のことで言えば、
貴様らは原発がなくなる痛みしか感じておらんようじゃの。
だが、原発があることによる痛みも知れ」


「……」


痛みの範囲が広がるほど、人間のステージは高まる。
他者はもちろん、未来や子孫のことまで考えて答えを出せ、翼」
緑子は今までとは違って優しい声になって言う。


「そうすれば、
とにかく現状で我慢しろ的な安易な答えは出てこんはずじゃ」


「……」


現実論ばかり振り回してる者に、決して未来は築けんぞ?
貴様らの先祖が現にあるもので我慢していたら、
今の文明社会は実現しておらん


普段ならとっくの昔に激昂してておかしくない翼だが、
なぜだか押し黙ったまま。

手下どももリーダーのいわくを感じ取ってか棒立ちのままだ。



「……」



翼の沈黙を確認するかのように十数秒、
間を置いてから緑子が七雲に言った。


「…さて、と。 帰るか七雲。 もうとっくにおやつの時間じゃ」






2人の少女がいなくなると、手下の一人が聞いた。


「…右田さん。なんなんスか…あの女」
「…あれは…人の姿をした神だ」


「…はあ?」
「あのかたは俺の父…いや祖父が高校生の頃からあの姿のままだ」


「………」


もちろん冗談っスよね?
…という声はあがらなかった。
彼らのリーダーは決して冗談など言わないタイプの人間だったから。






よんこぱろ☆
化学部員


鬱ノ宮高校化学部の生徒。
逃田の手下で言いなり。


危険なことは全部押し付けられる可哀相な子たち。
バイト代も高給取りの逃田よりはるかに安い。


名前は左から松本(2年)竹本(1年)梅本(1年)












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10話「電気が無くなったらどうすんだ」

鬱ノ宮高校の悲劇
第10話「電気が無くなったらどうすんだ」



渡り廊下の展示用フリースペース。
新聞部長小沢七雲と鬱高風紀委員会が押し問答をしている。


七雲の書いた鬱高壁新聞が、ピランと壁に貼られている。



よんこぱろ☆





「その批判めいた紙切れをはがせ」



そう言ったのは風紀委員長、右田翼。







「今は鬱高生が一致団結して国難に対処すべき時だ」


普段は能天気な七雲も、
悪相な男どもに囲まれてさすがに顔色が青い。



よんこぱろ☆



「そんなこと言われたって…」





七雲が言い返そうとすると、
取り巻きたちがすかさず声を荒げた。




「てめ何くちごたえしてんだゴラ」
「批判なんかしてる場合じゃねんだよゴルァ」
「何か文句あんのかゴルルァァアアァァァ」


「…おい三下」
透き通るような女性の声。


文句ならあるぞ
その場違いな声に辺りが静まりかえる。


「…?」
男たちが振り返ると今までに見たこともない、
緑色の髪と目の少女。


「…あんだぁ?テメェは」


「……貴様らは原発事故を批判しない
と言うのかな?」



「…ったり前だろゴラ」
ミスは誰にだって あんだろうがオラァア」
「1000年に一度の天災だ仕方ねえだろゴラァァァアア」

仕事やら雇用やら減るだろうがゴオゥルルララァアアッ」
電気が無くなったらテメどう生活すんだゴロルアルァアァアァアアッ」



手下どもは声を荒げるが、緑子は一向に臆する様子がない。


「そうか。…まあ、もっともな言い分だな

今貴様らが言った4つの理由、よぉくアタマに刻みつけとけよ」




そうして、凄みのある笑顔を浮かべる。


「……では聞くぞ。


自称創立4000年蓮の花高校が
地震でチェルノブ○リ級の原発災害を起こしても、
貴様らは文句一つ言わんのじゃな?」


「…う」



「ほらほら♪ 大嫌いなお隣りの高校から、
黄砂と一緒に放射性物質が飛んで来るのだぞ?

安全安全~♪彼らにも雇用がある~♪仕方ない仕方ない~♪

と笑って許せるのか?」


「……そ、それは…」


「もしくは、貴様の家の隣で原発事故が起きたら、
と言い換えても良いぞ?」


「うう」


「電力需給のためなら、
庭が何千ベクレルに汚染されようがかまわんのか?」


「………」




「 どうしたッ! 答えろ下郎ッ!


少女の突然の痛烈な物言いに、手下どもは声が出ない。




原発事故を収束させられない中での原発容認論。


それは論者が安全圏にいるのが絶対条件、
という虚しい空論である。

また、当たり前だが(笑)世界的にはまるで通用しない。


緑子が指摘したように、
主語をちょっと入れ替えてみればたちまちボロが出る、
自国にのみ大甘な屁理屈に過ぎない。




よんこぱろ☆


目をシロクロさせる手下どもを平然と打ち捨てると、
緑色の視線は中央の人物を射抜いた。





「久しいのう、翼よ。
5年ぶりか?」








「ふふふふ。 噂には聞いているぞ。
やれ軟弱外交だの偏向教育だの権利の濫用だの、
他人の批判ばかりしてきた貴様が突然の趣旨変えか」


「…み、緑子」
豆鉄砲を喰らったような表情で翼がつぶやく。


「ふん、情け無い顔をするな。
タカのつもりが鳩のようだぞ」


翼、緑子、と下の名前で呼び合う二人の顔を、
七雲や風紀委員たちの視線が慌しく行きかう。


と、ひとりの手下が我に返った。
「テメざけんなよゴルラアアアァァァァアアアアッッッ」


「…やめろ」
翼が低く一喝する。



そのかたに手を出すな
「ぇぇえっ。で、でも兄貴ぃ、このアマ聞いたふうな口叩きやがって」


緑子は激昂した手下の鼻先を悠然と通り過ぎる。
「さすがは三下。物言いもテンプレートじゃの」


翼の一喝が効いているのか、「三下」はムッとしたまま言い返さない。
自分の頭でモノを考えん奴は黙っておれ。耳障りじゃ」




緑の髪の少女と竹刀を下げた少年が対峙した。


背丈は翼のが高いので、緑子は自然と見上げる体勢になる。
完全に竹刀の間合いの中だが、その華奢な体は身じろぎもしない。


「しばらく見んうちに、ハゲそっくりに育ったもんじゃのう。
え?翼」


少女は少年の顔を見上げたまま、さらに間合いを詰める。
もう触れ合わんばかりだ。


「どこまで大人になったか、
この私が試してやろうか、坊主?」



カアアアァァァァッ
少年は憮然とした表情のまま赤面した。






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9話「モラルの低さは筋金入り」

鬱ノ宮高校の悲劇
第9話「モラルの低さは筋金入り」



今から5年前


当時のワンマン理事長、
右田核栄は一人の男の子を連れていた。


「緑子様。この子は右田翼と申します。
本日鬱ノ宮の初等部を無事卒業いたしまして、
この度ご報告に伺いました」


緑子、と呼ばれた少女は横柄に頷く。


鬱高の最高権力者である核栄が
一介の女生徒に敬語を使うというのも妙な話だ。
だが、少女にはそうさせて不思議無いだけの迫力があった。



子か孫か
緑子は敬語を使わない。



よんこぱろ☆


「恥ずかしながら実子にござります。
他の兄弟とは異母弟にあたります」









「ふん。 奥方が健在なのに異母弟か」

緑子は不機嫌そうに言った。



「貴様ら指導部の、その手のモラルの低さは筋金入りじゃの。

まったく、2000年来そんな奴ばっかりじゃ。
自分の管理もできん者に、どうして人様の管理ができよう。
恥を知れ、ハゲ」


「面目次第もございません」
核栄は縮こまって答える。


そんな父の姿を、小学校卒業直後の翼は呆気にとられて見ていた。



「…ん。 まあでも子供に罪はないか」




緑子はそう言うと、翼の顔をのぞきこんだ。
「よろしくな、坊主」


「……はい」

翼はおずおずと答える。

よんこぱろ☆


「綺麗な顔をしておるな。母親似…か?
良かったな、父に似なくて」


「……」


「つばさ、と言ったか。
父はどうでもいいが母上は泣かせるなよ」


「……はい」


「ははははっ
核栄、貴様に似ず素直そうな子じゃ。 うまく育てろよ」


「はっ。 厳しく帝王学を仕込んでいきますゆえ」


「阿呆。 逆じゃ。
貴様のようにするな、と言っとるんじゃハゲ」 


緑子は翼のもとを離れると、椅子に戻った。


「ふん。 トップの世襲か。
まったく、せっかく民主主義の世になったというに、まるで大名じゃな。
下々にしみついた百姓根性は100年経っても抜けないようじゃの」





翼は呆然と立ち竦んでいた。
驚嘆したことが同時に三つもあったのだから。


一つ。 常に暴君だった父が初めて見せる、そのへりくだった姿。
二つ。 父が唯一かなわないらしいその少女の、一種異様な迫力と美しさ。
そして…三つ。 核栄のデスクにただ一つ置いてある古い写真
その写真に若き日の核栄とともに映る少女が、目の前の少女と瓜二つであること。



よんこぱろ☆



…鬱高の歴史とともに生き続ける不死の少女…
翼はその伝説を思い出していた。






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8話「嘘を言う奴は不機嫌な顔をしている」

鬱ノ宮高校の悲劇
第8話「嘘を言う奴は不機嫌な顔をしている」



このブログは原発に反対する立場から書いた、ライトノベルもどきの短文小説です。
細かなデータに揚げ足取りされないために、あえて創作というカタチをとっております。
したがってフィクションであり、実在の人物・団体・事件などには一切関係ありません。



鬱高壁新聞、と書かれた模造紙を前に、
少女2人がさっきから何やら物騒な話をしている。


赤い髪の少女が尋ねる。


「だったら原発賛成派はさぁ~、
反対意見があること自体が気に入らないんじゃないの?」


「いや、それは違う。

事故前から反対運動は根強くあったが、
ほとんど歯牙にかけてなかったはずじゃ」


「…そうだっけ?」



よんこぱろ☆


「新聞部なら少しは時流を見ておけ」


緑子は苦笑する。










「貴様ら人間はのう、七雲。
自分の本心に反した事を口にする時、
良心のストレスから逃れられない」


「…う、うん」


「ま、個人差はかなり… というか相当あるがの。
狼に育てられでもしない限り、良心は必ず人間を縛るのじゃ。

心の底ではうすうす原発に危険性を感じている者が、
原発賛成と声に出して言うのは案外と難しい


だからどうしても仏頂面になったり、
批判はダメとか一致団結しろとか電力需給がどうとかだの、

違う表現に逃げたがる。

…七雲、よく覚えておけよ。 

嘘を言う奴は必ず不機嫌な顔をしておるから」



「…ムツカシいなあ」


「なら…例を挙げようか。 先の大戦末期。
一つ覚えに不敗神話・無敵神話を唱えてた軍人どもが、
常に沸点低く絶叫してたのと同じじゃよ」


「あは…余計わかんないよ」
緑子は肩をすくめた。


七雲の苦情は無視して、話題を変える。

「………私はのう、
原発に賛成だろうが反対だろうが、
そんなことは正直どうでもいい


「…そんなこと?…」
七雲はもう話の展開についていけない。
緑子に恐怖の念を感じるのはこういう時だ。
(私たちとは全然違う価値観で生きているかのよう…)



「どうせ、たった何十年か後には答えがハッキリ出ている問題じゃ。
一高校の風紀委員風情がなんぼ竹刀を振り回しても、
時代の流れを止めることは決してできん
幕末の開国しかり、昭和の炭鉱しかり、平成の原子力しかりじゃ」


「……炭鉱?」


流体革命と言っての、石炭から石油に転換する時も
同じように騒動が起きたのじゃよ。
エネルギーは産業の根幹だから、

利権を失う旧勢力からの反撃も毎時代熾烈じゃ」


「…ぁ…はぁ」


「だが心配はいらん。
産業は全世界を相手にするものだから、
紆余曲折はあれどエネルギーは必ず転換していく運命にある。
鬱高でいくら その芽を摘んでも
他校で大きく花咲いてしまえば同じことなのじゃ」


「……」



「そんなことより、七雲。
私が情けなく思うのは、
毎時代毎時代ビクビクと大勢の顔色を伺い
この程度の賛否さえ口に出せない一般鬱高生どものチキンぶりじゃ」



よんこぱろ☆


「…あ うん。…ごめんなさい」


なぜだか七雲が謝る。










「原子力は滅びゆくエネルギーだが、
時局が読めずそれに賛成するのもまた良かろう。
意見が結果的に正しかろうが正しくなかろうが
そんなことはどうでも良い。
きちんと結果を受け止めて満足なり反省なりすれば済む話じゃ。
だが、最初から意見ひとつ満足に言えんというのはどういうことじゃ」


「…はあ」

七雲は言い返す言葉もない。


自分も少なからずそうやって、
強いモノの顔色を窺いながら人生を送ってきたからだ。


「貴様ら鬱高生にとっては、集団主義はもはや第二の本能らしいがの。
そのためなら、化学室に近い仲間の生活や居場所、
それに健康くらいは見捨てても構わんと言うのか?
放射性物質が全量出てきたら自分たちだって危ういんだぞ?
ここまで追い込まれても、たかだか意見や感想すら口にできんとは…
まるでレミングの集団自殺を見ているようで気味が悪いわ!」


そう一気に喋ってから、ちょっとバツが悪そうな顔になった。
「おっと…七雲を責めてるわけではないぞ?
まだ選挙権も無いんじゃからな」


「………。 んんん~。 …えっと」
七雲が居心地悪そうに言い返す。


「…えーと…それは何? 

2671年見てきた末の結論なのかな?」


「そう。2671年見てきた末の結論じゃ」


「…じゃあ…じゃあ、あたしは2672年目にその結果を覆すよ!」


「はあ?」


「大丈夫! そんな伝統、あたしの代で覆してやるから!」


「貴様聞いてたのか? 私の話を」


「平気平気! 見ててね!緑子ちゃん!

999回駄目でも、1000回目にうまく行けばいいんだよ!」
そう言って七雲はまた壁新聞を書き始めた。


「さっ!頑張んないと!」

緑子はあっけにとられてその姿を見下ろしていたが、
すばらくするとポツンと言った。



「……若さ…じゃのぅ」


そして、窓の外の空に視線を移す。
「…しかし……無謀だが、無為ではない、か…」





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