異人"老婆" -後編1-
老婆は鋭い眼差しでこちらを見ながら、そしてまたしても金歯を輝かせながら言った。「それではお願いします。」
私は、察知した。家の中にある何か不気味なものを。するとタイミングよく新米探偵の原松から私の携帯に電話が入った。別件の調査についてであった。
「先生(※私のこと)、私の任務はここまでです、後はお願いします。私がそちらに行きますから交代して下さい…」と、私は後輩の頼みだ聞いてあげようと思いながら内心「ラッキー~!」と思ったかな!!~
老婆に別件の調査の都合上、私に変わって他の者が参りますと話した瞬間、三度(みたび)金歯を光らせた。老婆の警戒心を察知した私は、即座に話した。「来るのは、新米の調査員で、原松といいます。新米ですが、言うことをよく聞く男です。」と話すと、老婆は、笑顔でうなずいた。
この老婆は、本当に顔に出やすいタイプであった。
しかし、原松が来るまで、まだ、1時間以上はかかる。原松にも悪いので、また、私の任務を遂行するため、家屋の中の検証をすることにした。
老婆の案内に連れられて私は、家屋へ向かった。
家屋の前に着いた。古びた引き戸式の玄関の右横には、大きな番犬がいた。
その番犬の横には、草が剥がれた跡のような幅50㎝位の奥につながる細い通路があった。私は、その通路を見つめて一歩踏み込もうとした瞬間、
「ウゥゥゥ…、ワンワンワンワンワン…」異常なほどに番犬が吼え始めた。今にも私に噛み付くような勢いであった。
私は、ここで疑問点がいくつか浮かんだ。
まず第一に、幅50㎝位の細い通路である。まるで何かを複数回引きずってできたような草が剥がれてできた道である。
第二に、その道の奥に何があるのか?その道は、果てしなく奥の方へ続いているのである。
第三に、番犬の位置とその細い通路の関係?私には、どう見ても、その細い道の奥へ誰も入れないように番犬がいるような気がしてならなかった。
第四に、老婆の細い通路を見る眼差しである。先程も触れたようにこの老婆は、表情に出やすいタイプである。何かある顔つきであった。
さあ、いよいよ家屋へ入るため老婆が歩き始めた。
すると、驚いたことに玄関を開けず、番犬とは逆の左奥の方へ連れて行かれた。するとそこには、小さな裏口のようなドアがあり、そのドアを開けて、どうぞ中へと老婆が案内した。またしても予想もつかないことであった。何故、玄関から入らないのだろうか?
私は、いよいよ家屋の中へ入った。すると…
つづく
異人"老婆" -前編2-
私は驚いた。私の目に飛び込んできたものは、森林ではない。
ジャングルであった。よくこのような屋敷があったものだと感心した。ジャングルを探検していると突然老婆が立ち止まり「そこそこ」と指を刺した。何ですか?と尋ねると「今いた。盗人が」と激しく叫んだ。私には、何も見えなかった。確かに老婆の指を刺したところは、目を離していれば見逃してしまうような所であったが、私は、どのような状況化においてもそのような現象は、決して見逃しはしない。例えネズミが通過しようとも。
しばらくするとまた同じことを突然言い出した「今いた」私はこれで裏をとることができたと同時に、内ポケットから黒くて太いボールペンを出して、水戸黄門の角さんがこの紋所を出すように、ウルトラマンが変身をするがごとく、ボールペンを高々と上げて言った。「これは特殊生物探知機です。今、検査を致しております」と老婆が指差した方向へ向けて…。
イチローがバットでセンター方向を指すように腕を伸ばした。お恥ずかしいが依頼料ももらっているし仕方が無かった。しかし、時間ももったいないので外の検証を切り上げ 、家の中の検証に移ることを話した。
すすると老婆は…
後編につづく
異人"老婆" -前編1-
それは真夏の出来事であった。PM2時頃一本の電話がなった。依頼相談の電話であった。依頼者は、68歳の女性である。電話でのその内容は少々変わったものであった。
依頼者の話によると、「森林も豊富な広い屋敷内に、私は現在一人で住んでおります。その屋敷内にもう10年程前から盗人(ぬすっと)が住み着いており、食べ物、お金とあらゆる物を盗まれており、更には、洋服、それに私の下着まで盗んでいくという。この様なことが起こるので数年前から外には、監視カメラも設置している」という。正直この時点で暑さとボケでやられたご老人だなと思いながら話を聞いていた。
話は、どんどんエスカレートしていった。「その上、私の寝室の畳の中から突然現れて、盗まれた私の下着を頭に被ってジャジャジャジャーんとでてきたり…」もうこれ位でいいか、丁重にお断りしようと思い、それでは、そちらのお屋敷に伺いますので現場検証をいたしましょうと受話器から発した。たいていここでガシャンと電話を切ってしまうのが一般的である。
そしたらなんと、住所はここで私は何々と申すものです。と言い自身の身分を明かし、アポをとりつけて電話を切ることになった。
私は、半信半疑の思いで所在データを調べてみると、確かに実在する家であった。地図を見ても確かにとてつもなく広い屋敷である。行く前に、約束通り電話を再度かけてみるとその老人がちゃんと電話に出た。
はっきりいって、のらない気分であり、嫌な胸騒ぎもしていたがそのお屋敷へ向かった。
そのお屋敷に行くと私は、はっきり行って帰りたくなった…。
少々古い家で玄関入り口の左右に確かに監視カメラも設置してある。ダミーカメラではない。しかも入り口周辺のブロック塀の上には、ヤリのような鉄の棒がギッシリ設置してあり、また、そこをバラ線で囲ってあった。私は、電話からの経緯を考えて「これはやり甲斐のある仕事だ、胸が踊る…」
と思う訳がなく「ウェッ、帰ろっ!!」と即座に思った。
そんな思いの中、立ち止まっている矢先、いきなり背後から声をかけられた。慌てて振り向くと、相の悪い砂かけババア風の金歯と銀歯が入り混じった老婆が岩の上に座っていた。これが今回の依頼人であった。
私は、笑顔のヨロイを顔面に被り挨拶をした。すると老婆も機嫌が良さそうに不吉な笑顔で答えた。老婆の金歯が夏の太陽にギラギラと反射していた。
岩の自然椅子に二人で座り接客相談業務を始めた。話すこと一時間、老婆が私を信用したのであろうか、契約を交わした後、屋敷の中に入って現場検証をすることになった。
私は心中でつぶやいた。「もう逃げられない」
屋敷に入ると、裏庭の方に案内された。持参した位置確認装置をONにして現場検証を始めた。
つづく