さて、静岡県富士市にある鈴川の富士塚、あまりに本当の富士山に近い富士塚のお話でありまして。
これまでにも都内や関東近県で富士塚に出くわしたことはありましたですが、だいたいは神社の境内に設けられている。こちはら、鳥居まで近づいてみますと傍らに「浅間宮」とありまして、どうやら富士塚そのものを神社としているようですな。塚の上に祠が祀られているようです。
解説板に曰く「江戸時代中期以降、関東地方を中心に隆盛した富士講によって多くの富士塚が築かれますが、この富士塚は性質や形状などが関東のもとは異なり、それ以前の富士山信仰に基づいて築かれたものであるとみられています」というのもむべなるかなと。
実際の富士塚を目の当たりにしましても、どうも印象が異なるような。富士塚には、本当の本当に富士登拝が叶わぬ人たちにとっても、それを疑似体験させるような要素が加味されて、例えば登る道を山道然と設えたり、はたまた途中途中に「何合目」といった石柱を施したりもしているものがあるわけで。それに対して鈴川の富士塚は、リアル富士山の遙拝所であるかな…という雰囲気なのですから。
すでにして上に登る前から、この場所からは「おやこ富士」(富士塚越しに本当の富士山)がよく見えますよと案内があるくらいですし。となれば、富士見ポイントとして期待が高まるのは自然のこととしても、「富士と港の見える公園」での眺望からして、お天気がどうにも…といった具合。過度な期待は禁物だったのですなあ。
どうでしょう?祠の真後ろ遠くにうっすらと、これ以上ないほどにうっすらと、富士の頂上付近の稜線が見えてはおりますが…。『ブラタモリ』だったら、好天時の写真パネルを取り出すところでしょうなあ(笑)。
それにしても、富士塚のてっぺんが見晴らしが良いというのは周囲に高い建物が無いからでもありますね。そりゃ、富士塚は土を盛って高くしてあるのだから…と思うものの、近隣の屋根の並びは見えるも遠景に建物らしきものは全く見えておらないですな。
これは富士塚周辺の地図ですが、先に触れましたとおりに「富士と港の見える公園」は田子の浦港に突き出す岬のような地形でして、おの尾根状の幾分高い場所に富士塚もある。そして、古くから住宅地であったことを示すように細い道が入り組んで走っておりますね。
一方でJR東海道線の向こう側は区画が大雑把で、八郎潟を埋め立てた大潟村ではありませんが、いかにも後付けの土地であるような。この低い部分はかつて大きな湿地が広がっていたようですね。後に埋め立てが進められて農地化していったのでしょうけれど、今ではそこに富士市の名物?大型製紙工場が立ち並んでいたりするという。そのせいで、高度成長期の田子の浦はヘドロの海として有名になってしまったりしましたが…。
てなことでもありますので、富士塚から吉原駅の方に向かってはゆるゆると下っていくことになります。駅の近辺はもはや海抜0mみたいな低い土地であるとは、港近くの鈴川港公園にこんな津波避難タワーが設けられていることでも分かるのではなかろうかと。
さすがに用途が用途ですので、がっしりした作りであるようです。が、これを見て(お門違いとは思うも)三内丸山遺跡の大型掘立柱建物を思い浮かべたものでありましたよ。ということで、JR吉原駅に戻ってきました。この後が当初予定と大きく異なる旅程をたどることになるのは暑さを舐めていたからですが、その辺りから次回のお話ということにいたしたく存じます。