静岡県富士市のJR東海道線吉原駅から歩きだして、富士と港の見える公園を後にして、もうひとつの立ち寄りポイントを目指したのですな。あたりは全くもって普通の住宅地ではありますが、道すがらで時折かような看板を見かけたりも。
「元吉原 松と潮騒コース」とは観光ルートのひとつであるか?とも思いましたが、基本的には市民向けの健康ウォーキングのためであるようで。どこの自治体にもありますですね。ともあれ、しばしこのルートにのっかって歩いておりましたらば、やおら「パナナ」と大書された幟旗に遭遇したりしまして。
静岡県は温暖な土地柄とはいえ、バナナって熱帯のものではなかったかと、植物園の大温室を思い浮かべたりしましたが、幟旗には「元吉原 露地バナナの里」とあって「ああ、栽培しているのであるか…」と。後になってネット検索したところでは、この地域で作られるバナナは独自ブランドを構築しているくらいであるようなのですなあ。
静岡県富士市鈴川地区(元吉原露地バナナの里)を中心に露地栽培された、ご当地ブランドバナナを「Bell Banana」と言います。この地域は温暖な気候なため、露地栽培(ビニールハウスや温室などの施設を使用せず、屋外の畑で栽培する方法)でバナナが育ちます。(ベルバナナHP)
ま、もはや日本の夏場は熱帯さながらだしなあとか、もっとも日本での露地栽培は越冬させるのが大変か…などと思い巡らしておりますうちに、次なるスポットへと到着と相成りました。
鳥居があるとなれば「神社であるか」と思うわけですが、参道奥に控えているのは富士塚なのですよね。バナナの里のところで触れましたがこのあたりは鈴川地区ということで、「鈴川の富士塚」と言われているそうな。
それにしても、富士塚とは富士のお山は遠くにあってなかなか行けない、富士講で実際に出かけるにも長途の旅の安全を予め祈願する…てな意味合いがあろうかと思うところでして、この場所からは大きな富士山そのものを遙拝することができる、そんな近いところに何故?とも。現地の解説板を頼るとしましょう。
鈴川の富士塚は、富士登山の前に身のケガレを払う場であったと考えられています。登拝者は海岸で水垢離と呼ばれる精進潔斎を行い、その際浜から玉石を持ってきて砂山に積み上げ、登山の安全を祈願したと伝えられています。身を清めた登拝者は、この富士塚を起点として、吉原宿、伝法、大渕を経て村山浅間神社に至る村山道を通り、富士山頂を目指したといいます。
なるほど!だからなのですなあ、鳥居の前には横断幕などが掲げられて、「富士山へ、0(ゼロ)からの挑戦」と言った文字が書かれてあるのは。
ちなみに鈴川の富士塚を起点として山頂に至る「富士山登山ルート3776」というロングラントレイルに関しては、富士市交流観光課による公式サイトが設けられていて、こういっては何ですが、富士市の一般的な観光情報の紹介に比べると格段に手の込んだサイトになっておりましたよ。
このサイトでは、「登山計画書」ならぬ「挑戦計画書」が用意されて、提出フォームの入力画面は全て英文併記となっている。いかにインバウンドの富士山人気が考慮されておるかということになりましょうねえ。
それにしてはここで見かけたのは現地のおじさんっぽい人がひとり、鳥居の前で頭を下げていたくらいなもので、インバウンド客はおろか、他には自分以外誰もいなかったのですが…。
考えてみれば、古式に倣って海岸で水垢離を手始めにと思っても、今ではわりと海岸線から離れた墓所になりますし、何より「富士と港の見える公園」同様にここの富士塚も些かの高台にあることからすれば、海抜0mからの挑戦の起点としては、「おや?」という気にもなりましょうしね。
ということで、この先に富士塚が…というところまで来ていながら、ちょいと手前で引っかかってしまいまして話が長くなり…。ですので、鈴川の富士塚登拝のお話は次回にということで、どうぞよしなに。