「鳥取に出現した中国?」って、鳥取県は中国地方でしょう…と、そういう中国でなくして悠久の歴史を誇る大陸の方ですな。山陰本線で倉吉駅から鳥取行きの列車でひとつお隣、松崎駅からほど近い東郷温泉の宿にたどり着いたところ、建物に何とも中華が香っておったわけですが、そのあたりの事情に絡む観光スポットを訪ねるところから続きということで。

 

右手に東郷湖が見え隠れする住宅街を抜けて歩くこと数分。宿の建物を見て抱いた「中華風?」のイメージを大幅に塗り変えて、明らかにチャイナな雰囲気に包まれることになるという。入口はこんなふうですものねえ。

 

 

燕趙園というこの施設、「鳥取県と中国河北省の友好のシンボルとして建設された日本最大級の本格的な中国庭園」であるということで。ま、ほど近い宿、国民宿舎水明荘の建物もこれの雰囲気にあやかっているということなのでしょうなあ。

 

余談ながら、国民宿舎近くの日中友好施設ということでは、しばらく前に埼玉県の秩父地方で泊まった両神荘と、そのお隣にあった埼玉県山西省友好記念館を思い出してしまいますな。「神怡舘」と名付けられた記念館の中には、山西省を紹介する数々の文物が展示されて…ということでしたが、訪ねた時(2018年でしたか)にはすでに閉館となり、その後の利用が決まらないままになって廃墟化必至と見えたような。現在はどうやら屋内を大改装して、ボルダリング施設として営業しているとか。秩父・山間部へ観光客を誘致する起爆剤と目して建てられたのかもですが、中国の文物よりも両神山はじめ秩父連山の山懐だけにボルダリングの方が客を呼べているのですかね…。

 

埼玉のことはともかくも、こちら燕趙園の方は単なる箱モノではなしに、後ろに控える東郷湖を借景に「歴代皇帝が造り親しんだ皇家園林方式の中国庭園をそのままに再現し」たという景観勝負に出ているそうな。一歩、園内に足を踏み入れてみれば、なるほどチャイナだわと。

 

 

 

 

河北省ではありませんけれど、以前の仕事で中国・蘇州を添乗したときのことを思い出したりも。「設計から資材の調達、加工まですべて中国で行われ、建物は一度仮組したものを解体した上で日本に運び、中国人技術者の下、再度建設し」(同園HP)たという気合の入った設えが奏功しているのでもあろうかと。

 

 

それほど広大な敷地ではものの、中国エッセンスをふんだんに盛り込んだ庭園は、大人は見て楽しみ、子どもは走り回って(いいのかどうか…)楽しめる空間にもなっていようかと。また、本物らしさが買われて、2006年に製作されたTVドラマ『西遊記』のロケに使われたということです(見てませんけど。何せ『西遊記』と聞けば、夏目雅子の玄奘三蔵しか思い浮かばないもので…)。

 

 

ところで園内のお楽しみといいますと、この門の向こうにある集粋館という建物がイベントホールになっておりまして、「中国芸術文化公演」として一日三回、雑技ショーが行われておるのであると。見ない手はありませんですね。

 

 

一回あたり30分ほどと短いものですが、覗いたときにはまず中国コマ回しから始まって、皿回し、変面ショーと続きました。イベントホールのお隣には、コマ回しのコマ、皿回しの皿と棒が用意されていて、誰でもお試し可になっていますので、コマ回しも皿回しも見ていて思うほどに簡単ではありませんですね。もっとも、皿回しの方は片手に三本の棒を持ち、両手で六枚の皿を回すのは大変なことですし、回しながら柔軟体操を遥かに超える体の動きを見せられては「ほお~!」ということにもなってしまうわけで。

 

で、最後に演じられる「変面」は、どのみちたくさんの面を被っていて、さっさか取り替えているのであろう…てな具合に高をくくっていましたけれど、演者が客席まで出て来て、目の前で面が変わっても仕掛けが分からない。さらには一度、素顔にまで到達してもうおしまいかと思えば、再び変面が始まったのには素直に驚いた次第。こういうのも、おそらくはYoutubeあたりに種明かし映像があったりするのでしょうけれど、驚くばかりのままにしておく方が楽しいでしょうなあ、きっと。

 

 

園外すぐそばにある中国物産の売店では、変面ふうの仮装をして写真をどうぞ!と。さらに通りを中国の城門のような大きな歩道橋で渡り越したところには、道の駅と中国料理のレストランがあるという具合に、当初の「大したことないだろうなあ」という(失礼な)予想に反して、わりと立ち寄り甲斐のある場所であったなと思ったものなのでありましたよ。