山形県村山市の最上川美術館と、その近くで最上川を間近に望むことのできる大淀ビューポイントに出向いた後、迎えに来てくれたワンコインタクシーのドライバーさんが話し好きな人だったと申しましたですね。ビューポイントのある大淀という地区がさんざん水害に遭っているてなことも聞いたわけですが、村山駅へ向かってもらうにあたって、「電車の時間、急いでないですか?」とのお尋ねが。こちらが応えて曰く「時間はあるので、駅前あたりで昼飯でも食べようかと…」と言えば、これまた(今回の旅で三度目となる)「蕎麦ですか?!」と畳みかけてきたのですなあ(笑)。
前日の昼に観光案内所の方から「蕎麦ですか?」と問われたときには、申し訳なくも定食屋を紹介してもらったわけですが、一日置いてもそんなに言うならとの思いから「ええ、まあ…」と。ドライバーさんの御推奨の店が村山駅至近であって、一推メニューーが「冷たい肉そば」という山形名物でもあったものですから、この際おススメに乗っかってみることに。
確かに駅前ロータリーからも見える近さにある「バラ亭」というお店。店の外にはお品書きがあるでもなく、また「バラ亭」という名から蕎麦を思い浮かべることがあろうか…と思ったりしますですが、村山市には東沢バラ公園という施設がありまして、春・秋に開催される「バラまつり」は多くの人出で賑わうほどにバラの町でもあると。どうもそのバラが店の名の由来のようで。
昼にはちと早めでしたのですぐに入店できましたれど、失礼ながら村山にこんなに人がいたのであったか…と思うほど、次々に客がやってくるになり、果ては諦めて帰ってしまう人も出るとは、人気店であることに間違いはなさそうです。でもって客の9割以上が決まって、「冷たい肉そば、大盛り!」とオーダーしていたという。
で、こちらがその「冷たい肉そば」でありますよ(大盛りではありませんが)。奥羽山脈と出羽山地に挟まれたこのあたりは、東北地方ではありながらも夏に暑いことで知られておるわけで、そこからものを冷たくして食す文化が育まれたのでありましょう。冷たい肉そばもそのひとつかと。
と、またしても山形の蕎麦の話になってしまってますが、少々時間を巻き戻して、再びワンコインタクシーの車中でのこと。最上川美術館から村山駅へと戻る道すがら、車窓からは広く田畑が見渡せるばかりなのですけれど、時折、「ここの農地は放棄されている?」というようすが目に入ってきたのですなあ。こんなふうに…。
しっかり田圃として田植えされているところもある一方でこれですので、「これは…?」とつい漏らすと、件の話好きのドライバーさん曰く「減反ですよ…」と。国が政策として行っていた「減反」は2018年に廃止されたようですので、ここでは県とか地域とかでの独自の取り組みなのかも。なんでも、減反に応じた農地は農協が管理して豆を栽培(山形県は全国トップクラスのえだ豆産地とか)したり、もそっと山間部では蕎麦を栽培(言わずと知れた山形名産)したりしてくれているようで。「この辺の農家は兼業ですから」というドライバーさんの言葉は、兼業で忙しいから無理して米を作るより、農協に管理してもらった方がありがたいといった含みでもありましたでしょうかね(今年の夏は米不足と言われてもおりましたのにねえ…)。
ところで、兼業ということからして、どこかしら別のところで働いてもいるのであるか…となれば、この辺ですとやはり山形市で勤め人になっているのかとも。村山駅から山形駅まではJR山形線で40分弱。運行本数から考えると、むしろ車通勤としてもやはり同じくらいの時間ですので、十分に通勤圏ではありますな。もしかして、山形市以北を巡る中、昼間に人の姿をほとんど見かけなかったというのは、各地から山形市へ通勤(いわば日帰り出稼ぎか…)に出ているということなのかもと、ここで思ったものでありますよ。
そんな思い巡らしをしつつ、タクシーで到着した村山駅の駅前で冷やし肉そばを食し…とは、先ほどまで記してきたところなわけですが、午後のひとときはかようなバスに乗り込みまして、さらに北の尾花沢を目指すことに。
鉄道駅の前にいながら、バス利用を選択しましたのは尾花沢というところには鉄道が通っておらないからなのでして。鉄道を利用すると大石田で結局バスに乗り換えなくてはならない。その点、バスならば直通しているということで。ただ、地域交通の担い手としてはこのバス、妙に立派でありましょう。
この「特急48ライナー」(国道48号を通ることから付いた名称と思われます)は、山形県北部の新庄市、尾花沢市、村山市、東根市と仙台とを結ぶ長距離路線(山形市は通らない)で、村山駅前からですと仙台まで約1時間半で直通する…となりますと、もしかして仙台への人の流出も多いのであるか…と思ったり。
取り敢えず、ここでは仙台とは反対方向の新庄行きに乗り込んで…と思うと、バスの運転手さんから「新庄行きですけど(つまり、仙台行きではありませんよ)」と。「尾花沢まで」と返したことで納得してたようですが、余り区間利用する人はいないのかもしれませんですね。