今回の山形への旅は、最上川にいささか関心を寄せたことにもきっかけはあるのですけれど、その肝心な最上川を間近に見ることをしていない。そのままでは心残りとばかりに、村山市の最上川美術館で出向いた次第。まずは館内展示で描かれた川の情景を見て回ったのですな。で、こちらの美術館に足を向けさせたのは「川を望むテラスがあって…」ということを耳にしたから。となれば、当然にテラスに出て見るわけでありますよ。

 

 

高台にある美術館からは丁度目の前に最上川が見下ろせるのですな。前日にたっぷり降った雨を湛えて、悠揚迫らぬ大河の面持ちで川は流れておりましたよ。正面が上流方向で、あたかもこちらの岸に押し寄せてくるかのようですが、最上川はこの場所で大きく右手にカーブして流れ下って行く高台にありますので、ここまで水が及ぶ心配はないようで。

 

 

さりながら、川がちょうど大きくカーブしている地点であるというなれば、「おお、カーブしとる!」という実際を目の当たりにしたくなるのが人情というもの。あいにくと美術館のテラスは高台ながら、手前の木立で見通しにくいという難点があったのですな。これはもう仕方が無い。高台から下って、川の近くへ、行けるところまで行ってみようということに。ゆるゆると、ひと通りも車通りもおよそ無い道を下っていきますと、かような標識に出くわしたという。

 

 

そのまま下れば「大淀ビューポイント」という場所に到達するようで(ちなみに真下慶治記念美術館とは、現在の最上川美術館のこと)。「ビューポイント」というからには、さぞや佳景が見られるのでは…と思うも、やはり過度な期待であったとほどなく知ることになるわけですが…。

 

 

さらに少々下って車道を離れ、いよいよ川に近づこうかという、そんな頃になって「帰りのタクシーの送迎は美術館に限定されているので、また登り返さなくてはいけなかったのだあね…」と思い至るも、ここで引き返すわけにはいきませんですなあ。

 

 

「来たぁ!これ、最上川ぁ!」。ですが、ビューポイントというわりには、ただただ川辺に些かの踏み跡が残るばかりのようで。辛うじて観光案内版がひとつ佇むのみでありましたよ。川沿いの道がフットパスになっていたのであるとは。

 

 

ちなみに地図では上が上流側、下が下流側(つまり南方向が上)となってますが、クローズアップしますと現在位置である「大淀ビューポイント」の場所はこのようなところであるということで。

 

 

まるでヘアピンカーブを描くように最上川が蛇行している、その入口部分に来ているわけなのですな。下流方向には三難所のひとつとされる三ヶ瀬があるようながら、あまりに水量がたっぷりで早瀬のイメージは湧きませんでしたなあ。

 

 

平常時の水量ならば、もしかするともそっと岩がごつごつと顔を覗かせて、避けるのに難儀する場所なのかもです。一応、カーブする前の上流側も見ておくとしましょう。

 

 

という具合に増水状態の最上川を間近に見た後、ひと汗かいて美術館へ登り返し、ワンコインタクシーに出迎え依頼の電話を。

 

 

ほどなくやってきたタクシーで村山駅へと戻ることになるわけでですが、気さくな(お話好きな?)ドライバーさんの曰く、「この辺は水、出るんですよねえ。なんせ大淀っていうくらいで」と。

 

なるほど、大淀ビューポイントの「大淀」は文字通りに大きく淀む場所だったわけですな。フットパスの地図を思い出しても、川が大きくカーブする外側にあたりますので、先に見て来た大阪・枚方市の淀川同様に、カーブの外側は出水の可能性大ですものね。大淀地区の人たちもまた、川と闘いながら暮らしてきたのでありましょう。旅から帰って3週間ほど経った7月下旬、山形県では大雨の影響で最上川でも氾濫箇所が出たとか。大淀のあたりは無事だったのでしょうかね…。