先に東京・八王子市の帝京大学総合博物館を訪ねた帰り途、多摩都市モノレールの駅へと向かうの道すがらで、ふいとかようなお店に出くわしたのですなあ。
「マダム・フリット」という店名の前に描かれているのはフレンチフライのようなポテトですけれど、これが「フリット(フリッツ)」と言われれば「おお!ベルギー名物の!」となるわけでして、即座に2017年(ああ、もう7年も前になるのですな…)にベルギーに出かけたことを思い出した次第。その時はちょうどブリュッセルのグラン・プラスで「Belgian Beer Weekend」に出くわしたことまでもがまざまざと。
折しも大変に暑い日(今年の夏はそんな日ばっかりですが)でしたので、フリッツとともに知られざるビール大国であるベルギーのビールも飲めようかとふらふらと店内に入りましたら、「ステラ・アルトワ」のドラフトが提供される由。オーダー前から満足感に浸るのでありましたよ。
フリッツのダブルを(見えてませんが)サムライ・ソースとアンダルース・ソースの2種で味わいつつ、ステラ・アルトワをぐいぐいと。いやあ、旨かった!ちなみに「サムライ」ソースというのは現地ベルギーでもそのまんま、サムライ・ソースなのですけれど、かつてベルギーに住まっておられ、今はこのお店を営んでおられるご夫妻にも「サムライ」の謂われは不詳であると。ともあれ、ベルギーでも人気のソースなのですなあ。
食しながらブルッヘ(ブルージュ)での買い食いを思い出し、飲みながらオステンドからトラムにコトコト揺られて出かけたデルヴォー美術館を思い出して(その時に昼飯に立ち寄った店でステラ・アルトワを飲んだもので)、しみじみとしてしまいましたですよ。
思い返せばまだ定職に就いておりますときには、年に一度の散財というか贅沢というか、夏期休暇を利用して必ず海外へ出かけていた(過去三十数年を振り返って海外に出なかったのは二度だったか)わけですが、これが2019年の夏以来、コロナではたっと止まったままになっている。今では(もはや収入が無いので費用面で自由にとはいきませんが)時間がたっぷりありますので、そろそろ出かけるかなあとは常々考えておるところでありまして。
そんな折に、帝京大学総合博物館でマリアナ諸島関係の展示を見て懐かしく思い出すこともあり、またその帰り道でベルギーのことをたっぷりと思い出させてもらったりすると、なおのこと気分が高まるところなわけです。
さりながら、未だ具体的なプランニングに至っておりませんのは「こうも円が安くては…」とうそぶいたりするところですけれど、その実、今一つその気になれないのはやはり戦争・紛争のせいでしょうかね。もっとも、かつて毎年のように海外に出かけていたときでも、決してどこにも戦争・紛争が無かったわけではありませんので、そうにもきれいごとめいてしいますが、もっとも出かけたいと思っているのはヨーロッパながら、そこへ向かう飛行機の経路を思うにつけ、もやもやしてきてしまうという。
初めて出かけた頃の日本-ヨーロッパ線はいわゆる「北周り」と言って、成田を発った飛行機はまずアメリカのアンカレッジに降りて給油し、北極の真上を通ってヨーロッパ各都市に向かったのでしたな。それが、ロシア(ソ連)との関係改善によってシベリア上空を通過できるようになり、飛行時間は数時間短縮された…というのが、ウクライナ侵攻前のようすです。が、現在はまたロシアを迂回する経路になっていて、航空会社によって飛行経路にバリエーションはあるようですけれど、シベリア経由に比べると(アンカレッジに立ち寄っていた時ほどではありませんが)どれも余計に時間が掛かっている。
中には、西回り(かつては南回りと言われましたな)ルートで中央アジア上空や中東を掠めて抜けていく経路もあるようですが、前者ではウクライナ情勢が、後者ではガザ情勢がどうしたって気にかかってくるわけです。要するに旅をするには平和な状態でなくては心休まらないといったところですかね…。
一方ではインバウンドと言って世界中から日本へと観光客が詰めかけているようすを見れば、向こうからも来るんだからこっちから出かけても…的な思いが過ることもありはしますが、どうにも割り切りかねているということなのでありますよ。行きたいところは山ほどあれど、どうしたもんかなあ…と思っているうちに日々過ぎ去るはまるで光陰矢の如し。いつまで元気でいられるかもわかりませんしねえ。いやはやと思い悩む、酷暑の夏のひとときなのでありました。