ということで、上社前宮を訪ねてつつがなく?諏訪大社四社まいりをコンプリートとしたところで、駐車場へと戻る道すがら、路上にカラフルなマンホールの蓋を発見したのでありますよ。長野県茅野市の下水道用のようで。

 

 

JR中央本線・茅野駅は八ケ岳登山のベースキャンプのようなところでもありますので、雪を頂いた高峰が描かれても当然。前を横切っているのはピラタス・ロープウェイですかね…って、どうやら今は「北八ヶ岳ロープウェイ」となっていて「ピラタス」とは言わないのだと、これを書いていて気付かされました…。

 

ともあれ、そんな山やロープウェイよりも画面上で目立っているのは、左手に配された2体の国宝土偶ですなあ…と見てとったところで、「久しぶりに尖石に行ってみるかということに。思い返せば(と言っても、例によってブログ内検索に頼るわけですが)、かの国宝土偶を展示する茅野市尖石縄文考古館を訪ねたのは10年以上前になりますのでねえ、久しぶり対面してこようというわけです。

 

 

いつの間にか、国宝土偶推しが強まったのか、入口ではかような空気人形(?)が出迎えるようになっておりましたなあ。ともあれ、早速にご対面といきますかね。まずは「縄文のビーナス」でありますよ。

 

 

縄文時代中期(約4000年~5000年前)の遺物として、工業団地の造成に伴って1986年に発掘されたこの土偶、よくまあ、これほどに完全な姿を保って掘り出されたものであろうかと。なにやら縄文の人たちの特別な祈りが籠っておるのか…てなふうにも思えたり。

 

 

一方、こちらは「仮面の女神」。少々新しくて縄文時代後期前半に作られたようですけれど、これも破損の状況はわずかと言ってもいいくらい。やはり、よくまあ生き延びて…と思えてきますですね。

 

 

 

ところで、久しぶりに訪ねてみればずいぶんと展示のようすが異なって(新しくなって?)いるような。もっとも、以前訪ねたときの館内をつぶさに思い出せるわけではないのですが、そもそも国宝土偶2体の展示のされ方も前とは違うような…。

 

とまれ、さまざまな土器をはじめとした縄文の遺物をつぶさに眺めてまわり、体験コーナー(本来は子供向け?)では粘土に縄目を付ける試みをしたり(これが思ったよりもきれいにいかない…)もしてきたのでありますよ。

 

で、ご存知の方はご存知と思いますが、茅野市尖石縄文考古館の向かい側(といっても森の中)には京都芸術大学附属康耀堂美術館がありますので、こちらの方へも10年余りの時を経て再訪ということに。

 

 

なんだって京都の大学附属美術館がこんなところに?というあたりは前回訪問時に記しましたので端折るとして、開催中であったのは「2024年 春のコレクション展」、タイトルに「色彩のあしどり」と付いておりました。

 

 

フライヤーに使われていますのは、桜の古木を描くことで知られる日本画家・中島千波の作品。2年前の春に尋ねてみた山梨県の山高神代桜を題材にした一枚でして、節くれだった木肌のようすなど、実物はけっこう痛々しく見えたりもするところながら、枯れた味わいで映し出されておりますですね。

 

コレクションとしては現代日本画が中心ながら、その中にブラックの静物画やローランサンの少女像が混じったりも。と、ローランサンで思い出しましたですが、かつてはこの美術館の近隣、蓼科にローランサン美術館がありましたですねえ。高原の避暑地的なところには美術館が結構あったりしますけれど(軽井沢は最たる例かと)、観光に訪れる人たちが皆、美術に興味があるわけでもなかろうところに、白樺林の中に美術館があるというのはいいイメージといった、イメージ先行で作られたとしても、なかなかに存続は難しいようで、ローランサン美術家はすでに閉館しているわけで。

 

観光施設がいっとき線香花火のような光を放つもいつしか消え去って…という例は、ローランサン美術館に限らず枚挙にいとまなしの状況でしょうけれど、なんだってそんな話になってきたかと申しますれば、今回訪ねた康耀堂美術館、この後も続いていくであろうか…てなふうにも思えたりして。

 

ローランサン美術館が立地した蓼科ほどには人の往来は無いにせよ、尖石縄文考古館という国宝を抱える施設が目と鼻の先にあるとなれば、これとの回遊が期待されるものの、尖石を訪ねる人たちのみんながみんな、康耀堂に立ち寄るでなし。実際に展示室独り占めといった状況でしたしね。個人的には最高の鑑賞環境とは思うところながら、経営的には…。

 

 

いつもは些かせわしくあちこちの施設を次から次へと巡って歩いていますけれど、こうした美術館を訪ねて、ゆったりと展示室を見て回り、テラス席でコーヒーを飲んでひと休み(あいにくと併設カフェは閉店してしまったので、持ち込みが必要か…)、木立を抜ける風の音、鳥の囀りに耳を傾けてまた展示室へ…という一日を過ごしてもよかろうなあと。いい雰囲気の美術館ですのでねえ。また立ち寄れる機会があれば(その時まで存続しておれば)と思うばかりでありますよ。