さてと、愛知県の豊田市美術館を訪ねて、ようよう館内展示を眺めて回ることに。それにしても立派な美術館ですなあ。

 

 

まず最初に覗くのは当然ながら(訪ねた折の)企画展、「フランク・ロイド・ライト―世界を結ぶ建築」展…ですが、とうに会期終了しているとは先にも申したとおりですので、さらりと。なんでも本展が巡回していた2023年というのは「帝国ホテル二代目本館100周年」であったそうな。

 

・・・そこ(帝国ホテルのプロジェクト)には、ライトが過去に出会った多様な分化からの応用が認められ、またこのときの試みは、以降のライトの建築のなかで豊かな展開を見せることになります。周囲の景観との有機的なつながり。ミクロとマクロ、部分と全体のダイナミックな呼応。自然と結びついた高層建築の構想。帝国ホテルとはまさに、彼にとって結節点に立つ建物だったことがわかります。

こんなふうにフライヤーの解説にありますとおり、結節点である帝国ホテルのプロジェクトに関わる資料を中心において、それより以前と以降のライト建築を膨大な展示物で振り返ることができましたですよ。ただ、写真に収めてよい展示物はインテリアや家具のデザイン関係など極めてわずかでして、そのあたりで雰囲気だけでも思い出しておくとしますかね。

 

 

 

 

 

「ああ、モダニズム」とまあ、そんなふうに思えてくるところかと。ちなみに上から2番目の写真にあるのは、帝国ホテル二代目本館のためにデザインされたピーコック・チェアとテーブルということでありますよ。モダンであると同時にレトロ感も。やはり「モダン」という言葉そのものからすでに「レトロ」を雰囲気としてまとっているように感じるのかもしれませんですね。

 

と、フランク・ロイド・ライト展を振り返るにはあまりにざっくりですが、実はコレクション展にも目を引かれたものですから。いろんな作品を所蔵しておるのだなあと思いまして。

 

 

中央に見えているのは、その極端な細面ぐあいからジャコメッティ作品と知れるところですけれど、その後方に小さく見えている左側、これも雰囲気だけで作者が想像される方もおられましょうなあ。さらには、もしかしてその右側の作者もまた。

 

エゴン・シーレ「カール・グリュンヴァルトの肖像」(1917年)

 

グスタフ・クリムト「オイゲニア・プリマフェージの肖像」(1913/14年)

 

シーレにクリムト、やおらまたウィーンのレオポルト・ミュージアムに行きたいな感がググっと湧きおこったりして。ま、今ではもう行こうと思えば行ける状況になっているわけですけれどね。ともあれ、ウィーンを思い出させるものばかりではありませんで、こんな作品たちも。

 

マックス・エルンスト「子供、馬そして蛇」(1927年)

 

ジャン・デュビュッフェ「存在の漏出」(1950年)

 

シュルレアリスムもあれば、アンフォルメルもある。そして、当然に日本の作家たちの作品も。

 

中村彝「髑髏のある生物」(1923年)

 

坂本繁二郎「ポルテ・シャンチー」(1922年)

 

浅野弥衛「彫刻のある室内」(1955年)

 

海外作家も含めてですけれど、描く対象や作風はそれぞれながら、ここでもまた「ああ、モダニズム…」てなふうに思ったものでありますよ。ライト展の方には来場者がざくざくとやってきていたですが、コレクション展示の方は至って静かなもの。美術館の収益的にはいかがなものか…かもながら、ひとり静かに作品と向き合える空間は何ものにもかえがたい。文字通り、堪能できる時間でもあるのですよねえ。

 

で、この豊田市美術館には、渡り廊下の先に別館ともいうべきもうひとつの展示室があるのですな。作家の名前を冠した建物に(そもその作家を知らなかったものですから)特段の思い入れもなしに入り込んでみたところ、「これは!」という作品群に遭遇した…のですが、そのお話を次回にということで。