ながいながいペンギンの話…でなくして、長い長い瀬戸蔵ミュージアムのお話がようやっと終わって、ついに「美濃瀬戸やきもの紀行」は終了したものと思った方もおいでかと思うところながら、瀬戸市をあとにして東京への帰途につく前に立ち寄った場所のお話を。

 

そもそもこのほど美濃や瀬戸のやきものの里を訪ね歩くにあたって、そっち方面へ出かけようというきっかけになったことに和田誠展@刈谷市美術館があったとはすでに語り起こし段階で触れましたですね。早い段階で振り返った展覧会ですけれど、旅の締めくくりとして立ち寄ったのが実際のところでして、瀬戸市を立って刈谷市へ向かうその道すがら、途中にあるのが豊田市なわけです。

 

ここには豊田市美術館という、予て気になっておった施設があり、また折しも開催中であったのが「フランク・ロイド・ライト―世界を結ぶ建築」展だったものですから、寄らないわけにはまいりませんですなあ。もっとも、この展覧会についてはすこぶる後回しになった結果として、豊田市美術館の会期(2023年12月24日まで)はおろか、その後に東京巡回展(実はこの巡回を知らなかった…)までが去る3月10日に終わってしまったという、この上無い後出し感に苛まれておりますよ(笑)。

 

 

ともあれ、名鉄瀬戸線を新瀬戸駅(愛環では瀬戸市駅)で愛知環状鉄道に乗り換え、新豊田駅へと。午前中にたっぷりと時間を掛けて瀬戸蔵ミュージアムを巡ったものですから、すっかり遅くなってしまったのですけれど、とにかくここで昼食をとることにして、愛環の新豊田駅と名鉄豊田市駅に挟まれた「t-FACE」というショッピングビル内のレストランへ。

 

 

「名古屋めし食堂」とまで言われたならば、いわゆる「ご当地もの」の何かを軽く食することもできようかと思ったわけですが、とかく搦め手メニューに目を奪われがちになってしまい、こんなん出ました!という状況に。

 

 

これでもきしめんではあるのですけれど「カルボナーラきしめん」てなことになりますと、まあ、こんなふうになりましょうなあ(笑)。「天むす」付きであるのが辛うじてそれらしいと言いましょうか。ま、おいしかったので文句は無いですけれど、自らご当地色を排除してしまったような…。

 

さくっとおなかを満たしたのち、立ち寄るのは美術館ひとつだからと、キャリーケースをごろごろひきずりつつ美術館への道筋を辿ったのですな。駅から徒歩15分と少々長いのは覚悟の上ながら、もう少しで到着という段階になって「こんな高台にあるなんて聞いてないけんね…」という事態に。

 

 

登り切った坂道を振り返って、大きく大きく吐息をついたのでありますよ。高架を走っていた鉄道線路がここではずっと下を通っているのですものねえ。ただ高台の際だけに東側に眺望が開けていたのですなあ。こんなふうです。

 

 

左上の方に見えている異形の建物は、Jリーグ・名古屋グランパスのホームのひとつ、豊田スタジアムであろうかと(リアルタイムでは想像で、その後確認しました)。なにやらザハ・ハディド構想による幻の新国立競技場を思い出させる気がしたものですが、これひとつとっても豊田市は裕福なのであるなあ、さすがにトヨタ自動車の企業城下町なだけのことはある…と思ったり。実際、豊田市美術館の方もまたずいぶんと立派な施設でしたしねえ。

 

 

といって、線路脇の坂道を登り詰めてたどりついた入口は、どうやら裏口でもあるようす。建物の反対側には広い駐車場を備えた、エントランスらしいエントランスがあったようで。そもそも、トヨタのお膝元ではとぼとぼと徒歩でやってくる来場者は余り想定されていないのかも…。

 

 

 

とまあ、表玄関から見ればかほどに立派な美術館、建築設計はニューヨークのMOMAリニューアルに携わった建築家の谷口吉生ということですけれど、豊田市美術館HPにはその谷口の「美術館とは、建築の外部から内部にまで、作品と出会う感動を求めて辿る旅のための装置である」という言葉が紹介されているのですね。

 

では、感動を求めて辿る旅のための装置へいざ!…というところですが、東側に開けた台地上にある建物の西側にあるこんもりとした木立ちの中をひと巡り。美術館の建築にあたっては辺り一面の木立ちを切り拓いたのでしょうけれど、申し訳程度に木立ちが残っているわけでして。立ち入ってみれば、「ああ、歴史的な由緒があったのだあね」と。高台で見晴らしが良いとなれば、そりゃあ大名だったら城の一つも建てたくなるところでしょう。

 

 

江戸中期に建てられたというこのお城(写真に見えているのは、1978年に復元された隅櫓であると)の正式名称は挙母城(ころもじょう)というのですが、「高台で見晴らしが良い」と思ったとおりに「七州城」の別名があるようで。豊田市公式観光サイト「ツーリズムとよた」に曰く「三河国・尾張国・美濃国・信濃国・伊賀国・伊勢国・近江国の7つの国が望めることから七州城と」呼ばれるそうな。

 

と、寄り道はほどほどにいよいよもって美術館の展示を見に行くことに…と話は進むわけですが、館内展示のお話は次の機会にということで。