どのみち東京オペラシティに行くのであれば、
何かしらのコンサートを聴きに行くのと抱き合わせで…と思っていたですが、
そうこうするうちに会期終了の近づいてしまったザハ・ハディド展@東京オペラシティアートギャラリー。
もはやこれまでと、展覧会単体を目当てに出掛けることにしたのでありました。


国立競技場の建て替えコンペとその後の大騒ぎで、
新聞紙上で
にもその名が何度も取り上げられることになった建築家のザハ・ハディド女史ですけれど、
初めて知ったのは2004年に行ったときだったか、それとも2006年だったか、
ニューヨークのグッゲンハイム美術館を覗いてみましたら、

やっていたのがザハ・ハディド展でありました。


ご存知のようにグッゲンハイム美術館は、その建物自体、
フランク・ロイド・ライトが設計した独特のフォルムを持つものでして、
その渦巻状にぐるぐると回りながら展示を見て歩くという異空間に、
ザハ・ハディドの極めて個性的な建築に関するあれこれの展示は妙に馴染んでいたといいましょうか。


その時に「建てられた実物を見たいものだなぁ」とつくづく思いましたですが、
あいにくとザハ・ハディド作品を目の当たりにするのは未だに機会がなく…。


ではありますが、その後にウィーンではコープ・ヒンメルブラウやフンデルトヴァッサー、

オットー・ワーグナーの建物を見て廻ったり、
ロサンゼルスではフランク・ゲーリーの建物やブラッドベリー・ビル、

パサデナのギャンブル・ハウスを見に行ったりと建築物を眺めやることを

旅先でのひとつの楽しみにするようになった契機はここにあったような気がします。
今夏の北ドイツ紀行でもチリ・ハウスに「ほうほう」と思ったりしましたっけ。


ということで、きっかけとしては必ずしも新国立競技場のことではなくして、
ザハ・ハディド展に出掛けたわけなのでありますよ。


ザハ・ハディド展@東京オペラシティアートギャラリー


グッゲンハイムのときほど多くの展示はありませんでしたけれど、
そこで目にする建築模型やらデッサン、そしてビデオで紹介される数々の建物は

相も変わらず独創的。


それらは実際に竣工となったものもあれば、

何らかの事情(経費的?技術的?突飛なデザイン?)で実現を見なかったものもありますが、

日本でも麻布十番や代々木・富ヶ谷のビルのデザインが求められつつも
それが建つことはなかった。


それだけに実際に完成した建物というのは貴重なものかもしれませんですね。
かつて「アンビルトの女王」との異名があったというのも分かりますし、
むしろ建っている方が不思議な気がしないでもない…。


ザハ作品の特徴は(と、語れるほどに詳しくはありませんけれど)時に極端な鋭角を使い、
また時にはうねるような流線形を用いて、決して一筋縄ではいかないようにも思いますが、
流線形(新国立競技場のフォルムもそんな感じですね)の使用にあたっては、
上のフライヤーの写真でも想像されるところながら、空気の流れを意識したふうになっているような。


会場内のビデオで紹介されていたロンドン科学博物館の

Maths gallery(建てるのはこれからのようで)の設計では、
飛行機の風洞実験で気流が描きだす曲線を用いていることが分かります。


こうしたことからも、単なる奇抜な思い付きが全てとは言い切れないものであるわけですが、
一方で数々の建築デザインのデッサンというかイメージ図というかでは、
ぱっと見、これが建物を描いているとはとても思われず、あたかも抽象画の世界とも言えそう。


絵画であればどんなふうな見てくれであっても構わないわけで、
その「どんなふうな」加減が個性と言っていいのでしょうけれど、
建築となれば実際に建てることに意味があり、

またその用途に応じた使い勝手があることに意味がありますね。


素人の思い及ばぬところとはなりますが、あの斬新なフォルムであってなおかつ、
気象条件も反映した空気の流れや、建物周囲やその内部での人の導線、

そして使い勝手といった要素を全て併せ持つ存在になるとすれば、

何とも大変な仕事であることか…と思うところです。


たまたま職場の近くで新しく環境に配慮したらしいビルが建てられ、
なかなかに独特な(もちろんザハ作品ほどではないですが)建物で見る限り見目麗しくもあるんですが、
どうも凝ったあまり日常的に掃除がしにくいとか何とか、あれこれの弱点(?)が見受けられるらしい。
こうしたことは建築費用とは別にランニングコストとして問題が浮上しますものね。


と、余談はともあれ、最後のコーナーには新国立競技場関連の展示がありました。
模型を見る限り、完成予想図を新聞で見たときに感じたほどの巨大さも奇異さも

感じませんでしたけれど、やっぱりちょっと異様ですかね。


神宮の森にいきなりUFOが着陸したようでもあり、
はたまた未来からタイムマシンが忽然と姿を現したようでもあり。
たぶん湾岸エリアに建てるのだったら、収まりとしては何の問題もないように思うのですが、
どうしても国立競技場跡地でないといけないんでしょうか…。


もちろん設計側とすれば、あの立地であることを考慮した上で作り上げたプランでしょうけれど、
ちょっと残念なような。ま、最初どんなに突飛でも馴染んでしまうということはありますが。


ま、ここではあまりこの点に深入りするのはやめておきますが、
なんだかんだ言っても、やっぱり完成したザハ作品はどこかしらで見てみたいものだなと。


次にどこかへ行くとしたら、その辺りも気にかけておくとしましょうか。
ロンドンか、ローマか、ライプツィヒか、はたまたシンシナティか…。