山梨県韮崎市から八ヶ岳の麓まで続く七里岩の高まりの上にありますアフリカンアートミュージアム北杜市郷土資料館を訪ねたついでに、もうひとつ。有名な清春白樺美術館と少々勘違いしそうな名前ですけれど、全く別ものの「清春 旅と空想の美術館」なるところに立ち寄ってみたのでありますよ。

 

 

こちらは私設美術館ということでしょう、ご自宅の一部を展示スペースに当てて、時折訪ねてくる来訪者に公開しているようですな。月火水はお休みと、週の半分くらいの開館状況は、高原の木立の中にぽつりぽつりと見出せるこの手の私設美術館にはよくあることのようですし。

 

 

ともあれ、こちらの美術館のコンセプトは同館HPにはこのようにありました。

清春 旅と空想の美術館は、八ヶ岳南麓に位置する北杜市に、2002年に3つのコンセプトとともにオープンしました。 一つ目は旅です。二つ目は空想です。そして三つめはクリスマスの優しい気持ちです。 この3つのテーマに沿った世界各地の絵画や写真等の企画展を年4回ほど開催しています。 いつかの旅へ思いを巡らせるひとときをごゆっくりとお過ごしください。

ということなんですが、印象としてはコンセプトの3つめに挙がっているクリスマスの展示がどうも目立つような気も。まあ、一見つながりのないような「旅」と「空想」と「クリスマス」、いずれもヨーロッパ志向としてつながりがあるようにも思うところです。

 

 

そんな印象を裏付けるような気がしましたのが、エントランス空間と奥の展示している廊下の壁面を利用して開催されていた企画展『湖上の城 ~太田二郎 木版画展~』でもありましょうか。フライヤーに見る、二羽の白鳥が仲良く並ぶ湖と奥には古城と思しき建物が見えているあたり、いかにもな気がするのでありますよ。

 

 

太田二郎という版画作家のことは全く知りませんでしたけれど、フライヤー裏面のプロフィールによりますと、長野県富士見町に版画工房を構えて「世界の伝承に残る妖精の木版画を制作」されている方であるとか。やっぱりヨーロッパの雰囲気ですな(ケルトというべきですかね)。もしかすると題材的には、栃木県のうつのみや妖精ミュージアムでも取り上げられているのか、はたまたもっぱらに地元志向であるのか…。

 

作家ご自身で版画制作はもとより、おとぎ話のような物語も紡いで冊子を作られておるようす。こちらに飾られているのは一枚もののポストカード・タイプですが、一枚一枚にそれぞれ個性ある妖精、精霊たちが描かれておりました。

 

 

いずれも木版らしい温かみが感じられますし、シンプルながら色遣いもいいですね。フライヤーにある多色刷りもまたよろし、です。コロナ禍となって以来、しばらくヨーロッパにも出かけられておらずに国内各所を巡るくらいですが、この美術館のコンセプトに絡んで、それこそ「旅」を「空想」してしまうようなところも。果たして次に大きな旅に出かけるのはいつになりましょうや。ちょっとばかり、背中を押された気分にもなったものではありましたが…。