先日、「春巻のニューヨーク」@東京・立川市というお店に寄ったことに触れまして、昔のアメリカ映画『踊る大紐育』を引き合いに出しましたですな。されど、その実、見たことが無い映画であったことから、この際ですので「どれどれ」と。古い映画も今はVODでだいたい見られてしまうようで、便利といえば便利ですが…。
ともあれこの映画、ミュージカルであろうとは漠たる予備知識でしたけれど、レナード・バーンスタインが曲を手掛けたブロードウェイ・ミュージカルの『オン・ザ・タウン』がオリジナルだったのですなあ。
それだけにといったらいいのか、のっけからガーシュウィンっぽさ、あるなあという印象。ま、ここで改めてアメリカのミュージカルの系譜の元にガーシュウィンのオペラ『ポーギーとベス』があることを思い出させられたりしたものです。もっとも、映画化にあたってはバースタインの曲がどうにも時代を先んじていたようで、ずいぶんと他の曲に差し替えられたようですけれど。ハリウッドは保守的ですものねえ。
保守的という点では、本作はマンハッタンでロケが行われているのですが、これもハリウッドのプロデューサーあたりはしぶしぶの承諾だったようで。スタジオで撮影できるものを何故わざわざニューヨークにまで出張る必要がある!とはことのようですね。たぶん出張費やらなんやら出費が相当かさむからでもありましょう。
それでも興行的には大成功だったようですので不問となったかもですが、ジーン・ケリーとフランク・シナトラが2枚看板(実際にはジュールス・マンシンが加わってトリオ漫才状態ですが)の登板ですのでねえ、期待に違わずではあったでしょうか。
お話としては、乗艦がニューヨークに寄港して、24時間の自由行動を許された水兵たちが大騒ぎしながら町へ繰り出すところから始まります。船乗りは港々に女ありなどと昔は言われていたものですけれど、彼らの目的はガールハント(って死語かも…)で、いかにも男性が主体で女性が客体であるような、ステレオタイプの描きようは時代感がありますですねえ。
時に(素敵な女性を見かけて)うきうき、時に(話がうまく進まずに)沈んだようすで、さらっと歌に入っていく、まさにミュージカルですな。そして、これがさらに感情表現が誇張されますとダンスが出てくるわけですが、ジーン・ケリーとシナトラが並んでしまうと、踊りの点ではシナトラがいささか可哀そうな気がしてきます。やっぱり、ジーン・ケリーは振りのひとつひとつが「決まる」感じがあって、上手いですなあ。水兵3人組と相対する女性陣3人の中ではマンシンと組んだアン・ミラーは切れがありますね。若い頃からボードヴィルなどで叩き上げてきたのでもありましょう。
とまあ、見せ場は歌と踊りとニューヨークであって、話としてはさほどでもないところでして、大ヒットしたというのは時代の空気だったのかも。1949年という戦後ほどなくの映画ですので、アメリカには大いなる解放感も開放感もあったのではなかろうかと。一方でこの映画、日本では1951年に公開されたということで、おそらくはこれもまた当時の日本人に「憧れのアメリカ」を思わせたのではないでしょうかね。
ちなみにちなみにですが、自由時間を得て水兵たちが町へ出ていく際、皆それぞれに♪ニューヨーク、ニューヨークと歌いながら散らばっていくのですが、シナトラが歌ってニューヨーク、ニューヨークと言えば…と、元歌はこれなのか?!とも思いかけたところ、どうやら全く別の曲なのだそうでありますよ。余談です。