三大テノールの話に絡んで「ニューヨーク・ニューヨーク」を取り上げたりしましたので、

頭の中にはフランク・シナトラの歌声でいっぱいになり(笑)。

まあ、本来はライザ・ミネリの曲というべきなのでしょうけれどね。

とまれそんな具合ですので、在庫の中からフランク・シナトラのスタンダード・ナンバー集を取り出した次第です。

 

 

実はこのコンピレーションには「ニューヨーク・ニューヨーク」も、

やはりシナトラの歌でおなじみの「マイウェイ」も入っていないのが何とも残念ですな。

 

ですが、かつて「マイウェイ」はあまりにも知られているその余り、なんともチープな印象を抱いたりしていたところが、

すでにお亡くなりなって久しいジャズシンガーの笈田敏夫がリサイタルで歌い上げるを聴いたときに

思いがけずも涙が溢れて来たという経験を(もう何十年も前ですが)して以来、いかに手垢がついたような

スタンダード・ナンバーも侮ってはいけんと思ったものなのでありました。

 

と、そんな余談はともかくとして、「ニューヨーク・ニューヨーク」も「マイウェイ」も無しとはいえ、

どこかしらで聞き覚えのあるメロディーが例によってゴージャスなサウンドをまとって次々現れる、

何度も言うようですがあたかもラスヴェガスのショーを見るような思いでもあろうかと。

(その実、いまだかつてラスヴェガスには行ったことはないのですけれど…)

 

ところで、そのゴージャスな雰囲気というのは伴奏とばかりも言っていられないような、

バックバンドの演奏の賜物なのであるなあ…と思い至ってみれば、またあれこれと思い出すことが。

 

かつてTVの歌番組は言うにおよばず、「8時だヨ!全員集合」などでも歌手が歌うときには

必ずバックにバンドの存在がありましたですよね。毎度紹介されるものですから、

ダン池田とニューブリードとかスマイリー小原とスカイライナーズとか、

あるいはチャーリー石黒と東京ロスパンチョスとか、なんとなく今でもバンマスの名前とバンド名を

思出せたりしてしまうという。

 

でも、彼らは元来、歌謡曲や演歌のバックバンドのために存在していたのでなくして、

彼らそのものが主人公としてジャズやラテン音楽を奏でるビッグバンドであったろうと思うところですが、

いわゆる進駐軍相手や昔の(今のでない)キャバレーなどで活躍の場がいろいろあったのがだんだん無くなって、

結果、歌番組のバックバンドに収まったということなのかも。

 

近頃はTVの歌番組を見ることもありませんので…って、わずかながらも残っているのでしょうか、

そのこと自体知らないのですけれど、おそらくはそうしたビッグバンドがプロとして活躍する舞台というのは

なお一層少なくなっているのではないですかね。自らのバンド名を掲げて活動するというよりも、

いわゆる機会ごとに集まっては演奏するといったスタジオ・ミュージシャンの都度都度の集まりという形が

名残としてあるのかもしれません。

 

もちろん、個人として相当に名の知られたプレイヤーがユニットを組んでということもあろうとは思いますが、

そうした人たちはたぶん曲もオリジナル志向でしょうから、スタンダードを手がけることも少ないのかも。

ですが、先の繰り返しになるもののスタンダードにはスタンダードの良さがあるわけですし、

そうした音楽は埋もれていくばかりなのでしょうか。

 

と、ここまで来て思い付きましたが、そういうばどこの大学にも名前はまちまちながらビッグバンドがありましたなあ。今回聴いたようなゴージャス・サウンドを生で聴きたければ、アルコール片手に紫煙をくゆらせながら演奏を聴く、

昔風のキャバレーのようなところではなくして、大学ビッグバンドの演奏会にでも出かければ良いとなりますか。

なんとも雰囲気は健全なものであることでしょうねえ(笑)。