先日、読響の「第九」演奏会@東京芸術劇場を聴きに出かけた折のこと、
池袋西武(屋上の喫煙所をたびたび利用させてもらっておりまして…)の6階フロアには
美術関係売り場として西武アート・フォーラムとアート・ギャラリーが並んでおりまして、
通りすがりに面白そうな立ち寄ってみることもあるのですが、このときにもふらりと。
まず、西武アート・フォーラムの方では「アンティーク クリスマスコレクション」という展示即売会(~12/21)で、
エミール・ガレやルネ・ラリックの作品、そしてオールドバカラなどガラス器を中心にきらきらの逸品がずらり。
何とも目に彩な世界ですが、値段は見るまでもなく「見てるだけ」となりますなあ。
でもってお隣のアート・ギャラリーへと足を向けますと、こちらでは「漆・くらしのうつわ展」(~12/21)と。
要するに漆器の展示ですけれど、「くらしのうつわ」と言うからには…と思うのはどうやらお門違いであったような。
もちろん隣で見たアンティークほどではないとしても、単に漆器という以上に漆芸品でもあろうかと。
そんな中で、小皿の縁の方に細い三日月型の螺鈿を施した品が何とも綺麗な一品があったのですなあ。
松本真奈という若い漆芸家の作品で、今年2021年に第38回日本伝統漆芸展の日本伝統漆芸展新人賞、
第61回東日本伝統工芸展奨励賞をそれぞれ受賞したとは、気鋭の作家となりましょうか。
見入っておりますと、係の人らしき女性が近付いてきて
「これは白蝶貝を使った螺鈿で…」などと説明してくれるものですから、
「綺麗ですねえ。とても普段使いにはできませんねえ」てな言葉を返しますと、
笑いながら「いえいど、どうぞ使ってください」と。ここで改めて顧みたこの方、
どうやら作家さんご本人であったようで(どうも、恐縮です)。
確かに惹かれるところがありましたので(作家さんにではありませんとは言わずもがな)、
悩ましい思いで会場を後にしたですが(それなりのお値段でありまして…)、
このとき「漆と言えば…」と思い出し、ひとつ上の階、食器売り場へと向かったのでありましたよ。
以前、引き合いに出したドラマ「おいしい給食」のシーズン2を(性懲りもなく)見ているのですけれど、
主人公の甘利田先生(市原隼人)が給食愛のあまり、漆塗りのマイ箸を用意してくるのを見て、
こういうこだわりもあるかあと。つまりは漆器でも、箸くらいなほどほどで買えるのかもと思ったわけでして。
で、ひとつ上がった7階フロア、食品売り場に到達!というところに
早速たくさんの漆塗りの箸が並んでいるではありませんか。
いやあ、値段は本当にピンキリであるなあなどと眺めておりますが、
すぐそばで何やら機械を前に作業をしていたおっさん、否、職人さんが「これ、つかんでみて」と。
目の前には水の張った小鉢に、大きめの賽の目に切ったこんにゃくが入っておりまして、
傍らに「普通の箸」と「すごい箸」が並べられて…。
促されるままに、まずは普通の箸でこんにゃくをつまみ上げてみますと、
持ち上がりはするものの、こんにゃくの自重(こんにゃくってわりと思いのですよね)でするりと落下してしまう。
では、すごい箸ではどうであったかと言いますれば、これが見事に、こんにゃくは落ちない。
「力の入りにくい、利き手じゃない方でもやってみて」と言われて試してみると、やはり落ちない。
思わず「すげっ!」と漏らしてしまうと、かの職人さんはニンマリでありましたよ。
こんにゃくに箸をぶっさすような不調法をしなくていいし、つるつるのうどんでもOKであると。
漆塗りの箸というわりには、そのマジカルな箸先の部分だけ木地がむきだし?のように見えたですが、
ここに特別な職人の技を込めた加工がしてある上に、木漆を施してあるのだそうな。
もともとは自分用の箸をと考えていたところながら、
こんなに食べ物をつかみやすいのならば老夫婦にはうってつけであるなと、両親用に夫婦箸を購入、
見事に実演販売(?)の術中にはまってしまったような気もしましたけれど(笑)。
ちなみに、かの職人さんが機械の前でなにやらやっていたのは、名入れの作業でありました。
箸を買うと(値段はピンキリですが、どの値段もものでも)その場で名入れをしてくれていたという。
若狭塗りの「のぼう」というブランドで、日本各地のデパートに出向いた販売形式をとっておるようです。
と、ひとしきり若狭塗箸の提灯持ちのようになってしまいましたですが、
それはともかく、この「つかみやすい」箸を土産に両親のところへ出かけてまいります。
ちょうど母親の誕生日が目前という折でもありますのでね。
つうことで、明日は一日、お休みいたしますです、はい。