JR渋川駅から伊香保温泉を目指すには二つのルートがあって…と言いましたけれど、
そのひとつが先に通った県道15号線で、水沢うどん のお店が沿道に並ぶところ。


そしてもうひとつの県道33号線の方で今度は温泉街から降りてきますと、

伊香保グリーン牧場 があり、もそっと先に上州物産館なる大きな土産物屋があるという具合。


上州物産館はどうやら観光バスでやってきた団体さんが定番的に昼食をとる場所らしく、
早めに食事が終われば階下に降りて土産物を見て回る、団体向けにいかにもな施設のようです。

ですので、その土産物屋には結構なお客さんが入っては去り、入っては去りと

なかなか繁盛している。


となれば、その隣接地にある施設もまたお客さんがぞろぞろといて…という想像は見事に覆され、

驚くほどひっそり閑としたようすの群馬ガラス工芸美術館でありました。

全くの隣接地なのですがね…。


群馬ガラス工芸美術館


ただ、このひっそりとした感じは

施設にとって(入場料収入が見込めないにしても)大事な要素かも。


エントランスから奥へ続く広々としたホールは壁面が全てガラス張りで、
柔らかに降り注ぐ陽光の中に広がる木立ちを望めるようになっているのですが、
ここで静けさは必需品のように思えるからなのですね。


ホールの中央にはやおら木製の扉が置かれているのが目を引きます。
何でもエミール・ガレ工房の門扉を模したものだそうで、
「MA RACINE EST AU FOND DES BOIS」と刻まれた一文は

「我が根源は森の奥にあり」の意であるとか。


改めてガラス窓の向こうを眺めやれば、

「なるほどねえ」と思える環境にこの美術館もあるわけですね。
上のリーフレットの表紙も同じ発想から作られたものでありましょう。


ということで、やおらエミール・ガレ工房の門扉が出てくるわけですから、
所蔵品はアール・ヌーヴォーのガラス器がメインということになりますが、
同じくアール・ヌーヴォー期の意匠を凝らした書斎の家具調度が置かれていたりもしますので、
こちらにも目を向ければ、ガラス器ばかりでなく

「やっぱりアール・ヌーヴォーだねえ」と思ったりするわけです。


展示室に歩を進めてみれば、

これまた静けさ(はっきり言うと来場者がいない)が入場者にとってありがたいことには、
係の人が出てきていろいろと展示品の解説をしてくれるのでありますよ。

もともとこうした来場者サービスを当然に行っているのか、

それとも暇だったからなのかは定かでないですが、
ともかく話を聞いてみれば「ほぉ~」と思うようなことを教えてくれたりするのですから、

ありがたいには違いない。


上のリーフレット表紙に配された作品は

エミール・ガレの「滝風景文ランプ」(1904~1920年頃)ですけれど、
これも何となくみればそれまでながら、傘の部分の風景を一巡してみると
自分がその場でぐるり廻ってみたパノラマになっているわけで、こうしたことを聞きながら、
見て回ったのでありましたよ。


それにしても、それにしてもですが、

なぜ観光地にはガラス工芸の美術館があるのでしょうかね…。

いろんなところにありますよね、ここでどこそこにあると数え上げたりはしませんけれど。


そして、だいたい入場者は少ないような気がするのですが、いかがでしょう。
それでも、あちこちに作られる理由が何かあるんでしょうかねぇ…。


必ずしもガラス工芸品に興味のある方が絶対数としてたくさんいるというわけでもないでしょうし、
その場所場所、例えば伊香保に来る人たちは統計的に?傾向的に?

ガラス器に興味のある方が多そうというマーケティング結果でもないでしょうし。

なんだか不思議なのですよね。


ま、その辺がどうであったとしても、

覗いてみればみたなりの感想が見る側では得られますから、
施設として立ちゆくのかどうかとか、どうしてここに?は大きなお世話なのかも…ではあります。
でも、なんでだろう…。