取りあえず先の新潟出張のついでに立ち寄った美術館やらのお話はひと段落。
ですが、新潟へ出向くついで、その手前で立ち寄ったところもありましたので、そちらのお話を。
立ち寄りましたのは高崎市にある群馬県立歴史博物館でして、
特別収蔵品展として「ブルーノ・タウトの世界」展が開催されていたものですから。
(といって、もう会期は終了しておりますが…)してありまして。
そもドイツの建築家ブルーノ・タウトにはいささかの興味があったものですから、
これまでにも日本での滞在先である高崎市の少林山達磨寺などを訪ねりもしておりますが、
たまたま昨年12月にNHK「土曜ドラマ」で放送された「ノースライト」を見て、
そこにたっぷりとブルーノ・タウトの影が感じられたことから、このほど立ち寄ることにしたのでありますよ。
ドラマの原作が横山秀夫ということで群馬がらみでブルーノ・タウトに辿りつくのはあるとして、
それ以前の仙台時代まで話に絡めるのは「ほおほお」と思ったり。
ですが、「ノースライト」のお話自体はここでは措くといたしまして、タウトの方のお話です。
建築家として知られながらも、日本では本来の活躍の場をほとんど得られなかったブルーノ・タウト、
仙台でも高崎でも工芸のデザインと指導に当たることになったのでして、
この関係からタウトゆかりの工芸品が群馬県立歴史博物館の収蔵品になってもいるのでしょう。
「木工・金工の世界」、「竹工の世界」、「漆工の世界」という章立てによる展示は、
タウトが関わった工芸分野の広さを感じさせますですねえ。
取り分け「竹」を使った作品にデザインの独自性が窺えますけれど、
そもそも竹は日本が自生の北限であるらしく、いわゆる欧米には無い植物だそうですから、
さまざまに加工できる素材としての魅力を大いに感じたのでありましょうね。
ただ、単に新たな素材発見!というばかりではなくして、
日本の伝統にも敬意を払いつつ寄り添う姿勢(竹のように柔軟ですな)がタウトにあったからこそ
突飛に思える(おそらく当時の人にはかなりそう見えたのでは…)中にも
どこか「馴染む感」もあるデザインを生み出すことができたのではなかろうかと。
高崎在住時に住まっていたという「洗心亭」を思い返すにつけ、そんなふうに思うわけでして。
「機能のすぐれているものは、その外観もまたすぐれている」
これはタウトが桂離宮を訪ねたときに残した言葉ということですけれど、
桂離宮ではおちつき、趣を感じたとは逆に、日光東照宮の装飾過多にはげんなりしたというタウト。
どちらが風土に根差した日本の伝統らしいものか、瞬時に気付いたのでありましょうね。
かなり日本を気に入っていながら、活動の場がもっぱら工芸に限られてしまっていたことに
タウトはトルコから招聘を受け入れて去っていってしまいますけれど、
もそっと日本で活躍できていたら…と、毎度毎度無いものねだりの思いが巡るのでありました。
ということで群馬県立歴史博物館に立ち寄れば、隣接して、というより繋がって建っている
群馬県立近代美術館の方も当然にして覗くことになるわけですけれど、
その前に併設レストランで軽く昼食を。
前回訪問時に「今日はありません」ということで食し損ねた古代米カレーです。
歴史博物館からほど近いところには観音山古墳という立派な前方後円墳があり、
タウトが住まった達磨寺の川向うにはこれまた前方後円墳の観音塚古墳がありという具合に
なかなかの古墳大国である群馬だけに、古代米カレーは前方後円墳の形で盛りつけられておりますな。
ま、お味の方は(お好み次第ですが)それなりということで…。
では、この次には群馬県立近代美術館再訪のお話でございます。