大阪の万博記念公園に出向いて「太陽の塔」を訪ねたことですでに目的は達したわけながら、

まあ、当然にして公園内もゆらりと歩き回ってみることに。

 

すぐに目に飛び込んでくるのは太陽の塔の裏側にある、こちらの構造物でしょうか。

1970年の万博開催時にはお祭り広場と呼ばれた大きなスペースの天井を、これが支えたという。

 

 

いかにもメタボリズム建築の構成要素といった感のある構造物を組み合わせて「大屋根」を形作ったという、

丹下健三こだわりの建築物だったわけですが、広場の中央に高さ70mの太陽の塔を造ると言い出した岡本太郎のせいで

大屋根に穴を開けることになってしまい、ずんぶんともめたとは有名な話でありますなあ。

 

 

と、太陽の塔やこの構造物のような大きなものでなくとも、

万博記念公園の中には、開催時の記憶につながるものがちらりちらりと顔を覗かせておりますなあ。

例えばこのように。

 

 

万博ではさまざまな国・地域ごと、個性ある形の建物がありましたけれど、

今は雑木林っぽいこの場所には中華民国館が建っていたのですなあ。

ま、あちこちの国の建物跡を示すプレートは、実際に万博を訪ねた人であれば

訪ねた当時を思い出しつつ、会場内の変化に思いを馳せることではありましょうね。

 

しかしまあ、過去を留め置くという場合にその留め置き方をどう考えたものか。

見目麗しく、いつも新しく飾っては過去らしさが失われる一方で、放置すると廃墟感がどんどん増してくる。

もちろん万博記念公園がほったらかしになっているとは思いませんけれど、

そこはかとなく漂う廃墟感は確実にあるような…。

 

 

こちらはイサム・ノグチが手掛けて各種、変わった形の噴水を配した「夢の池」であると。

キノコのようなものは宇宙船を表している…ということではありますが、

池の水も淀んで、噴水の塗装も薄れ、すっかり「夢の跡」になっているやに思えたものでして。

 

と、そんな「夢の跡」にこそふさわしいとも思えるものが、ここにはありましたなあ。

名付けて「タイム・カプセルの木」であると。

 

 

なんでも万博開催時に、松下館(今のパナソニックですな)に「タイムカプセル」が展示されたそうな。

2基用意されて、ひとつは5000年後の西暦6970年に開封予定(その頃、西暦が使われているかもわかりませんが)。

もうひとつは2000年に一度開封されて、以降は100年ごとに開けることとして埋め戻され、

今は大阪城天守閣前の地下に眠っているのだそうでありますよ。

 

この2000年に開封された折、カプセルの中から取り出したアカマツの種子を試験栽培したところ、

見事に芽吹いたということで万博開催地に記念植樹されることになったということで。

 

5000年後となるとアカマツでも生き残ってはおりませんでしょうけれど、

もとより人類はどうなっておりましょうねえ。100年単位でもどうなっておるかは分かりかねるところながら、

そうしたロングスパンで先を考えるときに、前にも触れたことですが植物のすごさというのか、優位性というのか、

ついそのあたりに思いは突き当りますなあ。

 

すでにして万博記念公園は、ヒトが作り上げたものは壊され、あるいは置き去りにされ、廃墟感を呈したりしますけれど、

その中で植物たちは、ヒトが手を加えたところもあり、自然の成り行きのままという部分もありましょうが、

林や森を形作っていく。こちらからは再生が感じられたりもするような。

そんなことを思う万博記念公園なのでありましたよ。