埼玉県立近代美術館のある北浦和公園には
屋外展示としていくつかのオブジェが置かれているのですけれど、
どうしても美術館の方を先に見てしまうと「もう、いっかな…」という気になってしまう。


ということですので、今回は早めに到着したことを僥倖として、
園内のオブジェを先に見て歩いたようなわけでありまして。


エミリオ・グレコ「あゆみ(大)No.7」

まずもって入口すぐのところでは、このような女性像が出迎えてくれます。
ですが、ついつい目は像の後ろ側の方へ導かれてしまい…。「噴水じゃん!」と。


勇んで(というほどのこともないですが)そちらへ向かうとあろうことか、
噴き出していた水はぱったりと止まってしまいました。


音楽噴水とは呼ばれるものの・・・


まあ、この噴水池の隅にもオブジェがありますので、それだけ見ておくかということに。
この写真では判別しがたいと思いますが、何しろ針金細工のような造りですのでね。
拡大してみると、こうなります。


西野康造「風の中で」


サキソフォンの姿かたちを実によく再現していますなあ。
何でもここの噴水は「音楽噴水」と呼ばれておるらしく、それにちなんだモニュメントなのだとか。
タイトルが「風の中で」とはちと重々しい楽器の印象を軽やかに感じさせますね。
…と、突然(10時になったところで)「音楽噴水」が面目躍如の活動を開始しました。


これでこそ音楽噴水!


どこかしらにスピーカーが備えてあるのでしょう、
ヘンデル の「水上の音楽」やらサン=サーンスの「白鳥」やらの音楽が流れる中で
縦横無尽という感じで噴水の水が跳ね回り出したのでありますよ。


おお、虹じゃ!


そこでうろうろと歩きながら場所を変えていきましたところ、
たまたま太陽を背にした方向から見てれば「おお、虹じゃあ!」と。


先に吉岡徳仁の「スペクトル」 を見たばかりでもあり、
こちらは人工的な分光でない(もっとも噴水は人工的ですが)ことも
少々気分を盛り上げるところとなった由縁です。


そんな「音楽噴水」による10分間のお楽しみに偶然出くわしたわけですが、
さて園内オブジェ巡りに戻るといたします。
オブジェの中にはすっかり子供たちの遊具と化しているものもありましたけれど、
遊具にしたくともできないものがこちらですね。


黒川紀章「中銀カプセルタワービル住宅カプセル」


何だ?と思われる方もおいででしょうけれど、実はこれ住宅でして、
新橋駅から程近い銀座8丁目にある中銀カプセルタワービルはこのユニットの集積でできている。
黒川紀章設計によるメタボリズム建築の代表作として有名ですよねえ。



建築作品と考えれば画期的なものとは思いますけれど、
今日、これを住居と考えるとまるで宇宙旅行のカプセルか?というくらいに狭い。
建て替えでもめてたりした話はどうなりましたですかね。


サトル・ナカダ「子午線-1993」


お次はあたかもクレーン車のようなオブジェ。
本来的に実用一点張りが当たり前のクレーンは無骨にも直線で支配された造形ですけれど、
こちらはゆるうい湾曲が特徴。ただそれだけでずいぶんと印象が変わりますね。
一気に子供の玩具ふうになる。この「差」が面白いところではなろうかと。


橋本 省「流水の門」


こちらは題して「流水の門」。
おそらくタイトルは詩的なイメージから付けられたと想像するものの、
オブジェの印象としては古代ローマの水道橋か、はたまた近代産業遺産たる橋梁の橋桁か。
いずれにしても水の流れとは関わりますので、全くの的外れではないと思いますが。


ちなみにオブジェの後に見えてきたのが美術館の建物。
正面入口前では、文字通りどお~んとフェルナンド・ボテロの「横たわる人物」が出迎えてます。


フェルナンド・ボテロ「横たわる人物」


ルーベンスやらルノワールやらと豊満な肢体はよく見られますけれど、
ボテロほどおおらかさに気持ちが和むことはないですよね。
これが、写真では分かりませんがリンゴを手にしていることから
エデンの園のイブの姿であるとは思いも寄らない主題ではありませんか。


重村三雄「階段」


と、園内を辿ってきたところを結構端折ってしまったですが、最後にひとつ。
美術館の非常階段に造られた人物たち。「カタメタージュ」なる技法の成果だそうですよ。


さて、面白く見て周りましたので美術館へと入るといたしましょう。
企画展は「カッサンドル・ポスター展 グラフィズムの革命」、楽しみですなあ。


埼玉県立近代美術館

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