読響の演奏会 を聴いてまいりました。
曲目はフライヤーでご覧いただけますようにチャイコフスキー の三大バレエ、
「白鳥の湖 」「眠れる森の美女 」「くるみ割り人形」からの名曲選ということでありました。
登場した指揮者はゲンナジー・ロジェストヴェンスキー御大。
1931年生まれですから御歳85歳になられるのでありますなあ。
ステージへの出入りには、実に実にゆるりとした歩調で悠揚迫らざるというか、単にお年というべきか。
ではありますが、トレードマークのながぁい指揮棒をひらひらさせて呼び出す音楽は、
「歴代のロシア人指揮者の中でも、一、二を争う爆演系指揮者」とWikipediaにあるのを思い浮かべる。
しっかりとした低音の支えの上にブラスがばりばりと咆哮するさまは心地よいとも。
「眠れる森の美女」では時に「ブルックナーのシンフォニーか?!」と思ったりしたですよ。
ところで、20歳でのデビューが「くるみ割り人形」@ボリショイ劇場であったというロジェストヴェンスキー翁は
やはりチャイコフスキーのバレエ音楽にこだわりがあるのでしょうか、
「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」それぞれから
演奏曲の抜粋の仕方が独特ではなかったでしょうかね。
何しろ端的には「白鳥の湖」といればこれ!と誰しも思い浮かべる「情景」の部分が取り上げられない。
演奏された「終曲」の中に有名なメロディーラインが回顧されるから良しということなのか、
「白鳥の湖」の聴きどころは「情景」ばかりではないのですよということでもあるのか…。
考えてみれば元はバレエ音楽であって、
演奏会に馴染むような適当な長さにするには自ずと抜粋版のようなものを編むことになりますね。
それが「くるみ割り人形」では組曲として出来あがっていて、それがよく取り上げられるものですから、
「くるみ割り人形」と言えば、「小序曲」に始まり「花のワルツ」で終わるものと思い込みがち。
ですが、実際のバレエのフィナーレは「花のワルツ」ではありませんし、
組曲に取り上げられている曲だけでバレエが構成されているわけでもない。
要はキャラ立ちのいい曲を集めてみました…というのが組曲なのでありましょう。
キャラ立ちがいい曲の数々にはチャイコフスキーのメロディーメーカーぶりを知ることができますけれど、
それぞれ個性溢れるだけに反って繰り返し聴くと飽きが来るといいましょうか。
CDを持ってはいても、わざわざ取り出して組曲「くるみ割り人形」を聴こうとはなかなかならないような。
それが今回のような曲順的にも聴き知った順でなく、
また(全曲版に通じていないものには)聴き馴染みのない曲とも組み合わされて演奏されますと、
新鮮というか何というか。
何でもそうですけれど、ここでならバレエの付随音楽であるという本来の形、
つまり実際に上演されるバレエ公演でこれらの音楽を耳にするというのが真価に近づく術であろうかと。
例によって今さらながら…と気付くことは日々あれど、今回もまたそんなことを思う演奏会でありましたですよ。