…ということで、マルクト広場 近くにあるグーテンベルク博物館に立ち寄ったというお話。
先にその入口部分だけの写真を出しましたけれど、その入口と見えた建物が何とも立派で、
期待がむくむく大きく膨らんでいったのでありますよ。


グーテンベルク博物館@マインツ


ところが中央の入口と思しきところから入っていると、そこは中庭へ抜ける通路なのでして
「はて、レセプションはどこに?」ときょろきょろとあたりに看板を探すも皆無。


単純に中庭に抜けてみれば、博物館は奥側の建物にあることがすぐに分かったわけですが、
これはフィッシュ・トーアの方からアプローチしたことが分かりにくさの元であったなと。


グーテンベルク博物館はこちら


逆にマルクト広場側から見てみれば、中庭とも奥側の建物とも思うことなく、
グーテンベルクの頭部像の向こう側にあることがすぐさま分かるようになっていたのですなあ。


と、いよいよ「マインツ観光といえば、ここ!」というべきグーテンベルク博物館にやってきたですが、
全般的な印象をここで申し述べてしまうならば、予想を上回る面白さ(興味深いという意味ですが)。


グーテンベルクの名前は世界史的にも「活版印刷術の発明者」として夙に名高いわけですが、
たまたま6月に訪ねた印刷博物館@東京・文京区 の展示が予想外に面白いものだったところから、
ついでにグーテンベルクの本 (児童書でしたけれど)を読んだりしているところへ、
確保できたのがフランクフルトへの往復航空券…となれば、グーテンベルク博物館に立ち寄ることは
もはや必然ともいえる状況であったのですね。


それでも、あまり過度な期待を寄せてしまいますと、ヴォルムスのニーベルンゲン博物館 のように

ちょっとした思惑違いがあった場合、ハズレ感も強くなる。
(といって、ニーベルンゲン博物館の展示がつまらない、よろしくないということではないですが)

ですから「グーテンベルク聖書」が見られるだけでもいいかなと考えることにしたのですね。


が、東京の印刷博物館をご存知の方ならば想像がつくのではと思いますが、
グーテンベルク博物館はドイツの印刷博物館であると言ってよろしいのかと。
グーテンベルクの事績はもとより印刷全般に関する多彩な展示があり、
当然のように日本の百万塔陀羅尼も収蔵されておりましたですよ。


グーテンベルクによる活版印刷術の発明は15世紀半ばとされますけれど、

ほぼその当時からのものがずらり所蔵されているのですなあ。


例えば、ヨハン・フストとペーター・シェッファーが

借金のカタにグーテンベルクから手に入れた機材で作ったと思われる48行聖書(1462年)。

この段階では装飾性の点で手書きの写本には敵わぬところながら、

年代を追って見て行きますと、印刷術の普及に従って装飾性の実現にも大きな進歩が

あるのですな。


それにしても古い古い紙でできたものが、このように残されているというのは

ずいぶんとたくさん刷ったのでありましょうね。

(もちろん、今の発行部数と比べるのは意味ないですが)


種類としては、キリスト教絡みのものはもとより、

占星術の類いも多く見られるのは時代のニーズなのかも。

そして、印刷術普及したてとも思われる1494年のローマでは軍事戦略に関する本が出ている。


手写本よりは安いといっても印刷物も決して安くはない時代に、

しかも大量に印刷されたものに買い手がつくかどうかを考えた上で

軍事戦略に関する本が出されるというのは、これまたそういう時代であったということになりますね。


まあ、本という形までをとらないならば(江戸時代の瓦版のようなものですが)

場合によっては多少裕福な庶民階級にも行きわたったでしょうけれど、

そうした形で広まりを見せたのが「Totentanz(死の舞踏 )」でもあるようで。


Wikipediaには「特にハンス・ホルバインによる一連の「死の舞踏」に関する木版画は、

1524年に下絵が完成した後、印刷業者内で版権が争われるほどの人気だった」と

記されているほどですから。


そして、版画の広がりを考えますと、

時代的にはやはりアルブレヒト・デューラーの活躍時期にもあたるわけで、

細密に描かれた下絵を綺麗に仕上げる技術も進んでいった時期にデューラーがいた

ということになるのかもしれませんですね。


もちろん、時代性を考えるときにはマルティン・ルター の存在も大いに関わるわけですが、

他であれこれ触れていますので、ここではちと割愛。

展示の方では、古い印刷物そのものが見られるだけでなく、

印刷技術や製本技術などに関してもかなり詳しくそしてビジュアルに説明する工夫がありました。



これは入場券の半券ですけれど、

当時の印刷工房の様子がこのように再現されていたりもするのでして。


まあ、興味のほどにもよるところながら、じっくり見るなら丸一日でも見ていられる場所。

それがマインツのグーテンベルク博物館であったと思うのでありますよ。


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